テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
29

2,901
佐野勇斗は知らない。
―――――――――――――――――――
ー収録中ー
『佐野きゅんって服めっちゃオシャレよなぁ、流石かっこええな笑』
「えっへ、あざっす笑」
『いやちょっとは謙遜しろやぁ笑』
『笑笑笑笑笑』
共演者さん達は知らない。
メンバーの俺たちから見てもすごくオシャレな勇斗が、たまにタグやしつけ糸を取り忘れてくる時があることを。
気づいたメンバーが指摘すれば、変な言い訳をしたりせず、照れながら少し恥ずかしそうに、ありがと、と言う顔がすごく可愛くて堪らないということも。
ー廊下ー
『佐野さんってめっちゃ周りよく見えてるよね。こないだもさ、私が咳してたら良かったら舐めてくださいってのど飴くれたんだよねー。』
『えーやば!!実は私もさぁ────』
若い女性スタッフ達の会話が耳に入る。
そんな彼女達は知らない。
他のスタッフ陣からも周りがよく見えてて気遣いが出来ると評される勇斗。が、新人の若い女性スタッフに有名人だから怖そうというありがちな偏見を持たれ、めちゃくちゃに怖がられていることを知った時には、かなり気にして落ち込んでいたことを。
そして、「えー俺なんかしちゃったんかな……。顔が怖かったとか、?」とめちゃくちゃ真剣に悩んで猛省していたことも。
ちなみにその新人若手スタッフも数日後にはしっかり佐野勇斗の沼に仲間入りしていた。
ー休憩中ー
『いやぁ佐野くんって色気がすごいよね、大人の男性って感じで普段からあんなかっこいいんだろね。』
『普段からかぁ、かっこいいのもたいへんだなぁ。』
自分の撮影現場からすぐ近くで勇斗も撮影していると聞き、ちょっとした差し入れをと思って来てみたらちょうど休憩中だったようで、カメラマンさんや照明の方達の会話が聞こえた。
でも、彼らは知らない。
「えっ仁人じゃん!!えどーしたの?もしかして俺に会いにきたのぉ?ニヤニヤ」
「ん。差し入れ。俺も現場近かったから。」
「え?、あぁ、そゆこと…まぁありがとな!」
「もしかして本気で俺に会いに来たのかもって思った?笑」
「……はー?んな訳ねぇだろ。ノリやん、ノリ。」
分っかりやすい間だな笑
かっこいいだの色気があるだの大人の男だの言われている勇斗だがメンバー大好き(これはみんな知っているだろう)で、撮影でいっしょになる予定がない日にこうやってメンバーが顔を出すだけで、大型犬っぽさを感じる嬉しそうな顔で駆け寄ってきて、可愛らしい笑顔を向けてくる。
こんなこと彼らは知らない。というか知っていては困る。俺たちだけの特権なんだから。
まあ、勇斗が仲良くなった俳優の方とかと会う時同じような笑顔を向けているのだろうか、と不安になることがない訳ではないが。
ー佐野宅ー
「ねぇ見てこれ笑笑笑」
(柔太朗のやばい事故画見せる)
「あかん笑笑笑笑笑」
「ヤバすぎやん笑笑笑笑」
「え待って俺どうした?笑笑笑笑笑笑」
「ウッハハハハハハハハハハハ笑」
「やばいよなぁ笑笑笑」
「今写真フォルダ漁ってたら出てきた笑」
「勇ちゃんのスマホにそんな柔が眠ってたなんてやばいなぁ笑」
「俺太智のめっちゃ昔の変顔とかもあるよ笑笑笑」
「え!見たいんやけど!見してやー!!」
「笑笑笑笑笑」
勇斗は知らない。
こんなことを言っている俺たちメンバーの写真フォルダには今までの愛おしい勇斗の姿が沢山眠っていることを。
たまに4人だけで可愛い勇斗を見せ合いっこしたり、自慢しあったりしていることも。
ー楽屋ー
『あっ佐野さんこれ、良かったらどうぞ』
「えっいいんですか?ありがとうございます」
男性スタッフが差し入れを持って勇斗に声をかける。
最近人気な店のフィナンシェが綺麗に並べられている箱を持ちながら勇斗を意味ありげに見つめるスタッフ。
そんな事を気にする素振りも見せず、どれにしよーかなー、なんて嬉しそうに眺める勇斗。
そしてスタッフの手がズボンのポケットにのびたかと思えばスマホを取り出した。
…連絡先でも交換しようとしてんのか?
