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えすけのようなえすけではないもの
🌹ではありませんが人を選ぶ表現があります
しかも長いです。
⚠嘔吐 過呼吸⚠
地雷さんはUターンしてください。
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「ぶるーく〜!」
「……!」
キラキラした声が聞こえる、朝日みたいな明るい声。
なかむかな、あ、もう問診の時間か。
「おはようぶるーく、今日は調子どうかな?」
優しく優しく頭を撫でられ、そう聞かれる。他のみんなとは違って声が出ないだけの僕はこれといって問診することもないはずなんだけど…
「…?」
「痛いところない?」
痛いところ、はない。なかむの問いかけにこくりと頷く。
なかむはそれを軽く何かにまとめたあと、もう一度僕の頭を撫でながら、少し真面目な顔をして口を開いた。
「心は平気?」
「…っ…」
その言葉に抗議しようとして口を開いたけれど、喉から漏れるのは空気だけだった。
「……苦しくはない?辛かったり、無性に泣きたくなったり、自分ってだめだなって思うこととかない?」
「…………」
図星だった。全部が的確に当てられていた。他のみんなが苦しんでても僕を支えてくれるように、僕もみんなを支えたい、でも、知識も余裕もなくていつもあたふたして、うまくできなくて。ダメだなって思うんだ。
言葉が出なかった。
「……苦しい時は我慢しなくてもいいんだよ。」
「………(くいっ)」
「ん…?どうしたの?…”今は、まだ”?」
「………そっか、わかったよ、でも本当にだめになりそうなときは俺かきりやんのところにきてね、」
「………(こくっ)」
そう言ってなかむは立ち去っていく、ふらふらとした、不安定な足取りで。
白衣を引きずって、壁を軽く支えにして。
なかむだって辛いはずなのに、いつも僕を気にかけてくれるんだ。
今日は調子よくないはずなのに、来てくれた。バインダーの数を見ると他の人のとこにも行くんだろうな。
無理しちゃいそうだ、きりやんに教えなくちゃ。
と思って、ベッドから立ち上がったとき、外から少しだけ重たい物が落ちるような音と、軽いプラスチックの落ちる音、金属がカチャンと硬いものにぶつかる音が同時に聞こえた。
慌てて部屋の外に駆け出す。
部屋の外、ドアのすぐ横では、さっき部屋を出たなかむがぐったりと床に倒れ込んでいて、いつも僕を見てくれる快晴は固く閉ざされていた。
「……!(ゆさゆさ)」
「……っ…ぅ”…」
どうしよう、と頭が混乱する。
なかむはすごく苦しそうだ。誰か呼ばないと。
こんなときに僕が声を出せたらよかったのに。
そう自分のことを内心責めながら、ナースステーションの方に走る。
走ってくる僕に気がついたきりやんが、慌ててカウンターから出てくる。
「どうしたの…!」
「…っ…!」
「…向こうに誰かいるの?」
「…!…!(ぐいぐい)」
「わかった、行くから!」
僕の後ろを走ってついてくるやんさん。
なかむのためにって頑張った。
「…!…!」
「なかむ!!!」
「なかむ…熱たっか…!」
「……?……?(うろうろ)」
「大丈夫ぶるーく、落ち着いて、ちょっとの間部屋に戻っててくれる?」
「………(こく)」
僕が頷いたのを確認してか、落ちていたカルテを片手に持ち、丁寧になかむをかかえあげてナースステーションの方に向かっていった。
なかむだいじょうぶかな。
なかむはいつも発熱状態でいつでもふわふわしててフラフラしてるけど、今日は特に酷かった。最近他の患者の様子を頻繁に診ていたからだろうか。
心配で部屋に戻ってもそわそわしてじっとしてられなかった。
少し時間が経つときりやんが部屋に来てくれた。
「ぶるーく、ありがとうね」
「?」
「なかむのこと、あいつ無理してたみたいで、今日は休ませることにしたんだ。」
「……」
「他の患者の問診となかむのことのおしらせはすんでるから、好きな人のところに遊びにいきな」
「…(こく)」
ただそれだけを伝えてきりやんは去っていった。
なかむのこと心配なんだろうな。
誰のところに行こう。
あ、そうだ、今日なかむいないからきんさんひましてそうだしいこうかな。
