テラーノベル
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いつも通りの気怠い朝のはずだった。
早川家の客間で目を覚ました僕は、いつものように自分の両手を見つめる。
いや、見つめる必要すらなかった。いつもなら全身の皮膚からじっとりと滲み出ているはずの、他者の寿命を吸い取る「死の気配」が、綺麗さっぱり消え失せている。
「……? 何これ、消えてる……?」
試しに、枕元に置いてあった観葉植物の葉に指先で触れてみた。いつもなら一瞬で萎れ、枯れ落ちるはずの青葉が、瑞々しい緑を保ったままだ。
自分の背中に意識を向ける。いつもは重々しく存在している天使の輪も、白い翼も、まるで最初から存在しなかったかのように、物質としての実感を失い、完全に消えていた。
能力が、封印されている。
理由なんて分からない。ただ、今の僕は人間の寿命を吸い取る悪魔ではなく、ただの「無力で、触り放題の人間」に成り下がってしまったのだ。
「……面倒くさいなぁ。これじゃあ、外にも出られないじゃん」
今まで自分の身を守る最大の武器であり、同時に呪いでもあった「触れた者の寿命を奪う力」。それが消えた恐怖よりも先に、今後の生活の面倒くささが勝り、僕は深くため息をついた。
「おい、天使。朝飯だ、早く起きろ」
早川アキは、いつものようにぶっきらぼうに客間のドアをノックした。
返事がない。居留守か、あるいはまだ眠っているのか。ため息をつきながらドアを開けると、そこにはベッドの上に座り込み、自分の両手を不思議そうに見つめている天使の姿があった。
「……人間くん」
「なんだ。早くしろ、デンジたちが全部食っちまうぞ」
「僕、能力が使えなくなっちゃった」
「……は?」
アキは眉をひそめた。冗談を言うような奴ではないことは分かっているが、内容が突飛すぎる。
天使はベッドから這い出てくると、躊躇なくアキの元へ歩み寄り、その大きめの手を両手でぎゅっと握りしめた。
「なっ……! お前、何して――!」
アキは血の気が引くのを感じ、反射的にその手を振り払おうとした。
悪魔である天使の肌に直接触れることは、すなわち己の寿命を差し出すことを意味する。だが、天使の白い、驚くほど柔らかくて小さな両手は、アキの右手をしっかりと包み込んだままだ。
「ほら。人間くん、何ともないでしょ?」
「あ……」
確かに、いつも感じるはずの、命を削り取られるようなあの悍ましい感覚が一切ない。
それどころか、触れた天使の手は冷え切っていて、まるで凍える冬の日に迷い込んだ仔猫のように、小さく震えていた。
「本当に……吸い取られない、のか……?」
「うん。輪っかも羽も出ない。今の僕は、ただの人間と一緒だよ」
アキは、握られた手から伝わる、悪魔らしからぬ「人間の少女」のような柔らかさと温かさに、妙な動悸を覚えた。いつもは衣服越しにしか触れられなかったその存在が、今、あまりにも無防備に自分に触れている。
「……とにかく、マキマさんに報告だ。すぐ支度しろ」
アキは慌てて手を引き抜くと、耳の裏が熱くなるのを隠すように、背を向けて部屋を出た。
公安対魔特異4課、マキマの執務室。
デスクの後ろで書類に目を通していたマキマは、アキと天使の報告を聞き、ペンを置いた。その琥珀色の瞳が、じっと天使を見つめる。
「なるほどね。確かに、今の天使くんからは悪魔の気配が全く感じられないわ」
マキマは立ち上がり、天使の頬にそっと触れた。天使はビクリと身体を震わせたが、マキマの寿命が縮む様子はない。
「本当に能力が封印されているのね。今のあなたは、衣服を剥ぎ取られた一般人と同じ。いえ、その容姿も含めて、普通の女の子よりもずっと無防備で、危ういわ」
マキマの視線が、天使から、その後ろに控える早川アキへと移った。
彼女が最も懸念していること。それは、天使の能力が消えたことによる戦力低下ではない。
目の前にいる、あまりにも従順で、そしてどこか歪んだ正義感を持つ飼い犬――早川アキの「変質」だった。
今まで「触れれば死ぬ」という絶対的な境界線があったからこそ、アキは天使を同僚として、あるいは保護すべき対象として扱えていた。だが、その制限が解除された今、この美しく、少女のように儚い悪魔が一つ屋根の下にいるのだ。
アキが、この無防備な天使に対して、男としての“発情”を催さないか。
それがマキマにとっての懸念であり、同時に、彼らの関係性がどう崩れるかという興味でもあった。
「天使くん。能力が戻るまでの間、あなたは早川くんの家で生活しなさい」
「え……? でも、あそこにはデンジもパワーもいるし……」
「いいえ。今のあなたをあの中に置くのは危険よ。早川くん、あなたの部屋で、あなたが責任を持って天使くんを管理しなさい。いいわね?」
「……了解しました」
アキは頭を下げた。マキマの命令は絶対だ。しかし、アキの胸の奥で、小さな、しかし確実に熱を持った何かが、じわりと疼き始めていた。
「……狭いね、人間くんの部屋」
昼過ぎ、アキの私室に荷物を運び込んだ天使は、畳の上に座り込んでポツリと言った。
いつもはデンジやパワーと賑やかに過ごすリビングとは違い、アキの個室は必要最低限の物しかなく、ひっそりとしている。
「我慢しろ。マキマさんの命令だ。それに、お前がそんなに無防備な身体じゃ、リビングでデンジたちと雑魚寝させるわけにいかないだろ」
