おはこんばんにちは
今回は1話です
それではどうぞ!!!!
⚠注意⚠
なんでもありの人のみ
潔に弟がいます
原作フル無視
新たな生活
『世一いくぞ〜!』
『はーい』
迎えに来てくれた ”元” 所属事務所の社長に呼ばれ、車に乗る。
後部座席には、マネージャーだったアンリさんが座っていた。
『アンリちゃんも来てくれた』
『ふたりじゃ荷ほどき間に合わそうでしたから』
『ありがとうっ……!』
お礼を言ってアンリさんの隣に座る。
『世一忘れ物はしていないか?』
『うん!』
『じゃあ行くぞ』
そう言って、車を発進させた絵心さん。
これから……俺の、新しい生活が始まる。
俺は、少し前まで「ヨイチ」という名前でアイドルとして活動していた。
アイドルになったきっかけは、父さんが友達に騙されて負ってしまった借金を返済するため。
ちょうどどうしようかと悩んでいる時に、絵心さんにスカウトされた。確か……小学5年生の時。
本来、目立つことが苦手だった俺。正直、アイドルになるなんて不安しかなかったけど、家族のために芸能界へ飛び込んだ。
もちろん、父さんと母さんはそんなことしなくていいと言ってくれたけど、弟はまだ幼かったから、父さんと母さんに共働きはしてほしくなかったんだ。
弟に寂しい思いさせたくなかったから。
全部理解してくれている絵心さんが全力でサポートをしてくれて、徐々に父さんの借金も減っていった。
小学5年生でソロアイドルとしてデビューしてから、最初の頃は練習ばかりで表に出ることは少なかったけど、中学生になってから、楽曲を提供してもらうことが増え、コンスタントに歌を出すようになった。
ライブや握手会も毎月頑張って、中学1年生の時にはドラマや映画にも出させてもらえるように。
そして……アイドルになって2年と少し、山のようにあった借金の返済が終わった。
借金がなくなればアイドルを辞めるつもりだったけど、絵心さんにはお世話になったからすぐにというわけにはいかなかった。
絵心さんは気にしなくていいと言ってくれたけど、俺の気がすまなかった。
せめて、お世話になった分の恩は返したかったから。
絵心さんと相談して中学3年までは続けるという約束をした。
そして、中学を卒業すると同時に、ついに俺はアイドルを辞めて、芸能界から引退した。
それが、1年前のことだ。
『俺、ヨイチは……芸能界を引退します!』
そう宣言してからは、もう一年半が経つ。
最初は電撃引退をするつもりだった。
引退宣言をしたら、ほかの事務所から声がかかったり、ファンや業界から引き止められるだろうから……って。
その後の仕事でも、根掘り葉掘り聞かれるだろうから、宣言して直ぐに引退をするのがベストだってことになったんだ。
でも……それだけはしたくなかった。
だって、突然辞めてしまったら、ファンの人たちが困惑してしまう。
こんな俺をずっと応援してくれていたファンの人たちには、せめて引退することを事前に伝えたかったし、引退するまでの期間、恩返しがしたかった。
絵心さんやアンリさんの反対を押しきって、俺は引退宣言をしてからの1年の間、ファンの人との交流イベントに全力を注いだ。
ライブや握手会、毎日たくさんのファンの人達と触れあった。
俺を支えてくれた人たちのおかげで、アイドルとして有終の美を飾ることができたと思っている。
アイドル活動は楽しかったけど、俺には向いていないと思っていたから、芸能界に未練ははい。
できるなら、本心では目立たずひっそりと生活したい派だったから。
それに、ずっと芸能界にいたから、普通の学校生活に強い憧れがあった。((まぁ、途中からだったけど…
中学3年で引退したのも……高校生活を、送るため。
明日から……俺はブルーロック学園という高校に通うことになっている。
ちなみに、明日から2学期が始まる時期。
本当は入学式似合わせたかったけど、俺のあのわがままのせいで色々な手続きがあり遅れてしまって、編入という形になった。
今は、絵心さんとアンリさんと、新居に向かっている最中だ。
目の前に迫った新しい生活のスタートに、俺は胸を躍らせていた。
『絵心さん、何から何までありがとうございます……』
引退してからも、マスコミから守ってくれたり……そして、俺が入学する高校、引越し先まで手配してくれた社長。
『いいぞこのくらいは。お前には今までたくさん、事務所に貢献してくれてたしな。』
運転席に乗っている絵心さんが、そう言って少し微笑んでくれた。
『そうね』
隣にいるアンリさんも、ふふっと笑った。
『引退したって、世一くんはずっとうちの所属タレントよ。家族同然なんだから、困ったことがあればいつでも頼って』
アンリさんの言葉が、胸にじーん……と響く。
『アンリさ〜ん!!』
『っ……!え、えっ……!?』
俺は思わず、アンリさんにぎゅうっと抱きついた。
『おい、世一そこまでにしとけ』
社長が、ミラー越しに俺たちを見て呆れている。
『…?』
『は、離れて!』
そんなに嫌がらなくてもいいのになぁ……。
俺は引きはがしたアンリさんに、ちょっとだけ悲しくなった。
俺が抱きつくと、いつも嫌がられてしまう。
『アンリちゃんは、いつも負けてるな』
『うるさいです…』
『まぁ、頑張れ』
少し楽しそうにしている絵心さんと、顔を赤くして不満げに眉をひそめているアンリさん。
『ふたりとも、なんの話しをしてるんですか?』
首をかしげた俺を見て、ふたりは同時にため息をついた。
『ほんと、天然たらしだな』
『……世一くん、これから私たちが近くにいるわけじゃないんだから誰かに抱きついたり、スキンシップをとったりしないでよ』
え……?
