桃赤
〜赤視点〜
え!?これは、夢、だよね?そうだよね?そうじゃないと困るよ?
どうも皆さん、赤です。あのー、どういうことなのでしょう?何故俺は猫になってるのでしょうか?何故さとちゃんの家に居るのでしょうか?
起きたら俺の手が変だったんですね。それで、姿見のところへ行って自分の姿を見てみたんです。姿見に映ったのはまさかの猫ですよ?しかも俺の考えた動きをしてるし。よく考えたら視点が低いし。なんか四足歩行だし。なんでこうなったのかさっぱり分かりません。誰か助けて?
ガチャッ
悲報です。いや、悲報なのか?なんと、この家の主、桃が帰ってきました。どうしよ?俺まだ何もわかってないよ?でももうどうしようもない気がする。
とりあえず気になるので玄関行って出迎えてきます。なんかわかるかな?
「ただいま、赤。」
あ!桃くん!俺の事わかるの!良かったぁ。でも元気ない?何かあったの?
「ニャー」
あれ?喋れない。どうして?
「お、出迎えてくれたのか?やさしーな、リイは」
リイ?それ誰?俺のこと?俺は赤だよ?
ねぇ、桃ちゃん。さっき赤って言ってたじゃん。俺のことじゃないの?
だとしたら、
誰に言ったの?
ここには俺と君以外居ないよ?
「ニャー」
あぁ、やっぱ喋れない。猫の鳴き声しか出ない。もう、何も伝えられないじゃん。
「ふはっ、甘えたさんだねー、リイは」
うわっ!?何!?急に目線が高くなったよ!?どういうこと?
「おお、暴れんなよ危ねーな、落ちるぞ?」
あ、抱っこされてんのか、なるほどね?なんか新鮮。ていうか猫ってこんな気持ちだったんだね。ちょっと楽しいかも!
「ニャー」
「どした?ご飯か?でもまだその時間じゃねーぞ」
違うよぉ!ご飯じゃないよ〜!俺の事に気付いてよー!楽しくてもこれとそれは別!
スリスリ
「ふはっ、お前まじかわいーな」
仕方ない、俺が折れてあげる。俺は優しいからね。
「ニャー」
スリスリ
……あれ?どうしたの?なんで黙っちゃったの?
「…………」
すごく悲しそうな顔してるよ?何かあったの?
「お前、赤に似てるな ニコ」
「やること猫っていうより犬見てーだし ニコ」
似てるも何も、俺は赤だよ?それに、そんな力ない笑顔で笑われても何も嬉しくないよ?
「っはー、帰ってこねーかな」
……俺に、何かあったの?ねぇ、どういうこと?どうして俺はここに帰って来れないの?
ピンポーン
誰だろ?……あ、行っちゃった。ついて行こ。
「はーい、ってなーくんじゃん」
「そうだよー、ちょっと様子見に来た」
気になってついて行って見たらなーくんだった。
「あがって」
「おじゃましまーす」
さとちゃん、ほんのちょっとだけ元気になった?
ニャー
「お、リイちゃーん、元気してたー?」
そう言って俺をを抱きあげてもふもふするなーくん。それを見て少し笑ってるさとちゃん。なーくんは猫好きだからね。こんなこと人間だったらしてもらえないからなぁ。
「リイちゃんもうちょい太った方がよくない?」
猫に太った方がいいとかあるの?初耳なんだけど。
「そうかな?まだここに慣れてないんじゃね?」
「そうなのかな〜、まぁいっか可愛いし」
なーくん、デレデレだ。ちょっと新鮮で面白いかも。なーくんは俺を抱き抱えたままさとちゃんについてリビングへ入っていく。
〜桃視点〜
「で、さとちゃん」
「ちゃんと食べてる?無理してない?」
やっぱ隠せねーか、なーくんには。俺は食事もまともにしていないし睡眠時間も絶対に足りていない。そんなの俺もわかってる。でもまだ無理なんだ。元の生活を送るのは。
「さとちゃん、悲しいのは、辛いのは、俺も一緒だよ。まさか、赤くんがこんなことになるなんて思ってなかった。リーダーとして、メンバーを気遣うという当たり前の責任も果たせなかった。でも、前を向かなきゃ進めないし、時は止まってくれないの。それに、赤くんが悲しんじゃう。俺たちがこんなだったら。さとちゃん、リスナーさんが、俺たちメンバーが待ってるよ。さとちゃんの帰りを」
やっぱりなーくんの言うことは何かが違うんだよな。何よりも説得力があって胸の中にストンと落ちてくる。俺にとってあいつがここまで大切な存在だとは思ってなかった。けど、今気づいてももう遅い。あいつはもう、ここには帰ってこないんだから。
「わかってんだ、俺がこのままだとダメなことは。」
ああ、なんでも話せる気がする。
「でも、無理なんだよ。元の生活に戻すのは。もう何日もまともに寝れてねーんだ。寝たら夢に出てくるんだよ。笑ってる赤が。」
「うん、それで?」
「それで目が覚めるんだ。今までなら幸せな夢だったよ。でも今は悪夢だ。それに寝れてもないからご飯も食べれねーんだよ。何をしてても赤が思い浮かぶんだ。それで思い知らされるんだよ。ここには、赤はいないってことを」
ああダメだ、涙が止まらねー。俺、だせーな。最年長で人生経験は俺が1番多いはずなのにな。これじゃ、なーくんの方が年上みてーだよ。
「うんうん、俺も同じだよ?けどさ、それだけ赤くんの存在は大きかったってことでしょ?俺にとってもさとちゃんにとっても、もちろんメンバーのみんなやスタッフさん、リスナーさんにも」
俺はもう、話すことができなくて頷くことしかできなかった。だってその通りだから。でも、出来ることならまた笑い会いたい。またあのはにかんだような綺麗な笑顔をみたい。記憶の中の笑顔じゃないほんとの笑顔を。
「さとちゃん、毎日行ってるの?」
「……ぅえ?どこ、に?」
「病院だよ、ねぇ今日も行ったの?」
そりゃまぁ、行ったよ。
「なんの進展もなかった。たくさんのコードに繋がれたまま全く動かないを見ただけ」
「あと、言われたんだ」
「なに、を?」
言ってしまっていいのだろうか。でも俺一人じゃ抱えきれない。
「赤、このままあと3日、目を覚まさなかったらもう、可能性は低いって」
「……え?どういうこと?」
そりゃ俺だってそう思ったよ。どういうことだよって。ここに帰って来れなくても、ただこの世界に居てくれるだけで、それだけでもいつかは前を向いていけると思ってた。でもそんなことももう夢の中。3日以内に目を冷まさないと君はこの世界にも居ることが出来なくなってしまう。
「そのまんまだよ、俺だって認めたくねーよ。でもそれが現実なんだとさ」
「そ、っか、じゃあ会いに行かないとね」
コメント
3件
フォロー&ブクマ失礼します🙇♀️
続き楽しみです!最高でした。ぶくしつです✨
続きます。