アキは上着を脱ぎながら、極力冷たい声を出した。
だが、視線はどうしても天使に向いてしまう。能力を失い、ただの薄手のシャツ一枚になった天使は、肩のラインが華奢で、首筋が白く、本当に女の子のように見えた。
「人間くん、お腹すいた。アイス買ってきてよ」
「……自分で買いに行けと言いたいが、今の状態じゃ外に出すのも危ないな。待ってろ、冷蔵庫にあるものを持ってきてやる」
アキが部屋を出ると、天使はふぅと息を吐いてアキのベッドに寝転んだ。
いつもなら他人の命を奪う恐怖と戦っているのに、今はその心配がない。その解放感からか、天使は急速に眠気に襲われ、アキの匂いが染みついた枕に顔を埋めた。
夕方になり、夜になっても、天使の能力が戻る気配はなかった。
### 5. 熱帯夜の侵略
夜、部屋に戻ったアキは頭を抱えた。
天使が自分の部屋に寝泊まりすることなど、事前に知らされているはずもない。当然、この狭い部屋にはシングルベッドが一つあるだけだ。
「おい、天使。起きろ。布団は貸してやるから、お前は床で――」
「ん……やだ、眠い……」
ベッドの中で丸くなっている天使は、アキの声に小さく身をよじるだけだった。
乱れた毛布の間から、細い生足が覗いている。悪魔特有の冷たさは消え、今は布団の中で温まった、柔らかそうな人間の肌の質感がそこにあった。
「……チッ、しょうがないな」
アキは諦めて、ベッドの端に腰掛け、そのまま横になった。シングルベッドに男二人――いや、男と、女の子のような悪魔が二人で寝るには、あまりにも狭すぎる。
寝返りを打てば、確実に身体が触れ合う距離。
深夜。
静まり返った部屋の中で、アキは目を覚ました。
隣から、小さく規則正しい寝息が聞こえる。寝返りを打った拍子に、天使の身体がアキの胸元にすっぽりと収まるような形で密着していた。
(……くそ、熱いな……)
アキの身体の芯が、異常なほど熱を持っていた。
昼間からずっと意識しないようにしていた、天使の「無防備さ」。触れても死なない、それどころか、こんなにも柔らかくて、甘い匂いがする。
「……天使」
アキの声は、自分でも驚くほど掠れていた。
理性が「こいつは悪魔だ」と警告するが、本能がそれを跳ね返す。マキマが危惧していた通り、アキは目の前の、完全に自分に依存し切っている美少年に、狂おしいほどの“発情”を覚えていた。
アキは我慢できず、天使の細い手首をつかみ、その身体の上に覆い被さった。
「ん……? 人間くん……? 重い……っ」
目を覚ました天使が、寝惚け眼でアキを見上げる。しかし、アキの瞳に宿る、暗くギラついた肉食獣のような光を見て、天使の身体が恐怖で強張った。
「人間、くん……? どうしたの……顔、怖いよ……っ」
「……お前が悪いんだ。そんな身体で、俺のベッドにいるから」
アキの手が、天使の薄いシャツの中に滑り込む。直接触れる肌の滑らかさに、アキの理性が完全にぶち切れた。
「ひゃあうっ!? ///// な、なに、して……人間くん、やめっ……!」
初めて触れられる、他者からの愛撫。能力がない天使には、アキの強い力を振り払うことなど到底できない。アキの大きな手が天使の細い腰を掴み、引き寄せると、容赦なくその唇を塞いだ。
「んむっ……!? んんんーーっ!! /////」
深い、息もできないほどの口づけ。何度も舌を突き入れられ、天使の頭は一瞬で真っ白になった。
今まで誰にも触れさせなかった身体が、アキの熱い指先によって開発されていく。
「は、ぁっ、んあっ……! ///// だめ、そんなところ、触っちゃ……らめぇっ、あ、あんっ♡ /////」
アキの手が天使の太ももの内側をなぞり、一番敏感な場所へと容赦なく侵入していく。
能力を失った天使の身体は、皮肉なほどに感度が良く、アキの強引で激しい愛撫に、すぐに熱い蜜を滲ませて、ガタガタと震え出した。
「人間、くん……っ、僕、おかしく、なっちゃう……っ! ひぁ、あそこ、あつ、熱いよぉっ……! ♡ /////」
「おかしくなればいい。お前は俺だけ触ってればいいんだ……!」
アキの低い、獣のような声が耳元で響く。
首筋に噛みつかれ、痕を残されるたびに、天使の小さな身体はベッドの上で跳ねた。
恐怖はいつしか、脳をドロドロに溶かすような快楽へとすり替わっていく。アキの激しいピストンが始まると、天使はもう、アキの背中にしがみつくことしかできなかった。
「あ、あっ、あぐっ……! つよ、強い、ぃく、逝っちゃうぅぅっ!! ♡♡ /////」
「天使、天使……っ!」
「んあーーーっ!! ♡っ、はーっ、はーっ、んぅ……っう、あ、あんっ♡ /////」
狭いシングルベッドが、ギチギチと音を立てて揺れる。
能力を奪われ、完全にアキの支配下に置かれた天使は、涙で濡れた瞳でアキを見上げながら、その激しい快楽の渦の中へと、何度も何度も溺れていくのだった。
コメント
1件
おお、これ「チェンソーマン」の二次創作だ!めっちゃ好きな世界観だから読めて嬉しいわ。 能力失った天使の悪魔が無防備になって、アキと同室になるところまでは「あー、そうくるか」って感じで楽しめた。でも後半の展開は想定外だったわ……!急にあの展開になるとは思わんくてちょっと面くらったけど、二人の関係性がどう変わっていくか気になる。 続き楽しみにしてる!
#bl
夜光🎀🍑
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