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お昼か。どうするかな。
依頼にでるには遅いか。
「ナギさん。こっちにきて」
受付のお姉さんに呼ばれた。
「今日は薬草採取には行かないの?」
「いってもいいですが、急ぎの依頼がありますか?」
「そうなの。いつもの依頼人なんだけどね。森に入る手前のあたりにある薬草なんだけど、遠いのよ。西のずっと向こうだから、みな嫌がってね。ナギさんならフラットがいるでしょ。どうかと思ったんだけど」
うん、そういうことか。
「薬草はなんですか?」
これ、とカウンターに置かれた紙には、アリオールと書いてある。確か、アロエみたいなやつだったはず。間違いない、絵はアロエだ。
「これはどうやって使うんですか?」
「そうね。このまますりおろして傷ややけどに塗ったり、煮出して飲んだら腹痛が治ったりと何でも使えるの。でも、森と岩山の近くじゃないとないのよ。だから端っこ。それに、この鉱石があれば錬成してアリオールと合わせれば高級ポーションになるらしいわ」
ふうん、そういうことか。鉱石ってどこにあるんだろう。
聞いてみれば、アリオールがある近くの岩場に転がっていることが多いけど、かなりのレアものらしい。
もし、鉱石も見つかったら合わせて買い取ると言っていたらしい。そうなれば、かなりの金額になると言われた。アリオールは株を切り取ってくる。根っこがあればまた生えてくるらしい。ふん、そうだろうね。
今日、明日でできるだけという要望らしいので、うけることにした。これは常時依頼ではなく、レアものなので、薬草採取依頼としてうけたから、頑張らなくちゃ。
とりあえず、見に行って取れるなら少しでも取ってくるとギルドを出た。でも、さすがに腹が減ったね、と森の入り口の草原で昼食を食べることにした。
いつものように火をおこして、肉を焼く。パンとサンドイッチを取り出した。今日はスープはなしだけどね。
ガツガツ食べながら夜の肉も焼く。フラットの肉だけど、一キロほどのステーキを五枚焼いた。でも、これは足りない時の間食となる。夕食は、ギルドの食堂で肉持ち込みで焼いてもらうんだから。
昼食を終えて、フラットの背に乗った。
ふぁふっと声を聞いて、しっかりと首元の毛を掴む。
それを確認したのだろう、フラットは走り出した。
場所は、森に沿って草原を走れば岩山が見えてくるらしい。馬で三十分以上かかると聞いた。
すぐに見たことのない景色に周りを確認しながら進む。当然探索しながらなのでマッピングは進んでいる。そのうち街全体がマッピングできればいいのに。いつかはやり遂げようとそっと心に決めた。内緒だけどね。
街の中央に近づくほど、森が奥へと追いやられているように見える。住宅もたくさんありそうだ。街の建物は高さが高い。
やっぱり中心部は違うな、と感心した。そのうち街の中心へいってみたいなとわくわくする。
そんな風に二十分ほど走れば遠くに岩山が見える。遠見で確認すれば、森の中から岩山があふれ出ているように見えた。
「もうすぐだね、フラット。大丈夫?」
ふぁふっと答えてくれるが、息切れもなさそうだ。本当にすごいね、フラットは。
それからすぐに岩山の麓に到達した。
お疲れさまと、ボウルを取り出し水を入れてやる。ゴクゴク飲むボウルに継ぎ足してやれば、尻尾が大きく揺れた。ご褒美にホットドッグを取り出せば、三つ食べたよ。
それじゃあ探そう。
<サーチ・アリオール>
ポポポポポポ……
おお、かなりあるじゃないか。でも、あちらこちらに散らばってるね。
<サーチ・アリオール&ルゴル鉱石>
ポポポポポポ……
レア鉱石だと聞いてたけど、かなりあるよね。
手に取って見てみれば、これがクスリの材料かと疑うほどきれいな紫の結晶を含んだ石だ。ふぅん、とフラットが匂いを嗅いでいるけど、匂いなんてあるのか?
