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俺の名は、ブレイク。
「桜花さん!」
今の名は、桜花。
元々は月が三個ある世界で英雄をしていた。相討ちだが、異世界から来た邪神を倒したこともある。
「ここにまだ埃が残ってますよ」
今はメイド服を着て、華族の女中をしている。掃除すらできないのかと怒られる。
世は無常だ。
台湾総督府の置かれた、台北の地に俺はいる。
朔間左馬太伯爵という華族の人の屋敷だ。
石動の知り合いとのことで転がり込むことができた。ここなら軍も手が出せないらしい。
ゴシゴシ ゴシゴシ
雑巾片手に、階段の手摺を丁寧に拭いていく。
なんか…心が落ち着いてきた。
「桜花さん。」
これでもか、これでもかと汚れを見つけては綺麗にする。
俺は何事も全力で打ち込む性格だからな、手加減しないぞ。
(フフフフフフ。良い感じだ)
「桜花くん?」
「桜花?
桜花!ステイ」
(ぐががががが)
(よ、汚れが、汚れが、あるのに!
か、身体が動かない!)
視線だけ動かすとそこには、石動と伯爵が立っていた。
「何を必死になって掃除してるんだい桜花」
俺を止めた石動が首を傾げる。
(俺は半端が嫌いなんだ、始めたら完遂するんだ)
「ずっと呼んでいたんだよ?」
(誰かいる気配は感じていたが、呼ばれていたことは気づかなかった)
「そこまで、桜花くんに女中を求めていないんだが…いっそ養女でも良いんだぞ」
伯爵が顎に手をやって難しい顔をしている。
(そんなことになって貴族令嬢の生活を求められたら困る)
「伯爵からお願い事をされてね、桜花さんにお願いしたいんだそうだ」
俺はピクリとも動けない。
「応接室に移ろう、ついて来てくれ」
そういって伯爵は歩き始めた。
動けぬ俺を置いて…
(お前らちょっと待て)
俺を忘れてるぞ!
***
左に視線を向ける。
右にも視線を向けてみる。
どちらを見ても、年若い少女たちが慎ましやかに、又は快活に笑みを溢して歩いていた。
(何故…)
俺は校門を前に黄昏れた。
何故こんな少女ばかりの中に入って行かねばならんのだ?
俺は、伯爵のお願い…命令で、台北庁立台北高等女学校に通うことになった。
元の世界では、それなりに女性に人気があったと自負している。
街でも言い寄る女性は多かったが、見向きもしなかった。そっちの気があるわけじゃないぞ。世界を人類を護る使命に燃えていたんだ。硬派を気取ってもいたんだ。
そんな俺が命令とはいえ何故こんなところに…
頭を抱える。
***
「それでは、朔間さん。自己紹介をしなさい」
眼鏡をかけた神経質そうな女性に促される。
小振袖に紫色の行灯袴、足元は編み上げブーツ。頭には桜色のリボンをあしらった俺…なんか涙出そう。
教室を見渡すと同じような着物を着た、同年代の少女たちの目が。俺を値踏みするように見つめていた。
異世界の邪神にも動じなかった俺が何気に圧倒される。
お尻がむず痒い…
「朔間桜花です。未熟者ですがどうかご指導ご鞭撻のほど宜しくお願いたします」
「夏期休暇前の些か慌ただしい時期の転入になりますが、良き妻良き母となる学びの友です。皆さん親しく導きあい切磋琢磨するように」
眼鏡をかけた女性は教師で、俺の挨拶に頷いている。
撫子モードが勝手に自己紹介をしてくれるのはこういうときは助かる。
「朔間さん。貴女の席は宮小路さんの隣になります。宮小路さん面倒を見てあげてください」
窓際の少女が手を上げる。
「朔間さま。宮小路と申します。お席は此方になります」
俺は宮小路さんに会釈し、教諭にお礼をいうと宮小路さんの下へと向かった。
「それでは、授業開始までに準備を終えて待つように」
教諭はそう言い残して教室を出ていった。
「朔間です。どうか宜しくお願いたします」
「わからないことがあれば遠慮せずにお聞きください。休み時間に学内を案内させて頂きます」
「ありがとうございます」
うう…撫子モードの自動回答頼りでなんとかなってるけど、女学生の会話なんて俺にはできないぞ…どうなるんだ俺…?
「どうかされましたか」
「いえ、このように学校に通うことが今までありませんでしたので、少々戸惑いを憶えております」
「朔間さま姓ということは、総督の朔間伯爵の縁者だと思いましたが…違われるのですか?」
「はい、総督の朔間左馬太はお祖父様です」
という設定だ。
放って置くと本当にそうなりそうだけど…
「私は本土の田舎から此方に呼ばれまして、本国では学校に通えずにおりました」
「そうでしたか。朔間翁と宮小路家は懇意にさせていただいております。学校以外でもお会いする機会があるかも知れませんね」
そういって宮小路さんは微笑まれた。
***
「宮小路さま。最近は女学校で誘拐が頻発されているというのを聞いたのですが」
昼休みに校内の案内を聞きながら尋ねる。
「よくご存じですね。朔間さまのお爺様が進められている保甲制度(連座制の住民監視システム)などで、表面上の治安は良いのですが…土地柄、様々な国や勢力が入り乱れているので弱い私たちは良い獲物のようです」
「宮小路さま…」
「先日。私の友人が誘拐にあってしまいました…身代金目的でした。救出されましたが一度もお会いできずに本国に戻られたとお聞きしました…」
「すみません。聞いてよい話題ではありませんでした」
「いえ、注意しなければいけない事ですので」
そういって、宮小路さんは懐から一振りの短刀を覗かせた。
「朔間さまは狙われやすい立場だと思います。御覚悟はしておかれたほうがよいと思います」
「…そうですね」
貴族、ここでは華族の覚悟なのだろうが。花を散らされるなら自害しろという悲しい話だった。
俺は、この誘拐事件の解決を伯爵から依頼された。
台湾総督の令嬢を演じて、狙われるように行動する。つまり自身を使った囮捜査だ。
軍人でもある伯爵は俺の姉妹の情報を集める代わりに、俺はこの島の問題を解決するための手伝いをする約束をした。
こんな姿でも、被害者がいて俺が役に立つなら望むところだ。
コメント
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第4話読み終えたよ〜!✨ もうね、冒頭の「ステイ」で掃除に没頭する桜花さん止められるシーン、ギャップ萌えがやばかった😂💕 英雄が女中から女学生に…しかも囮捜査!?設定だけでワクワクが止まらないんだけど!宮小路さんの「御覚悟を」の台詞、エモくて痺れた…🌸 次の展開が気になりすぎる…更新待ってるね!🔥
#男主人公
パラレル・ゲーマー
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#大正
奏楽雅
367
#勘違い
かませ犬S
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