──────勇者視点──────
バチンッ
そんな、叩く音が鳴る。発生源はれいまりさんの右ほお。かなり強く叩かれたらしく、頬は赤く腫れ、痛々しかった。しかし、その傷よりもその表情が痛々しかった。呆然とした、ぽかんと開いた口。視線は下に落ちたあと、叩かれた頬に視線を向けている。目に涙をいっぱいため、その涙は頬を伝う。
「───ぇ。お、おかぁさん?」
独り言のように、掠れた小さな声がれいまりさんから溢れ出る。
私は、驚きと衝撃でその場から動くことが出来なかった。
私は、今まで人間から嫌われてるのは自分だけだと思っていた。嫌われる理由は明確で。人間の癖に人外のような力を持っているし、人外のように魔法が使えるからだ。生まれた瞬間から勇者という力を持っていた。その力は、周りから不気味がられたが私は両親に恵まれた。両親は私が勇者なことを褒めることはしたものの、勇者だから、という言葉を1回も言われたことがない。それに、悪いことはしてはいけない、周りを大切にしなさい、力があるからと1人で思いつめないで。そう優しく声をかけてくれた。
───親だけが私の救いだった。
だから、勘違いしていた。どの親も、自身の子供が1番だと。私がそうであったように。だって、だって。実際にみんな私のことを嫌っていたじゃないか。例外だなんて───。
上がる心拍。それと反比例して指先が冷えていく。そうだ。忘れていた。この子は私が今まで見た中で例外だったじゃないか。
私が勇者ということを知らず、勇者と知ってもなお、人として接してくれる。
私の常識の裏には例外がいる。そんな簡単なことを私は知らなかったのだ。
自己否定に陥っていたが、はっと前を見る。
ダンッと短い音が響き、空中で小さな弧を描いて落ちる人影。れいまりさんだ。
先程まで全く聞こえなかった音が聞こえ始める。大人の怒鳴る声、騒ぎを聞き付けて駆けつけてくる大人の足音。れいまりさんは当たり所が悪かったらしく、頭から血が流れている。その血は芝生を染めるほど酷い出血だった。けど、まだ間に合う。
俺は魔法を発動する。
「『スリープ』」
指元に魔法陣を展開し、詠唱を唱える。スリープ。そのままの意味で対象を強制的に眠らせる。単体であれば魔力はそこまで使わなくても使える。れいまりさんのお母さんを眠らせた後、素早くれいまりさんを回収する。
「お主、旅のものか?なら、そいつを置いていけ。」
後から来たであろう推定お偉いさんであろう老人がこちらに歩みよる。気色の悪い笑みを浮かべながら向かってくる姿は同じ人間と思いたくなかった。
「無理です。この子にはすぐに治療が必要なので。」
「…わかるじゃろ?そいつは生贄じゃ。」
「…ッ。こんな小さな子をなんで生贄に───」
ダンッ
その老人が勢いよく地を蹴り、音を鳴らす。自身が怒っている、というアピールでしかないそれ。子供ならその程度の脅しで十分だ、と馬鹿にされている気しかしない。
「そうしないとわしら全員が食われるじゃよ!!!お主も人間ならわかるじゃろ?ほれ、さっさと渡せ。」
感情的に叫んだ後、またしても同じ笑みに戻り催促をする。その後ろには桑や、斧を持った村民たちが集まっていた。───話を聞かなければ武力で、ということだろう。
こいつらはさっきの魔法を見なかったのだろうか。俺は仕方なくれいまりをおんぶしてから、空中に火を放つ。
その火はまるで意志を持っているように龍の姿を模した形になり、空をさまよう。
「私こそが勇者である。私に指図するということはすなわち人類全てを敵に回すということ。貴様らにその覚悟があるのか?」
「…勇者様でしたか!いやぁ、すみませんね。なら、交渉しませんか?その少年はあげますから代わりに魔獣を討伐して欲しいのです。」
綺麗な手のひら返し。何回も見たことがあるこの流れに既視感すら覚え始める。
俺は無言で先程討伐した魔獣の毛皮を投げ捨てる。見やすいように辺りに光魔法をばらまいて。
「既に討伐済みだ。その毛並みを売れば数百万は下らない。代わりにこの子を貰う。いいな?」
「どうぞどうぞ!そんな役たたずがいると言うならばお好きにしてください!まだまだ貧相な体ですけどw」
「───勇者への侮辱を確認。」
するりと俺の影から出てきたのは死神の『めめ』
俺が勇者として動いているかの天からの監視役であり、そして、俺を勇者として証明する正真正銘の神である。
「勇者は人間に手を下せません。けれど、私は下すことが出来る。この存在は不必要と判断。神の名のもとに───」
そう彼女が宣言すれば、奴らの肉体は既に肉片とかし、その場には血溜まりと肉の欠片が落ちるだけとなる。
れいまりが気絶していてよかったと思う。こんな衝撃的な光景をまだ子供のれいまりに、しかも見慣れていないであろう。そんな子には見せられない。
「めめ、ありがとう。」
「この方達の存在が神の利になると思えませんし。当然の裁きです。」
「それもそうだね。…とりあえず仮拠点に戻ろう。れいまりをすぐに治さないと。」
そんなことを二人で話しつつ、俺はテレポートで仮拠点に戻る。
ここで切ります!先週1回しか投稿できてないので代わりです!まあ、めめいえコンビはこのルートでも健在です。まあ、めめいえコンビが好きだから採用!っていうのもあるにはあるんですけど、前回最恐の敵が今回は最強の味方として出てくるのがシチュとして好きなので…。別世界なので別に勇者画いえもんさんじゃなくても良かったんですが、ややこしくなりそうなので。って感じですね。
それでは時間もないのでおつはる!
コメント
12件
あら、めめさんも出てくるんだ