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#年の差
水無月 京
836
鷹槻れん

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鷹槻れん

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#強引
「今、高遠と吾妻は七鳳組の事務所の地下に居る」
「…………」
「高遠については、稲見組の若頭暗殺を企てていた件も明るみに出ているから身柄は柳生会へ引き渡されることになるだろう。だが、吾妻については……処遇の全てが俺に委ねられた」
「…………っ!」
その言葉に、俯いていた羽衣子ははっと顔を上げた。
「……昴さんが、兄の処遇を決める……ということですか?」
「ああ」
短い返答を聞いた羽衣子は再び視線を落とすと唇を固く結ぶ。
そんな羽衣子を見つめながら昴は淡々と言葉を続けた。
「俺はアイツを許すつもりはない。最低の人間だ。正直、生かしておく価値すらないと思っている」
厳しい言葉に羽衣子は何も返せない。
それでも昴は少しだけ声音を和らげた。
「……ただ、お前の考えは聞いておきたい。どれだけ最低な奴でも、お前にとっては血の繋がった家族だ。だから、お前の気持ちを無視して俺一人で決めるつもりはない」
「……昴さん……」
「明日の午後、事務所へ行く。それまでに答えを出してほしい」
突然突きつけられた決断に羽衣子の表情は曇ったままだった。
一晩で答えを出せと言われても簡単なことではないのは昴も理解している。
けれど、いつまでも結論を先延ばしには出来ない。
もし羽衣子が決められなければ、その時は自分が責任を負って決断するつもりだった。
沈黙が流れたあと、羽衣子は意を決したように顔を上げる。
「……あの、昴さん」
「何だ?」
「明日、事務所へ行く時……私も連れて行っていただけませんか?」
思いがけない願いに昴は目を見開いた。
「……もう一度、兄と直接話をさせてほしいんです。お願いします」
真っ直ぐに頭を下げる羽衣子のその瞳には迷いこそあったが、どこか覚悟を決めたようにも思えた昴は暫しの沈黙のあと、
「――分かった」
きちんと向き合うことで羽衣子自身が答えを見つけられるのなら、そう判断した結果、羽衣子の願いを受け入れたのだった。
「乙哉、皐月、希海を頼む」
「了解」
「こっちのことは任せてください」
翌日、一緒に行きたいと駄々をこねる希海を二人に託した昴は羽衣子を連れて七鳳組の事務所へ向かい、その車内には重苦しい沈黙が流れていた。
ハンドルを握る昴の隣で羽衣子は膝の上に置いた手を強く握り締めている。
昨日、想汰のことを聞かされてから羽衣子の心はずっと揺れ続けていた。
これまで想汰から受けてきた仕打ちを思えば許すという選択肢など本来はあり得ない。
それでも、たった一人の肉親であるという事実が羽衣子の決意を鈍らせていた。
葛藤を抱えたまま俯く羽衣子を横目に昴は何も言わず車を走らせる。
今は下手な慰めの言葉よりも羽衣子自身が答えを出す時間が必要だと分かっていたから。
やがて車は事務所へ到着し、車を降りた二人を待機していた数人の組員が出迎えた。
「二人はどうだ? 何か話したか?」
昴が尋ねると一人の組員が首を横に振った。
「いえ、高遠の方は相変わらず何も話しません。吾妻の方は、『自分は悪くない。悪いのは全部高遠だ』の一点張りです」
「……そうか」
そのやり取りを聞いた羽衣子は胸の奥が締めつけられる。
想汰は今もなお自分の非を認めようとしていないからだ。
「羽衣子、大丈夫か?」
心配そうに声を掛けられ羽衣子は小さく頷く。
「は、はい……」
「そうか、それなら行くぞ」
昴はそう告げると地下へ続く階段へ足を進めていく。
薄暗い通路を進み、いくつか並ぶ鉄扉の前で立ち止まった昴に続いて羽衣子も足を止め、鍵を外しながら昴は静かに言った。
「二人きりで話した方がいいだろう。俺は外で待っているから、話したいことを話すといい」
ゆっくりと扉が開き、意を決して中へ足を踏み入れた羽衣子の姿を見た想汰は目を見開いた。
「羽衣子!」
その声には驚きと安堵、そしてどこか嬉しさまで滲んでいた。
「来てくれたのか!」
昴は部屋へ入り、想汰が柱に拘束されて身動きが取れない状態であることを改めて確認する。
「羽衣子がお前と話がしたいそうだからな。時間をやる」
それだけ言い残すと部屋を出て静かに扉を閉めた昴は、扉を背にするように寄りかかった。
コメント
1件
うわ、今回も重くて苦しいけど、すごく丁寧だった……。羽衣子が「私も行かせてほしい」って自ら言い出したとこ、胸がギュッとなった。許せない相手でも血の繋がりって切れないし、それに向き合おうとする強さが本当に尊い。昴さんの「答えを急がせない」スタンスも、すごく彼らしい優しさだなって思う。続き、気になる……。