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「大丈夫?」
「ん…」
あろまが泣き止んだところで、また二人でベンチに座る。俺はもらったマフラーに顔を埋めながら、まだ寒そうなこいつの手を握る。
遠くに見えていた人だかりが少しずつ薄れ、残っているのは俺たちと数組の男女くらい。
ふと、あのあろまの言葉が頭をよぎる。
「あのさ、さっきの話だけど」
「さっき?あぁ…」
「もっと堂々としたいって言ってただろ?でもそれってあろまだけの本心じゃないよ」
「どういうこと?」
「…これ」
俺はバッグからもう一つ箱を取り出し、あろまに見せる。
「お前…これ…」
「俺も同じやつ買ったんだ」
俺は自分の薬指にリングを嵌める。
「別に隠そうとしてるわけじゃないから安心して。あの二人に言ったっていいし、そりゃちょっとは恥ずかしいけどさ…
…あろまは俺のものだから」
「うわ…独占欲えぐ…」
「嫌いじゃないでしょ?」
「…まぁ」
あろまの顔を見ると、ニヤニヤしてなんだか嬉しそうだった。つられて俺も笑顔になる。喜怒哀楽が激しいやつだなって思ってはいたけれど、そんなこいつをこれからも隣で見ていたいって改めて思う。
相当惚れてるんだな…いい歳して今更な感じだけど。
「ねぇ、終電終わってること気付いてる?」
「え?」
そう言われてスマホを確認してみると、見事に逃していた。そんなに時間が経って いる感覚はなかった…楽しい時間ってあっという間に過ぎるんだなって改めて実感した。
「えー…どうしようか…」
「えおえおさん、いい所ありまっせ」
「何だよその言い方…」
いつもメンバーをからかうときみたいなニヤケ面。
「ね、ホテルいこ」
「は!?」
俺は自分の耳を疑った。あろまの口からそんな言葉が出てくるなんて思ってもいなかったから。クリスマスにそんな誘いして大丈夫?って心配の言葉をかけようとしたけれど
「早く」
俺の手を無理やり引っ張って歩きだす。どうせ帰れないならもう少しこの景色を見ていたかったなって。繋いだあろまの手はすごく熱くて、顔は見れなかったけれどきっと真っ赤なんだろうな…
イルミネーションが遠くで輝く小道を俺たちは早足で歩いていた。あんな可愛いことされて、我慢できるかな、なんて考えながら。
Fin.