スタッフの視線とスマホに気づいたのか太智が席を立ち、「俺フィナンシェ大好きなんすよー、俺もええですか?」と一言。
本人は太智どれにするー?と相変わらず呑気な発言をする。
「はぁ…。」
スタッフを睨みながらも、思わずため息が漏れる。スタッフに対しても、勇斗に対しても。
あのスタッフは前にもこういう事があって、同じように差し入れを持って勇斗に近づいた。親密な関係になろうとする見え見えの下心を持って。
でもその時だって勇斗はうまそー!とか何とか言って何にも気づかないから、舜太が俺も貰ってもいいですかー?と間に入ってくれたお陰で何事もなくすんだ。
あのスタッフ、いい加減見逃せなくなってきたよなぁ。
………。
しかし全く、なんであんなに鈍感なんだあいつは。
「勇斗。」
キョトンとした顔でこちらを振り返る。
こっち来い、という動きを付ければ、何も理解していなさそうではあるが、トテトテと移動してきた。
太智もスタッフをひと睨みしてその後ろを着いてくる。
こちらに戻ってきた勇斗。に舜太と柔太朗がくっついて年下らしく甘えた態度をとれば、簡単に勇斗の気はスタッフから2人へと移る。
俺たちの圧に負けたスタッフがビビりながら、でも最後まで恨めしそうにしながら、楽屋を後にした。
勇斗は知らない。
勇斗が自分が思っている以上に魅力的で男とか女とかなんて関係なく人を惹きつけるような人間であることを。
勇斗は知らない。
勇斗はいつも俺がM!LKを、俺がメンバーを守るみたいな感じだし、世間的に見てもそういう立ち位置にいる。
けど、実はそんな俺たちメンバーにめちゃくちゃ大事に守られているということを。
そして、あまりにも自分のことに鈍感だから、俺たちが随分苦労しているのだということも。
でも構わない。
正直、勇斗が鈍感なのは今に始まったことじゃないし、半分諦めている自分もいる。
だからこそ
みんなが知らない、俺たちだけが知っている勇斗をこの先も、俺が、俺たちが守っていく。
せいぜいお前は、自分が守っていると思っているヤツらに守られておけばいいんだ。
こんなこと佐野勇斗は知る由もない。
今日も楽屋で、いつも通り、メンバーと、幸せそうに笑っている。
知る必要なんてない。
―――――――――――――――――――
初めて、書いてみてしまいました😭
私、見る専で生きていくつもりだったんですけど、やっぱり色んな方の素敵な作品読んでると、こういうのいいなぁとか色々案が浮かんできたりするもので。
初めてでまだまだ下手くそですが、これからも時々、何か書けたらなと思っております!!
よろしくお願いします🙇♀️
コメント
3件

最高でした✨素敵なお話ありがとうございます😊癒されました
読ませていただきました……!初めて書いたのがこの作品だなんて、すごくもったいないですよ。佐野くんの“カッコいいのにどこか抜けてる”感じと、メンバーたちがこっそり守ってる視点がめちゃくちゃツボでした。特に「勇斗は知らない」の繰り返しが、読んでるこっちまでニヤニヤしちゃう構成で素敵です。大型犬みたいに駆け寄ってくるところとか、本当に愛おしいですね……。これからもぜひ書いてください。応援してます🌷