テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
和くんの声が、甘く、しかし粘着質に響く。
そして、さらなるカミングアウトが私の心を打ち砕いた。
「それにあのとき、玲那ちゃんと街中で会ったのも偶然じゃない。」
「え……?ど、どういうこと、偶然じゃないって…」
私の声は震え、言葉にならない。
偶然の再会だと思っていたあの瞬間が、彼らの計画の一部だったというのか。
「僕はさ、何でも︎︎︎︎"︎︎一颯と同じ"︎︎じゃないと嫌なんだ。」
和くんの言葉は、私の理解を超えていた。
彼の顔は、まるで子供が自慢話をするかのように、無邪気な笑顔を浮かべている。
「だから一颯に彼女ができたっての聞いてから、ずっと玲那ちゃんを監視して、一颯と上手く行っていないところで、偶然の再会を装って姿を現して、きみを口説いた」
監視?
私の生活が、彼らに筒抜けだったというのか。
その事実に、吐き気がこみ上げてくる。
「な、なんでそんなこと…」
「きみを彼女……奥さんにするため!僕と玲那ちゃんがエッチしてるところ見ても、一颯は怒るどころか謝ってきたでしょ?それも計画の範疇」
彼の言葉が、私の脳内で響き渡る。
あの日の出来事、一颯くんの奇妙な反応
すべてが今、繋がってしまった。
それは、あまりにも恐ろしい真実だった。
「僕も一颯もお互いに︎︎"︎︎︎︎同じ"︎︎がいいってこと。だよね?一颯」
「もちろんだ、だから和が玲那とセックスしてるのを見て、興奮した」
「ああ、和が俺と同じ人を愛していると…嬉しくなったんだ」
二人の言葉に、私はただ絶望するしかなかった。
彼らの視線が、私を絡め取るようにまとわりつく。
その視線は、もはや人間のものではなく、獲物を捕らえた獣のようだった。
「ねえ、一颯くん…どうしちゃったの、結婚する前と雰囲気が全然違うよ……っ!!わけわかんないよ!」
私の悲痛な叫びにも、一颯くんは表情一つ変えずに答える。
「いいや、別に変わってない」
彼の目は「玲那の身体は僕たちのものだ」と雄弁に語っていた。
その視線は、私に吐き気しか催させない。
一颯くんが私の顎を掴み、無理やり顔を上向かせた。
「大丈夫、衣食住は保証するし、安心してここにいるんだ」
そして、そのまま口付けをしてきた。
突然のことに、私は身動きが取れない。
口内にぬるっとした舌が侵入してきて、私の歯列をなぞるように舐め回される。
その感触は、かつての甘美なキスとは全く異なり、ただただ不快だった。
舌を絡め取られるようにして吸われた後
ようやく解放されると、今度は首筋に強く吸い付かれる感覚がした。
それはいつもの快感とは程遠く、畏怖感だけが残った。
彼の歪んだ愛情が、私の全身を侵食していくようだった。
それから1ヶ月後
私は目を覚ますと、なぜか拘束を解かれ
ベッドに寝かされていることに気づいた。
身体を覆っていた鎖の冷たさも、ガムテープの粘着感もない。
「口も塞がれてない、?うそ、急にどうして…!でもこれは、チャンス…!?今なら!」
私の思考は、この監禁生活の中で
どうやってここから出るかという問いを放棄していた。
しかし、目の前の状況は、まさにチャンス以外の何者でもなかった。
心臓が激しく脈打つ。
今ならいける。ふらつく足を奮い立たせ、私は自分に言い聞かせた。
「生きるためだ、あの双子から逃げるためだ」
転けそうになりながらも、私は必死に扉の前まで走った。
ドアノブに手をかけ、ゆっくりと回す。
カチリ、と軽い音を立てて、鍵が掛けられていないことが分かった。
思わず、顔に笑顔が広がる。
震える手で扉を開けた。
しかし、そんな簡単にはいかなかったのだ。
扉を開けた先には、まるで私がそこに来ることを知っていたかのように一颯くんが立っていた。
彼の顔には、いつもの穏やかな笑みが浮かんでいる。
私の心臓は、絶望の淵へと突き落とされた。
「玲那ちゃん、おはよう」
彼はそう言って私を抱きしめると、そのままベッドへと突き飛ばされた。
「きゃ…っ!!」
私の悲鳴は、虚しく部屋に響く。
「なにしてたの?まだ朝早いよー?」
和くんも、まるで何もなかったかのように、寝癖のついた頭で現れた。
私は必死に抵抗するが
彼らとの力の差は歴然で、全く歯が立たない。
彼らの手が、私の身体を抑えつける。
「玲那ちゃん、逃げようとしたんだね?」
和くんは、私の頬を優しく撫でながら聞いてくる。
その優しい声と、彼の瞳の奥に宿る冷たい光のギャップに、私は身震いした。
「……っっ!」
(怖い怖い怖い怖い、声が出ない…っ)
恐怖と絶望が、私の喉を締め付け
何も言葉を発することができなかった。
ただ、首を横に振るだけだった。
それは、私の防衛本能が、これ以上彼らを刺激してはならないと告げていたからだ。
「ふーん、まあいっか。検証はできたしね。まだ僕らの愛が足りてないから逃げようとするんだよね…」
そんな私の反応を見た二人は、不満そうにするわけでもなく
悲しそうに、しかしどこか嘲笑うかのように私を見ていた。
彼らの目には、私への憐憫と、そして歪んだ勝利の感情が混じり合っている。
そして一颯くんが、私の顔に思いっきし近づけて、低い声で囁いた。
「次俺たちから逃げようなんて考えたら、許さない。それは浮気よりも重い裏切りになる」
その言葉は、私の心に深く刻み込まれた。
私はもう、ここから逃げられないのだと悟ってしまった。
私の常識上の「愛」と、彼らの「愛」が
全く異なるものであることが、嫌というほど分かった。
もう、彼らと心を通い合わせることなどできない。
彼らの愛はあまりにも重く、私を押し潰す。
私は、ただ逃げることを完全に諦めるしかなかった。
それが、この監禁生活で
私が死なないための唯一の術だった。