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──次の日、家を訪ねると、やはり出てきたのは、華さんと二人だけでしかなくて、
「あの、奥様は見えられないんでしょうか……?」
昨日、ご家庭の話を少しだけ聞いたこともあって、そんな問いかけが口をついた。
すると、困ったような顔を二人共が同時にされて、「あっ、ごめんなさい! 立ち入ったことをお聞きしたりして……」と、咄嗟に身体を折り曲げて謝った。
「ああ…悪いな。謝らなくていい……まだ、言ってなかったかな? 妻は、もういないんだ……」
蓮水さんの言葉に、(……いない?)というのはどういうわけでなんだろうと思ったけれど、それ以上は突っ込んで訊くようなことは出来ずにいると、
「奥様は、だいぶ前に亡くなられたんですよ」
と、華さんが口をひらいて、「……えっ」と、思わず言葉に詰まった──。
「……もう10年にもなりますよね……」
「……ああ、そうだな」
二人の会話を聞きながら、(そんな以前に奥様を亡くされていて……?)そう思ったら、
「……昨日は、結婚してもう17年って……」
ついそんな呟きが口から漏れた。
「……ああ、生きていたらってことを、言い忘れたな……」
蓮水さんがそう言って、微かに憂いを帯びた目を伏せた……。