「....おはよ、おんりー。」
あれから、僕はずっとおんりーの病室に通っている。
今のところ、特に変わったことはない。
たまに僕のことを覚えているおんりーで、
たまに僕のことを覚えていないおんりー。
ただ、今日は少し違った。
「....お、はよう。えっと...」
「...おらふくんっていいます。おんりー。」
「...いつも、お見舞いに来てくれてる...人?」
「そうそう!どしたん?日記でもつけとるん?」
「...いや...なんとなく...覚えてた。」
「!」
「で、でも、それ以外は...」
「ええんよ!それだけでも覚えとってくれたんやね!嬉しい!」
「...ふふ。」
「あ!おんりー笑った!」
「あ、えと、...」
「...ふふ。おんりーは可愛いなぁ。」
意味があるのか分からないけど頭を撫でようとした。
今のおんりーはきっと僕のことを覚えていない。
一度、頭を撫でようとしてびびられたことがある。
だからうっかり手を伸ばしたあとに引っ込めようとしたけど、
「...んん....」
おんりーは少し手に頭を押し付けるように首を伸ばした。
「!...どしたん、おんりー?頭撫でられるのやじゃないん?」
「...うん。なんか...おらふくんなら...いいかなって。」
「...え!」
「あ、いや......どうかした?」
なぜか、目が熱い。
「....泣いてるの?」
「...え?あ、えっと...な、なんでもない!ちょ、ちょっと飲み物買ってくる!」
「う、うん。」
病室を走って出る。
「....なにが、おらふくんならいいかなってだよ...」
ああ言ったおんりーは、
僕と暮らしていたおんりーじゃない。
「....絶対って言ったのに...」
なに言っても意味がないのは分かってるけど、
「.....嘘つき。」
裏切られた気分だ。