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空は少しだけ曇っていた。
けれど、その薄い雲を透かして陽が差し、地上をやわらかく照らしていた。
人間界は今日も穏やかで、空の上とはまるで違う。
不破湊がふわりと降りてきたとき、すでに4人は揃っていた。
公園のベンチ。お決まりの場所。
甲斐田晴は、缶コーヒーを片手に読書し、剣持刀也は、スマホでゲームをしている。加賀美ハヤトは、木の根元に腰掛けて空を見上げ、三枝明那は……
なんだかそわそわしていた。
三枝明那(……なんだよこれ。何が“これ”なのかすらわかんないけど、最近ずっと変なんだよな)
視線は自然と、不破湊の方へ向かう。
人間じゃない、ってわかってる。
なのに、あまりにも自然で、あまりにも無垢で、近づくほどに触れたくなる。
心のどこかがざわざわして、でも理由がわからない。
不破湊「おはよ~!あれっ、今日もみんな集まってる~!」
剣持刀也「おー、天使様。お勤めご苦労さまです」
加賀美ハヤト「ふふ、毎日顔見れるのはありがたいですね」
甲斐田晴「今日も天使って感じ、すごいな……」
三枝明那「……」
いつものやり取り。
ふわっちが来るたびに、空気がふわっと和らぐ。
その“特別な存在感”が、最近三枝明那には、どうにも落ち着かないものになっていた。
不破湊「ね~ね~、今日って、何の話する~?」
不破湊が無邪気に問いかける。
天使らしく、汚れひとつない笑顔で。その瞬間、明那の中で何かが弾けた。
この気持ちの名前が、ふと口から漏れた。
三枝明那「……やっぱり、恋なんかね……?」
不破湊「ん?なになに?恋ってなあに?」
甲斐田晴「……」
剣持刀也「え、マジで言った…?」
加賀美ハヤト「急にどうしたんですか、三枝さん……」
三枝明那「ち、違うっ!別にふわっちがどうとかじゃなくて、なんか、最近、そういう話とか聞くし!考え事しててさ!なんか、その、ふと思っただけであって!」
顔が真っ赤だ。耳の先まで染まっている。誰が見てもわかる。
でも、何より不破湊は、相変わらず天然で無垢な反応だった。
不破湊「“恋”って、あったかいもの?それとも、甘いの?」
三枝明那「いや、それは……」
不破湊「この前、明那くんと一緒にチョココロネ食べたとき、なんか、すっごく“しあわせ~”ってなったから、それかなって思ったの」
三枝明那「……」
不破湊「明那くん、すっごく優しかった。お話ししてると、心がぽかぽかするし~。それって“恋”ってやつ~?」
言ってることがあまりにストレートで、あまりに無防備だった。
けれど、その言葉ひとつひとつが、三枝明那の胸に突き刺さる。
三枝明那(なに言ってんだよ、ほんとに……そんな顔で、そんな声で、そんな無邪気な目で……)
ドクン、と心臓が跳ねる。
触れたい。でも、触れたら壊してしまいそうで。
何も知らない君が、何かを知ってしまうのが怖くて。
三枝明那「……ちがうよ、それは違う」
不破湊「えっ?」
三枝明那「恋ってのは、もっと……やばいやつなんだよ。頭おかしくなるくらい、ぐっちゃぐちゃで、どうしようもないやつなんだよ」
不破湊「そうなんだ~?じゃあ、まだわかんないや」
屈託なく笑う不破湊に、誰も言葉を返せなかった。
それぞれの胸の中に、違う形の「恋」が芽吹き始めていた。
けれど、それに気づいていたのは、まだ三枝明那だけだった───。
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