テラーノベル
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青い空、深い海の色に白波を立てて、全長131メートルの快速船は進んでいる。
(帆もないのに進むのかこの船は…どうなってるんだ?)
汽車というのも不思議だった。俺のいた世界とは随分異なるようだ。
つばの広い帽子を目深にかぶり、デッキで景色を眺める。
俺の滅んだ世界とは違う点探しだ。
文明は俺の世界より微妙に上のようだ、この船や汽車、そして筒の武器を見てもわかる。
だが、魔法はないようだ。
石動の召喚、神降ろしというのがどういうシステムなのか不明だが…火や水を自在に操るすべは無いと聞いた。
「桜花姉、ここにいたのかい?」
「はい、隼人様。景色を眺めておりました」
(この口調も慣れた…いや、慣れて良いのか?)
「隼人様はあまり出歩かれない方が宜しいですよ」
(追手の事は石動に話していない、話す義理もない)
俺に科せられた三原則モードは、少なくとも自己防衛は出来る…はずだ。
「なんでだい?僕も久しぶりにのんびりしたいんだ。桜花姉も帰って来たし…もう焦る気持ちもないんだよ」
(ん?)
「長かった…本当に長かった…二十年、二十年だ桜花姉に会うために使った時間だ…」
そう言って石動は俺の手を握って離さなかった。
……
(俺を造るために、二十年費やしたのかこの男は?)
「隼人様、私はもう何処にも行きませんよ、ずっと一緒にいますよ」
(自動応答がこっぱずかしいんだが…)
「隼人様、汽車の中でいわれていた私の姉妹のことを教えて頂けますか?」
(石動は、四体軍に渡したと言っていたな)
「ああ、いいですよ。
お前には他に五人の姉妹がいる菊花、桃花、杏花、葵花 、梨花…うち四人が帝国陸軍に接収されているんだ」
(五人?俺を入れて六姉妹という事か?)
「桜花姉を甦らせるために生まれた姉妹たちだ。仲良く一緒に、穏やかに過ごして欲しい」
(…ん?)
「私を甦らせるために生まれた姉妹とはどういうことなのですか?」
「桜花さんには魂がずっと入らなかったんだ。そのために姉妹を使って技術を完成させたんだ」
「姉妹は実験として生まれたのですか?」
「いや、多少の改善改良はあるけど、実験の感覚はないよ。俺にとってみんな大切な姉妹だ」
(……それは、良かった)
俺はホッとした。俺みたいな魂の器だとしたら、実験でどうこうされたくはない。
「お姉妹たちにも、降ろされた魂がいらしゃるのですよね?」
気になったので、俺は聞いてみる。
「ああ、魂の名前は、こう名乗っていたよザイオン」
(……)
「フィンリー」
(まさか…)
「アマリリス」
(……ちょっとまってくれよ)
「ヴァイオレット」
(嘘だろ)
「メデイアだったかな」
(こんなことがあるのか?)
俺は石動にしがみ付いていた。
「隼人様、お、お会いしたいです姉妹に…」
「あ、ああ、ああわかっているよ桜花さん」
俺は石動の胸に頭をつけて震えていた。
嘘でないなら、間違いがないなら、こんな運命なら…
(あり得るかもしれない!)
俺の友だ仲間だ恋人だ!
あ、あ、あいつらも、あいつらもこの変人に呼ばれていたのか。
ははははははは
会えるかもしれない
会えるかもしれないんだ
また、アイツらに。
ならば、こいつを守らなければいけない。
(何があろうと)
おれは石動から離れると。目を閉じ気配を探る。
「隼人様、風が出てきました船室に戻りましょう」
「ああ、そうだね桜花姉の行くところならどこにでも行くよ」
(なんか石動の様子が船に乗ったころからおかしい気がするんだが…)
俺がいることによる燃え尽き症候群なのだろう。
俺は船内に入り、石動を連れて一等船室に戻ることにした。
(五、六、七…十二人か…)
くそ、狭めてきやがる。
通路に入った途端にこれか…
(不味ったな)
人のいない方向に通路を折れる。やばいな誘導されてる。
「隼人様。申し訳ありません追手が迫っています。間もなく追い詰められます」
「な、なんだって!」
「必ずお守りします、私のロックを外して頂けませんか?」
「……戦うのかい?」
(な、なんでそんな悲しそうな目で見る)
「追手が十数名おります…」
「こんなところまで付いてくるなんて…」
石動は歯噛みして目を閉じる。
「何故、軍は追って来られるのですか?」
「桜花姉を甦らせるのに研究をどこかからか嗅ぎ付けられてね…三田火薬庫で兵器として造らされてしまったんだ…」
「姉妹を軍事用にということなのですね」
「菊花、桃花、杏花、葵花。みんな徴発されてしまった。
何をさせられ、何処にいるのかもわからないんだ…」
「助け出しましょう。私が必ず助け出して見せます」
(そうだ、俺の大事な仲間を二度と失うわけにはいかない!)