くわぁん! と岩山の方から持って来た大きめの石は、紫の結晶がある。鑑定すれば、この紫の結晶を錬成して錬金術でポーションを作るらしい。すごいね、フラットと褒めてやれば、くわん! と再び石を取ってきた。うん、これも間違いなくルゴル鉱石だ。
「すごいよ、フラット。じゃあ、ルゴル鉱石はフラットに任せていいかな。俺はアリオールを取るから」
わふっ! と再び岩山の方へ行ってしまった。
じゃあ、俺はあたりの気配探知を発動して、アリオールの光に向かって移動した。
解体用のナイフを取り出して、土から出ている部分の株をカットする。スパッと切れるので楽だ。もう少し大きければ短剣だね。
さくさくと採取して、フラットはゴロゴロとルゴル鉱石を積み上げてゆく。もちろん、後で鑑定するけど、山になった鉱石には、サーチの光があるから間違いないだろう。サーチ結果がフラットにも見えるようになればいいのにな。
三時の鐘がなっても続けて採取していれば、そろそろ三時半くらいだ。
どうするかな、とフラットを見れば、まだまだ集めている。
じゃあ、あと三十分くらい採取しようか。
フラットに負けじと森の入り口まで採取しに近づく。魔物の気配はないから問題ない。今日くらいは魔物無しでお願いしたいよ。
気がつけば、そろそろ薄暗くなってきてる。
ヤバいな、と最後のひと株をアイテムボックスに入れてフラットの所に戻った。
近寄ってくるフラットは、最後の一個だとでも言うように大きな結晶が入った石を持ってきてくれた。
「気がついたらこんな時間だね。ごめん、疲れただろ? これを入れたら帰ろう」
く~ん、と頭をすり寄せてくれる。
じゃあ、と鑑定すれば全て間違いなくルゴル鉱石だった。かなりの量あるけど、俺の相棒はすごい!
そのまま草原側を突っ走るフラットの背に乗って、ギルドを目指している。
あまり森に近づきたくないので、草の中を走ってくれているんだけど、飛んでるような感じだ。本当に早いんだ、フラットは。馬よりも早い。車で言えば、時速五十キロ以上出てると思うんだ。本当に頼りになるよ。
当然のように、二十分もすれば、街道へと出た。
「すごいね、フラットは馬よりも早く走れるんだ。頼りになるよ。何でもわかってくれるしね。僕はフラットがいないと寂しくて大変だよ。一緒にいてくれてありがとう、フラット」
そう言い、ギルドの扉をくぐった。
カウンターの近くでボウルに水を入れて飲んでもらう。
「お帰りなさいナギさん。採取できたかしら?」
「はい。鉱石も取ってきました。数はそれほどではないと思いますが」
すごいわね、助かります。そう言われて照れてしまう。
「どれくらいあるかしら。ここで大丈夫?」
アイテムボックスのリストを確認すれば、かなり無理があるだろう。
無理です、と倉庫の隣の部屋に向かうことになった。
ここにと言われて、床にそのまま置いてゆく。アリオールを次々取り出す俺を見て、お姉さんは無言になった。奥まで並べれば、あと十株ほどだ。残りは籠にいれさせてもらった。鉱石は一番大きな木箱に山盛りだ。
「これほどとは思いませんでした。あの時間からすごいですね。えっと、それでは鑑定しますので、先に食事にしますか?」
そう聞かれてフラットを見れば、水を飲み干しお行儀良く座っている。冒険者の皆に撫でてもらってるけど、誰も頭に手が届かないんだよね。
時間は五時半くらいかな。それじゃ、ゆっくり食事をしますとフラットと一緒に食堂に向かった。
クリーンしてあるので、すっきりしてはいるのだけれど、やはり風呂に入りたい。家が自分のものになったら、風呂を作れるから。寝る場所を作るのは当たり前だけど、風呂は絶対必要だね。
「ナギさん、戻りました~」
そう聞こえていつものようにベンチによじ登る。フラットはテーブルの隣りにお座りした。
お肉出してくれるかな、と言われたのでオークの塊を取り出した。うわぁっ! と驚いたウエイトレスさんは、調理場に声をかけた。当然持てないからね。若い調理人が出てきてくれた。
「いつものように一キロ十枚焼けばいい?」
そう聞かれて、くうんと悲しそうなフラット。それなら十五枚にするかと問えば、くわん! と返事をした。
「すみません、十五枚お願いします。残りはいつものようにカットしてください」
了解、と大きな塊を担いで行った。すごい力持ちだ。
俺のワンプレートが置かれて、フラットの肉が三枚のった皿が置かれる。
いただきます、と二人で突入だ。
フラットの皿には次々とステーキが追加される。一度に四枚乗っかってきた。
俺は呆れてフラットのテンションは上がる。自分たちが取った肉だからいつでも食べられるんだ!
