「……美氷 お嬢様。
ー読書の、休憩がてらにでも………、
ーカモミールは、如何でございますか…?」
ー神田さんの声に、読書をしていた私は、はっと、我に返った。
ー見ると、神田さんが、ティーカップを、トレイに載せて、直立不動で、私の前に、立っている。
「……実は、私……、
ー紅茶の中でも、カモミールが、1番、好きなんです…!
ーもしかして……、
ーわざわざ、私の為に、淹れて下さったのですか………?」
(………神田さんって、イケメンなだけじゃ、なくて………、
ー紅茶も淹れられるなんて、凄いなぁ………!)
ー内心で、彼に、感心しつつ……、
ー思わず、前のめりになって、そう聞いた私にーー、
「……それが、僕の
ー…いえ、執事としての、私の仕事の、一環でございますから。
………本当に、面白い方ですね、貴女は………。」
ー神田さんは、クスクスと笑いながら、私に、カモミールの入ったティーカップを、手渡してくれた。
………湯気の立った、それから、カモミールの、良い香りが、漂っている。
「……では、頂きます……!」
(ー『ー本当に、面白い方ですね…』
ーって……、
……一体、どういう意味、なんだろう………?)
ー神田さんの言葉に、心の中で、首をかしげながらも、私は、そっと、ティーカップに、口を付ける。
「………美味しいです………っ……!」
ーその紅茶は、いい加減に、冷まされていて………、
ーしかも、飲みやすいように、砂糖が少し、入っているのが分かった。
「…ふっ、お褒めに預かり、光栄でございます。」
…そう言って頭を下げた、神田さんに、
「……いえいえっ、本当のことですから………!
ーあ、頭を、お上げ下さい、神田さん……!」
ー私は、慌てて立ち上がって、彼の元へ、駆け寄る。
「……っ、お嬢様……ー」
ー私の行動に、何故か、目を丸くしつつ、頭を上げた、神田さんが、私に、何か、言おうとした、その時ーー。
………ぱああああっ…………!!
ー私達の足元に、魔法陣のような、円盤が、現れて、目映い程の、輝きを、放ち始めた。
「……ま、眩しい………っ………!!」
ーその光を、見ていたら、目が、壊れてしまいそうで………、
ー何が、私達の身に、起こっているのか……。
ーそれさえも、全く、分からないのに…………、
ーそれなのに、思わず、ぎゅっと、目を瞑ってしまった、私をーー、
「……お嬢様。
ー何が起きているのか、私にも、検討が尽きませんが………」
ー私から、決して、離れませんよう………。
ー神田さんが、強く引き寄せ、抱き締めてきた。
「……はいっ………!
ー本当に、有り難うございますっ、神田さん…………!」
ー彼に、労るように、優しく抱き締められて…………、
ー私の顔は、何故か、炎よりも、熱くなっていた。
ーどくん、どくんと、私の心臓が、激しく、音を立てて、高鳴っている。
ーそれを、不思議に、思いながら………、
ー私は、何時しか、彼の腕の中で、気を失うように、浅い眠りに、就いてしまったのだった……………。
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