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中学三年生の冬。
伊波ライは、いつも通り自分の部屋で課題をしていた。
窓の外では、冷たい風が吹いている。
もうすぐ卒業。
高校受験も終わり、あとは卒業式を待つだけだった。
そんな何でもない日の夜、父親から「話がある」と呼ばれた。
「ライ、ちょっといいか?」
「うん」
リビングへ向かうと、父親が珍しく真剣な顔をしていた。
何か悪い知らせなのかと思い、ライも少し身構える。
「父さんな、再婚しようと思ってる」
「……再婚?」
思わず聞き返した。
父親が誰かと付き合っていることは知っていた。
けれど、まさか再婚するところまで話が進んでいるとは思っていなかった。
「相手の人には、ライと同い年の息子さんがいる」
「同い年……?」
「そう。名前は緋八マナくん。今度、一度会ってほしい」
「……分かった」
驚きはしたものの、父親が幸せになろうとしていることを邪魔するつもりはなかった。
それから数日後。
ライは父親と一緒に、再婚相手の家へ向かった。
玄関の前に立つ。
妙に緊張する。
これから家族になるかもしれない人たちとの初対面なのだから、当然だった。
「ライ、そんなに固くならなくても大丈夫だぞ」
「分かってるけど……」
そのとき。
玄関の扉が開いた。
「こんにちはー!」
明るい声とともに、一人の少年が出てくる。
ライと同じくらいの身長。
柔らかな雰囲気と、よく笑う表情。
「初めまして。緋八マナです」
「……伊波ライ」
「ライくん?」
「うん」
「そっか。よろしくな」
マナはそう言って、自然に手を差し出した。
ライは一瞬迷ったあと、その手を握る。
「よろしく」
「なんか緊張するなぁ」
「マナも?」
「そらするやろ。今日初めて会うんやし」
そう言って笑うマナを見て、ライも少しだけ緊張が解けた。
その日は両親同士が今後のことを話し合う中、二人も近くで話すことになった。
「ライくんって、どこの高校行くん?」
「〇〇高校」
「えっ、俺もそこ」
「……本当に?」
「ほんまほんま。同じ学校やで」
まさかの共通点だった。
「じゃあ、入学したらよろしく」
「もちろん。俺、学校案内できるで」
「マナも入学するのに?」
「そこは気合いで」
「何それ」
思わずライが笑う。
それを見たマナも嬉しそうに笑った。
「お、笑った」
「……何」
「いや、ライくんってもっと静かな人かと思ってた」
「マナが勝手に喋ってるだけじゃん」
「ひど!」
初対面なのに、思っていたより話しやすかった。
そして、春。
両親の再婚が正式に決まった。
それに伴って、二人は同じ家で暮らすことになる。
引っ越しの日。
マナが自分の荷物を運びながら、ライの部屋を覗いた。
「ライー」
「何?」
「今日からここが俺らの家やな」
「……そうだね」
「なんか不思議やなぁ」
マナは部屋を見回したあと、ふっと笑った。
「これからよろしくな、兄弟」
「……兄弟、か」
その言葉を聞いて、ライは少しだけ不思議な気持ちになった。
昨日まで知らない人だった少年。
それが今日から家族になる。
「よろしく、マナ」
「おう!」
二人の新しい生活が始まった。
このときの二人は、まだ知らない。
この先、家族として過ごす時間が、自分たちの関係を大きく変えていくことを。
コメント
1件
しろまるさん、第1話読みました。父親の再婚をきっかけに同い年のマナと出会い、自然に距離を縮めていく流れがとても丁寧で、読んでいてほっこりしました。特に「兄弟」という言葉にライが一瞬戸惑うところがリアルで、この先の関係性の変化が楽しみです。伏線的なラストの一文も気になります。続きが待ち遠しいです!