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「リカちゃん、あいつ知り合い?」
「あ、いえ……」
航太が心配そうに囁く。
昼間スポーツジムで大騒ぎした男性だと航太も気づいて警戒心を募らせた。
「へぇ~、男連れだったんだ」
「おい淳志、男連れに絡むなよ~、男が嫉妬するぞー」
淳志と一緒に騒いでいる男性が面白そうにヤジを飛ばす。
「ああ、そうだな。悪い悪い、初めまして~、俺はリカの初めてをいただいちゃった男でーす」
「ギャハハ! やめてやれって」
「リカが尻軽女だってことを教えておいてやらねえと」
「かわいそー。男、顔真っ赤だぜ。ギャハハ」
顔を真っ赤にしたのは航太ではなくリカだ。
そんなことを大声で暴露されて、航太はどう思うだろうか。
怖くて航太の顔が見られない。
動けなくなったリカの手がおもむろに握られる。
「リカちゃん、行こう」
リカにだけ聞こえる声で、航太はリカを引きずるようにして店を出た。
無言で夜道を歩く。
握られた手は優しいのに胸はズキズキと痛んだ。
「……ごめんな」
しばらくして航太が呟き、リカは首を傾げた。
「……なんで先輩が謝るんですか?」
「いや。ああいうとき、リカちゃんのことちゃんと助けてあげられたらよかったなと思って」
「助けるもなにも、……あれは……本当の……ことだから……」
ごまかしても仕方がないと思った。
あれだけ淳志が喚いていたのだから、航太だって理解したに違いない。
どれだけ幻滅されただろうか。
すべて自分の浅はかさが招いたことなのだから、弁明のしようがない。
「聞いてもいいのかな?」
「なにを?」
「……あいつがリカちゃんの初めての相手……なの?」
「……先輩、それはセクハラ……です」
正直、言いたくないと思った。
さっき自分で「本当のこと」と言ったのだからもうバレてはいるのだろうけれど、改めて聞かれるとなぜだか言えなくて、リカは適当にごまかす。
それに対して航太はヘラっと笑いながら、「そうだよね、ごめんごめん」と明るく笑った。