「……(こんこん)」
「どうぞー」
「…!」
「ぶるーく!おはよう!」
部屋に入るとにこりとむかえてくれるきんさん。今日はそこまで調子が良くないのか、ベッドから動いていないみたい。
「…?」
「ん?今日はそんな調子よくなくてね」
「……」
「心配しないでいいよ、たぶん大丈夫だから。」
と笑いかけてくれる。
なんだか申し訳ないような気がしてくる。
特に話すこともなく、きんさんの隣に座ってぼーっとしている。
点滴の雫が落ちる音が聞こえてきそうなほど静かな病室。
刺激を与えすぎないように、あまり音が反響しない部屋。
それで余計に部屋は静かだ。
「………」
「ぶるーく、」
「…?」
「ちょっ、と……だれか、よんで…」
「!!」
弱々しく入院着の裾を引っ張られ、振り向けば、明らかに調子が悪そうなきんさんがいて、片手で口を押さえていた。
この感じで離れたらまずいと思って反射的にナースコールを押す。
階段を駆け上がってくる音がする。
急いできているみたいだ。
「…!…!…」
「…っ、だい、じょぶ…っ、けほ、っ、ぅ”」
「………っ…(さすさす)」
「…っん、ありが、っ、と、」
だんだん悪化してるように見えるのが怖くて、背中を擦ってあげる手が少し強くなってしまう。
こういうとき、声をかけてあげられたら、きっときんさんも安心できたのにな。
「…っ!きんとき!」
「…けほ、げほっ、やん…っ…」
「ごめんね遅くなって、吐き気止め入れておこうか?」
「…げほげほっ…だい、じょぶ…っ、ぅ”、ぉえ”ッ…」
結局吐いてしまったきんさんに慌てたきりやんが、バタバタ処置をしているのを僕は遠くから眺めているしかなかった。
僕はきんさんが安心できるようなことを言って、手を握っても上げられない。ほんと、できない人間だ。
そんな事を考えながら、疲れて寝てしまったきんさんを見て、もういいかなと、部屋を出た。
きりやんに呼び止められたような気もしたけどきっと気のせいだろう。
――――――――――――
ふらふら行く宛もなく、病院内を歩き回る。
外はあいにくの雨模様。中庭を見下ろすと、緑がかった黒髪の手を引く焦げ茶色の髪。
雨が降ってきたから、部屋の中にいさせるみたい。
いいなぁ、ああやって支えてくれる人がいて。
そんなことはいいんだ僕が支えてあげなくちゃ。みんなのことを、ぼくが。
「ぶるーく」
「…?」
後ろから声をかけられて、振り向くと、点滴を連れたなかむが声をかけてくれていた。
朝よりもだいぶ体調はマシそうだ。
「…ぶるーく顔色悪いよ…大丈夫?」
「……っ………!(こくっ)」
「………そっか、よければ今からお茶しない?」
「…!(こくこく)」
なかむにつれられて共用スペースに向かう。
慣れた手つきで紅茶を淹れ、クッキーをだす。
なかむは人差し指を口に当て、内緒ね、といった。まだおっけーされてなかったんだ。
「…あ、ごめん、ちょっと忘れもしたからちょっとまってて」
と、僕の座るソファの後ろにあるナースステーションへ向かう。
しばらく待っているとなぜか不思議と眠たくなってきて、そのまま眠かに抗えず、ソファの上でまどろみへ溶けた。
「ごめんね」
そんな声が聞こえた気がした。
――――――――――――
―――――――――
目が覚めると、眩しい光が窓から入ってきていて、日めくりカレンダーを確認すると、寝る前から1日経っていた。
時計は午前8時半を指している。
ベッドの上でぼーっとしていると、ドアが開く。
「ぶるーく、おはよ」
「……」
「どう、よく眠れたかな…?」
「…(こく)」
よく眠れた、寝過ぎなくらい。
少しだけ、切なくなるような目覚めだった。
僕がねていた時間、僕はみんなの手伝いができず、みんなが苦労してた。
そう思ったらなんだか、自分がのんきに寝ていたことが嫌になってきた。
ただでさえ声が出せないのに、ただでさえ役に立てないのに、寝てただなんて。
無能にもほどがあるよ僕。
「……ごめんね…」
なかむは考え込んでいた僕を見て、悲しそうに眉を下げたかと思うと、一言だけ謝って部屋を出ていってしまった。
あぁ…僕はこんなにも愚かだ。
「………っ…」
悔しくなって涙が出てくる。本当に泣きたいのはみんなのはずなのに。
ダメだ、ダメだ、泣いたらダメなんだ。
僕は、僕は、僕は…?