…っ
「隼人様。申し訳ありません…」
「どうしたんだい。桜花姉…」
「石動博士。同行願えませんか?そちらの木偶はロックを願います」
そう言って、小さな筒をこちらに向けて前後から六人ずつ姿を現した。
「隼人様。早く解除をお願いします」
パァァァン
ギィュン
足下で何かが跳ね火花が散る。
石動に教えられた、小さな筒は二十六年式拳銃。発射される弾丸は殺傷力をもつ鉛の玉とのこと。
このままでも自己防衛は出来るが、石動を守るには至れない。
「隼人様!」
俺の叫びに、石動が頷いてくれた。
「…桜花姉。ロック解除!俺はいい自分の身を守ってくれ!」
(え?)
そういう事いえる人なのか?
「追手の方々、ここまでご苦労様です。お帰りいただけませんか?」
俺はスカートを摘むと片足を後ろに引き背筋を伸ばしてお辞儀をした。
「で、木偶はそう簡単に壊れない筈だ、動かなくなるまで攻撃して構わん、博士は確保しろ」
「そ、そのような…淑女に対して酷いです」
俺は沈み込むと一足で前方の相手の懐に潜り込み勢いのまま肩で相手を吹き飛ばす。
広くない通路だ、吹き飛んだ相手が他の仲間を巻き込んで数メートル先に落下する。
片側が倒れたことで
パァァァン
パァァァン
パパァァン
俺に弾丸が集中する。
俺は右へ左へと身体を揺するように移動する。
キィン
キュン
キン チューイン
跳ねる弾丸を後ろに聞くと壁に跳躍して、壁を伝って走り後ろの六人の中へと飛び込む。
真ん中に入られた男たちは、同士撃ちを恐れ二十六年式拳銃を撃てなくなる。
だが、敵も然る者で直ぐにグリップで殴りに来る。
その手を掴み引っ張るように跳びつつ蹴りを放つ。丁度、相手の頭に吸い込まれた。
「グゥガガァ!」
男は後ろにスッ飛んで行く。
掴んだ手は放していて、そのまま床に両手をついて開脚で反対側の男に蹴りを降らせる。
「ガァアァァァァッ!」
右肩口に入った蹴りは男を右に横転させる。
俺の足が床に着いたところで、石動の近くに跳躍すると…
また銃口がこちらを向く。
「は、破壊してしまえ!」
(どれくらいかな?)
「《エアリアル》」
俺は風を解き放つ。
まるで大砲のように風が銃を持った男たちに突風となって襲う。
風は渦を巻き、通路を竜巻が通るように男たちを巻き込み外へと弾き出す。
「隼人様。お捕まりください」
「え?」
俺の差し出した手を見て石動は怪訝そうにする。
俺は、躊躇する石動を抱えるとデッキまで走る。
先ほど風の魔法で吹き飛ばした男たちを見た、乗客たちでデッキは騒然としていた。
飛び出してきた俺に、自然と視線が集まる。
……あ……
「き、きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
暴漢です。
助けてーーー!」
俺?は叫んだ。
(俺がこんな叫びをするなんて…)
その叫びは、集まった視線を吹き飛んだ男たちに向かせるに充分であった。
(今だ!)
俺は、その一瞬を逃さず、船首に向かって助走すると踏み切った。
風を自身に纏い大空へと舞い上がる。
「ううううわぁーーーうわぁーーー」
石動の絶叫が耳元で五月蝿い。
亜米利加丸を眼下に高く高く大空を駆けた。
(このくらいできずに、巨大な魔神と戦うことなどできはしない)
船首方向に飛んだけど、目的地への方向はあっているだろうか?
(まあいいか)
この世界の大空も、俺のいた世界と変わらない。
蒼い空は俺の気持ちも晴らしてくれる。
目的は決まったんだ!
コメント
1件
みぅです🤍🥀 第3話、読みました…! 「そういう事いえる人なのか?」ってタイトル、めっちゃ刺さりました。石動の「俺はいい自分の身を守ってくれ」って言葉、主人公の想いと重なって切なかったです。 何より、姉妹たちの名前(ザイオン、フィンリー…)が主人公の仲間たちだったって展開、心臓がグッとなりました。再会できるかもしれない希望と、それを守る覚悟…静かに熱くなりました。 最後の《エアリアル》からの大空への飛翔、最高です🌙
奇蹟あい
2,184
#勘違い
かませ犬S
455
#男主人公
パラレル・ゲーマー
173
にとり
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