「…さて」
クリエティが居なくなった後、アリエノスはバグ退治に向かうため、現在の拠点へと向かう。
そんな彼の耳には、先程は無かった人工的な機械がついていた。
これは、連絡用にクリエティから渡された「ツウシンキキ」というやつらしい。本来この世界にはない筈の物であるが、それをクリエティは創り出せる。そういう奇跡なのだ。
…草原を暫く歩くと、森が見えてくる。森に入り、まっすぐ歩く。枝が特徴的な別れ方をしている大木を左に曲がり、目印に立てた看板の更に向こうへ進む。すると、丸太でできたコテージのような家が見えてくる。
微かな木漏れ日に照らされ、幻想的な雰囲気である。
この家が現在の彼の拠点である。
最悪彼は野宿でも良いのだが、それでは駄目だとクリエティが勝手に作って置いていってしまった。折角なので使わせて貰っているわけだ。
中に入り、取り敢えず旅の準備をする。
バグ退治はそのバグの性質にもよるが、基本1〜3日、長い時は1ヶ月以上かかった事もある。出来るだけ入念に準備しておくのが大切だ。
大きめのリュックにある程度の必需品を詰め込み、次に着替えを始める。
…上の衣服を脱いだ辺りだろうか。突如、ツウシンキキからクリエティの声が聞こえ始めた。
『あれ?アリエノス、少し痩せたかい?ダメだよ、しっかり食事は摂らないと。』
…このツウシンキキは音声以外拾わないと言われていたはずなのだが…
なぜさも見えているかのような発言が…?
と、純粋に疑問を抱く。だが、その理由はすぐにわかった。
窓の外に明らか不自然な鳥が居たからだ。
生き物らしい動きを一切せずこちらを凝視している。恐らくはクリエティと視界を共有しているクリエティの創造物なのだろう。
…まあ、クリエティの監視癖は今に始まった事じゃないし、既に慣れた。
鳥は無視してさっさと着替えを済ませよう。
_諸々の準備を終え、勢いよく外へ飛び出す。
…そういえば。まだクリエティからバグの位置情報を聞き出せていなかった。と気付き、クリエティに聞こうとする。
そうしたら、丁度良いタイミングでクリエティから連絡が入った。
『アリエノス、目的地は西方に位置する街、ソウスだ。』
ソウス。確か前にも訪れた事がある。
だが以前は強力な主導者が居たため、バグ退治も比較的スムーズに行われ、ぶっちゃけてしまうとアリエノスの出る幕は無かった。
それなのにアリエノスにこの話が持ち掛けられたということは、恐らく主導者が不安定な状態にある可能性が高い。
…おっと、まずは主導者について説明するべきであった。
この世界はとても広大で、その各地でバグは発生している。そのバグ退治をアリエノス一人で全てこなすのは非常に困難である。
そのため、その地域で最も力の持つ神を“主導者”として、その神中心にバグ退治を行っている。 だが、それでも対処し切れない場合にアリエノスがヘルプで入る。という形を取っているのだ。
「ソウスの主導者ってーと…あー、…ディバだったか?」
ディバ。ソウスの主導者であり音楽を司る神。彼女の可憐で且つ力強く美しい歌声に魅了されるものが多く、“歌姫”とも呼ばれている。
以前会った時の第一印象は謙虚で控えめな女性だったが、噂に違わぬ実力を有した神であったと記憶している。
そんな彼女がいながらどうして要請が来たのか…と疑問に思い、クリエティに聞いてみることにする。
「なあクリエティ。ディバは一体どうしたんだ?あいつが居るなら俺は必要無いだろ。」
そうアリエノスが聞くと、クリエティは少し間を置いた後、ゴニョゴニョと気まずそうに話し始める。
『あー、、、ディバ、ディバね……
…実は彼女、今ファトムに連れ攫われてて…』
「…は?」
思わず声が漏れ出てしまった。
だがこれは仕方が無いだろう。予想だにしない返答が帰ってきたのだから。
「連れ攫われた?…なんで?」
そう返すと、これまたゴニョゴニョとクリエティが言葉を紡ぐ。
『いやー、彼…ファトムがディバの事をいたく気に入ったそうで…ほら、彼って惚れっぽいじゃないか。それで、ディバを連れ去って、自分の城に監禁した…みたいなんだ』
「…????」
最後まで聞いても意味がわからなかった。
ファトム、その名前には聞き覚えがあるが、俺が会った時はそんな印象があまり無かった。
…いや、今思えば奴は俺に興味が無かっただけなのかもしれない。…それはそれで少し傷つく。
「…お前が言ってることはわからんが取り敢えずわかった。で、ディバが連れ攫われたとお前は知ってたみたいだが…なぜ連れ戻さないんだ?」
『…ファトム、彼は運命を司る神なのは知ってるよね?だから彼が本気を出すと僕でもディバを連れ戻すのは少々骨が折れる。だからそれを壊せる可能性のあるアリエノス、君を連れて来ようとしたんだ。』
…つまり面倒臭いから俺に全部丸投げと。
知ってたよ。知ってたさ。お前はそういう奴だったよな。と口にしそうになるのを必死に堪えて一旦落ち着くために深呼吸をする。
すー、はー。
そして目的地を変える。
場所はファトムの居城のある北方の高原地帯。
アリエノスはディバ救出のため、ファトムの城へ向かった。
to be continued…?
第2話です。
早速急展開が巻き起こりましたね。
さて、アリエノスはディバを救出出来るのでしょうか…
次回もお楽しみに✨
【𝗇𝖾𝗐 character introduction】
名前:ディバ
性別:女
容姿:小柄で女性的な体付き。全体的に細め。いつも柔らかな表情を浮かべている。常に指揮棒を携帯している。
説明:音楽を愛する女性。鈴が転がるような声で紡ぐ歌はあらゆる生物を魅了する。運命神ファトムに執着されている。
名前:ファトム
性別:男寄りの中性
容姿:布面積の狭い服を着用している。身体中に赤い糸が巻き付いており、そのうち右手の小指についた赤い糸はディバと繋がっている。
説明:惚れっぽい男。恋愛対象は老若男女問わず誰でも。愛は知っているが恋は知らない。ディバに執着している。
コメント
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ファッ!!草w様ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァァ!?ゑ、、テラノベやり始めてくれたんですか!?あ、あの、、めちゃクソファンです、、マジで、尊敬してます、、あと、YouTubeの方で前の代理ちゃん描かせて頂いたんですけど、、こっちにも載せてます!!勝手にやっちゃってごめんなさい!!!本当に神絵師様だから皆に知って欲しくて!!まだ見てなかったら見てくれたら嬉しいです、、私はゴミ絵師ですが(泣)
物語を作るのが上手いですね!頑張ってください‼️