なにを、して………
どうせ誰の役にも…たてないのに
誰にも知られない、なににもならない行動ばかり。
僕に、生きる意味は、?
「…っ、ー……っ…」
だんだん息が上がって、苦しくなっていく。
はく、はく、と体が足りない空気を必死に補給しようと勝手に動く。藻掻く。藻掻く。
「…っ__…っ、っふ、ひゅ…」
「…っ、けほ、かひゅっ……」
苦しい、くるしい、くるしい、
あぁ…いつぶりだろうこの感覚。
誰か、いないかな
そばにいてほしいなだれでもいいさむいよ、だれか、いや
どうせだれも、役立たずな僕の事、助けてはくれないか、
「ぶるーく…っっっ、!」
諦めかけたとき、青くて優しい海みたいな声がした。
僕を呼ぶ、こえ…
「ぶるーく…大丈夫、大丈夫だよ、っ…すぐ先生くるから…っ」
「…っ、ひゅー…けほっ、げほげほっ…!」
優しく背中をさすってくれる青色。
溢れる咳を手で抑える。
手には赤色。
喉が痛い、くるしい。
優しく背中を撫でてくれる、その手に縋る。
今はそれだけが頼りだった。
「ぶるーく!!きりやん早くっ!薬!」
水色の晴れ空の声がする。
「持ってきたよ!!」
黄色い太陽の声がする。
安心の音がする色が見える。
「ぶるーく、ちょっとチクッとするよ。」
「……っー、っひゅ、」
「ぶるーく、大丈夫だから、痛くない、怖くない、落ち着いて」
「すぐ楽になるから、大丈夫だよ」
3色に囲まれて、温かくなってくる。
僕はこんなにも周りに恵まれている。
あぁ、あったかいな、
怖くない、とこんなにも思える。
苦しかったのも、だんだん落ち着いて、疲れからか、眠気が襲ってくる。
「…ぶるーく…?」
「大丈夫だよきんとき、疲れちゃっただけだと思う」
「…そっか、頑張ったねぶるーく…おやすみ」
優しい声がよく耳に残る。
なんとなく、今なら、声が出るかもしれないと思った。
痛む喉を少しだけ酷使して、声を絞り出す。
「……ぉ…ゃ…すみ、……」
眠気に耐えられずに、目を閉じてしまったけれど、僕の耳が拾ったのは、抑えるような嗚咽と、ペンが紙を滑る音だった。
――――――――――――
―――――――――
――――――
「きんさん、はやくはやく!」
「こらぶるーく、きんとき治ったばっかなんだからあんまり無理させんな」
「大丈夫だよきりやん!っけほけほ、」
「もう!きんとき無理はしないって約束でしょ!」
「でもいいじゃん、これからはなかむもきりやんもそばにいるんでしょ?」
「まぁ、」
「ならいいじゃん!多少はさ!」
「おーい、4人とも早く乗れー」
「シャークん!久しぶり」
「久しぶり、元気そうだな」
「スマイルも運転ありがと」
「このためにわざわざ免許取りに行った、めんどくさかったけど取ってよかった。4人が元気そうだから」
「きゃぁ、スマピいいこと言う〜!」
「いいから、早く乗れ」
「はぁい」