でも、あまりに申し訳ないので、フラットの肉は一枚いくらで焼いてもらうことにした。だから、明日から食事代は俺の分だけ。フラットの分は、枚数制だ。当然、残りの肉は一キロほどのステーキ用にカットしてもらった。
「ナギさん、ギルマスの部屋で」
そう言われて、いつものことだと階段を上がる。
フラットは、フロアで転がっているので行ってくるね、といえばくぅ~んと見送ってくれた。
「よう。あれから採取に行ったらしいな。とんでもない数を持って帰ったと聞いた。お前、鑑定できるのか? それかサーチ?」
あはは、両方ともできます、と言えば呆れている。
「それじゃ、薬草採取はお手の物ですね。それに知識もあるから間違いがないです!」
なぜだかお姉さんが胸を張ってるんだけど。でっかい胸をね……
「じゃあ、薬草採取と鉱石採取から」
そう言い、トレイと明細を渡される。
アリオール八十五株、ルゴル鉱石八十七キロ。これって多いの?
「すごい量ですよ。ルゴル鉱石は大きいものだけ取り出してこれだけあります。小さい物は石の中に残っていますが、二キロくらいあるだろうと聞きました。それも合わせての重さです」
詳細は、アリオールひと株金貨一枚と銀貨七枚。ルゴル鉱石一キロで金三枚だ。ええっ! と驚いた。ルゴル鉱石ってそんなに高いの?
どうやら、本物を見分けるのが難しいらしい。よく似た色の鉱石があるので、ほとんどがクズだと聞いた。
じゃあ、フラットってすごいね! 匂いでわかるんだから。
「鉱石は最初の一個以外はフラットが取ってくれました。クンクン匂い嗅いでたから、匂いでわかるのかな」
匂い? とギルマスが首をかしげる。
「いや、匂いというかフラット特有の感覚かもしれないな。シルバーウルフ王の子だ。特殊能力があるのかもしれん。あとで鑑定してみろ」
そうだ、鑑定すればよかった。
最終的に、アリオールが金貨百四十四枚と銀貨五枚、ルゴル鉱石が金貨二百六十一枚だった。合計でいくらになるんだ? 金貨四百五枚と銀貨五枚? 今までで最高金額だぞ。
えっと見たことない大きくて白っぽいお金がある。
「初めて見るか? 金貨の上の白金貨というのがある。金貨百枚で白金貨一枚だ。だから今回は白金貨四枚と金貨五枚、銀貨五枚だ」
「あの、こんな金額を払って元が取れるんですか?」
「当然だ。この何十倍以上になると思うぞ。それくらいの高級ポーションになるってことだ。お手柄だぞ、ナギ」
とりあえず金を入れろと言われて、革袋に入れてアイテムボックスへ入れた。
「これくらい集まれば、明日は行かなくていいですか?」
「そういうと思って聞いてみたんだけど、明日も頼みたいそうよ。錬金術師はたくさん抱えているらしいから。この際に大もうけするつもりじゃないかな。明日、一日採取してくれたら問題ないだろうって依頼主は言ってたわ」
恐ろしい話しだ。明日は朝から向かえば、もっと取れる。それでも高級ポーションとして売りさばけるなんて。戦争って怖いね。
「まだまだ戦争は続くんでしょうか」
「……いや、そうでも無いかもしれん。隣国の方が押していると聞いた。お前が取ってくる薬草で兵士や騎士の回復が早いらしい。もちろん、兵も補充しながらだけど、兵士や騎士たちが一晩で完全回復して前線に出てるらしいから、圧倒的に押しているみたいだぞ」
そうか、まあ、余り嬉しくないけど、早く終わればいいな。
「まあ、今のうちに稼いでおけ。戦争が終われば薬草の単価が元に戻るからな。今と同じ金額はもらえない。だから今は金をもらって高級薬草の勉強をしているくらいに思っとけ」
そうだよね、戦争はいつか終わるから。だから無駄遣いせず、頑張って採取しよう。
「ここからは魔物の話だ。オークだが、大きい二頭はオークジェネラルだ。キングがいなかったのは残念だが、今、遭遇しなくて良かった。キングは別格だからな」
明細書を渡されて確認する。
オークジェネラルはかなり高級みたいだね。でもやっぱり高いのはサンドクラブ、そのもっと高いのはサンドタランチュラだ。おっそろしい値段が書いてあるけどほんとかな。
オークは全部で金貨六枚と銀貨三枚、小銀貨八枚だった。サンドウルフは全部で金貨二枚と銀貨一枚。サンドクラブは、俺が脚を五本取っちゃったけど、全て使えるので金貨九枚。サンドタランチュラにいたっては、金貨二十枚になった。こんなに高いの? と驚いていれば、外皮は全て防具や装飾に使えるらしい。絹糸は特別の布になり、爪は武器として生まれ変わるという。心臓が内臓のクスリとして売れるので、金額が爆上がりしたと聞いた。
すごいね、今度見たら狩っておこう。
合計金貨三十七枚と銀貨四枚小銀貨八枚になりました!
うん、将来のために貯金しよう!