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「……うん、落ち着いた。ごめんね」
「よかった。冷めないうちに食べよう」
「うん」
ユリ姉さんが笑顔の涙目で頷いてる。これは……笑いをこらえてるのかな?
ちょっと、興奮しすぎたのかもしれない。前回の悲劇があったせいで感情が抑えきれなかったみたいだ。
「さっちゃんのステーキすごいね。そんなに大きいの見たことないよ」
「はい、半分あげるね」
「領主様って、一人でこれを全部食べるのかな……すごいね……」
わたしの天国とさっちゃんの世界を分け合って食べた。
まさか、わたしの天国が見劣りすることになるとは……恐るべし、領主様フルコース。
ユリ姉さんは当たり前のようにわたしとさっちゃん、両方の皿をつまんでた。
……美人さんだけど、マナーでマイナス100点だよ。わたしでもそこまで遠慮無しじゃないよ。
「ふー、美味しかったねぇー。久しぶりに美味しいもの食べたよ。ありがとう、二人とも」
「ユリ姉さん、盗り過ぎですよ。私のカレー、4分の1くらい盗りましたよね……」
「あはは、いやー美味しかったから、つい。さすが、アリアちゃんが創造したカレーだ!」
「次は許しませんよ。カレーの恨みは恐ろしいのです……」
睨むけどカレーにスルー、じゃなく華麗にスルーされた。
悔しいけど人生経験の差が大きい。
「次はどこを案内しようかなー」
「これだけ広いんですから、他にも観光名所はないんですか?」
「あはは、観光名所かー。アリアちゃんは面白いこと言うねー」
「あ、ごめんなさい。ぜんぜん民兵組織って感じがしなくて……」
この食堂には民兵さんがほとんどいない。一般開放されているらしいので、席の多くは商人さんや農民さんっぽい人達で埋まってる。
中には観光客と思われる団体さんまでいたのでちょっと勘違いしてしまった。
「そっか、じゃあ次は民兵らしい所でも行ってみようか?」
「民兵らしい所?」
「そう、訓練所なんてどう? 食後の運動も兼ねてさ」
「どうしよう、さっちゃん」
「いいと思うよ。こんな立派な施設にある訓練所なんだから、学校の訓練所より凄いと思う。正直、結構興味あるかな」
そっか、さっちゃんは6年生で戦闘訓練の授業を受けてる。
……いつも使ってる学校の訓練所と比べたいのかな? 強くなりたいって言ってたし、そういう施設に興味があるのかも。
「さっちゃんがそう言うなら決まりだね。ユリ姉さん、訓練所に行きましょう!」
「お、二人とも乗り気だね! いいよー、若さを感じる!」
「ユリ姉さんも若いじゃないですか」
「うーん、まあそうなんだけど、学生のやる気って特別なんだよ。……私から見たらさ」
……どうしたのかな? ちょっと落ち込んだような気がする……。
「じゃ、行こうか」
「はい」
落ち込んだように見えたけど、今は普通に笑顔だ。
さっちゃんとユリ姉さんが戦闘談義で盛り上がってる。……わたしの知らないさっちゃんだ。
そっかー、さっちゃんは戦闘好きだったのか。わたしが戦闘訓練を受けてないから、そういった話をしてなかっただけなんだね。きっと、血沸き肉躍る戦闘話がしたかったに違いない。
……体験で戦闘訓練受けれないかな?
訓練を受ければ、少しはさっちゃんと戦闘談義が出来るかもしれない。
……さっちゃんの笑顔はわたしが作る!
「ユリ姉さん、わたしも戦闘訓練を受けてみたいです!」
「大歓迎だよー。学校で教わるより難しいことを教えてあげる」
「……わたし、まだ学校で戦闘訓練を受けたことがないんですけど……」
「来年からなんだよね。でもね、アリアちゃんには学校の教科書的な指導方法より、アリアちゃんに合った教え方がいいと思う。アリアちゃん、勉強苦手なんでしょ?」
……さっちゃん、わたしが聞いてないと思って勝手に成績をバラさないで!
「う、確かに勉強は苦手ですけど……戦闘訓練って、頭を使わないですよね?」
「戦闘訓練って実はすっごい頭使うよー。学校では特にね。安全第一だから仕方ないと言えば仕方ないけど。だから、アリアちゃんには学校の戦闘訓練は向いてない」
「……そうですか」
「そう。アリアちゃんには教科書通りじゃなく、感覚的に教えた方がいいと思うの。考えるより先に身体を動かすってやつ」
「……さっちゃん、成績以外にもなにか吹き込んだ?」
「アリアちゃんの日頃の行いをちょっと話しただけだよ」
……ずいぶんとユリ姉さんに気を許してるね。なんか悔しいよ。
「ま、そう言う事だからさ。とりあえずサっちゃんとの訓練を見学してもらって、次にアリアちゃんかな。アリアちゃんには危険なことはしないから安心してね。4年生に無茶はさせられないから。その分はサっちゃんに上乗せしてあげるよ、楽しみだなー」
……さっちゃん、大丈夫だよね? ユリ姉さんの性格からして「つい」が発生しそうで怖い。……さっちゃんに怪我をさせたら許さないよ。