『どうして?』
『自分の美貌を自覚してっていつも言ってるでしょ……!』
美貌って……。
確かに、アイドルしていたから、身だしなみには気をつけていた。
美容に関しても、徹底的に自分を磨いていたつもりだ。
けど……素材自体は普通だと思う……。
かっこいい衣装や、メイクさんの力で綺麗に変身させてもらっていたようなものだもん。
それに……。
『でも、返送していくから大丈夫だろ』
俺は「ヨイチ」ではなく、潔世一として平穏な高校生活を送るんだ。
素顔で登校したらさすがにバレるかもしれないから。
『いい?バレたら一巻の終わりだからね?』
怖い顔で、脅かすように言ってくるアンリさんに、ピンッと背筋が伸びる。
『は、はい!』
『何があっても、変装は解かないでよ?』
も、もちろん、バレないように細心の注意を払うつもりだっ……。
こくこく頷くと、アンリさんはそんな俺を見てまたため息をついた。
『本当に大丈夫なの……』
そ、そんなに信用ないのかな、俺……。
少しショックを受けながら、絵心さんが運転する車で新居へと向かった。
『ここだ』
車が停まったのは、綺麗な高層マンションの前だった。
『えっ……』
う、嘘……。
『こ、こんなすごいマンションに……』
俺ひとりで、住むのっ……?
『セキュリティは国内トップクラス。ここなら入居者以外は入れないし、住所を特定されることもないだろ』
絵心さんがそう説明してくれた。
『さ、入るぞ』
俺には不釣合いな豪華マンションに、身を縮ませるようにして絵心さんのあとをついていく。
ここ……タ、タワーマンションっていうところだっ……。
『本当は世一くんが通う高校は、ほとんどの生徒が寮に入っているんだけど、さすがに寮生活は気が休まらないでしょ?』
エレベーターに乗りながら、アンリさんが説明してくれる。
そういえば寮制だって言ってたなぁ……。
寮生活も憧れるけど、確かに寮の中でまで変装しなきゃいけないっていうのは、しんどいかもしれない……。
絵心さんとアンリさんの気遣いには感謝するけど……で、でもさすがにこのマンションは贅沢すぎるっ……。
節約が趣味で、貧乏性が抜けていない俺にはあまりにも分不相応すぎるよ。
『この部屋だ』
さ、最上階……。
絵心さんがひとつの部屋の前で止まり、ドアの前でカードキーをかざす。
玄関の中に入った俺は、言葉を失った。
気、綺麗すぎるっ……。
ほとんどの家具がすでに揃っていて、まるでモデルルームのような室内だった。
まるでお姫様の部屋のような、エレガントな雰囲気。派手すぎるわけでもなく、白で統一された清潔感のある空間だった。
明るい自然光が差し込む大きな窓もある。最上階だから眺めも良く、夜はきっと美しい夜景が一望できるんたろう。
『どうだ、気に入ったか?』
『き、気に入ったというか……豪華すぎますっ……』
普通のアパートで、十分だったのにッっ……。
『世間は今でもお前を探しているぞ。いつどこでマスコミの人たちに見つかるかも分からない…だからこのくらいセキュリティを完備しているところじゃないと』
そう言われると、何も言いかえせない。
引退してからも変装しなきゃ外歩けないし、テレビつければまだ、俺の話題がされていることもある。
だから、極力テレビは観ないようにしていた。
『事務所で所有している部屋だから、気にせず好きに使え』
また、絵心さんに借りができてしまった……。
『あ、あの、いつかちゃんとお返します……!』
何もかも、お世話になってばかりだ……。
『何言っているんだ。これは入学祝いだ。世一のおかげでうちの会社も一躍人気芸能事務所になったんだ。こんなんじゃ足りないくらい、世一には感謝している』
『絵心さん……』
優しい絵心さんの言葉に、涙がじんわりとにじんだ。
そんな俺を見て、アンリさんは頭を撫でてきた。
『早く荷ほどきしましょ』
『はい!』
俺はみんなに助けられてるなぁ……。
改めて、そう思った。
届いていた荷物を、ふたりに手伝ってもらいながら片付けていく。
あ……!
『これ、制服!届いてたんだ……!』
明日から着ていく制服を見つけて、俺は目を輝かせた。
『やっぱり、ブルーロック学園の制服はすごいな』
『はい!』
『着てみろ』
俺は絵心さんの提案に大きく頷いて、制服に着替えてみた。
わ〜……!すごい……!
黒を基調とした、お上品な制服。鏡の前でくるっと一回転する。
ふふっ、明日からの生活が、ますます楽しみになってきたっ……。
『どうです?』
ふたりの前に出ると、絵心さんとアンリさんが目を見開いた。
『……さすが世一』
『似合ってます!』
ふふっ、お世辞でもうれしいっ……。
『わかってると思いますが、そのままの状態で通うなんてご法度ですからね』
……ぎくっ。
そんな音が、鳴った気がした。
そうだよな……返送は絶対だもん……。
『それで、この出番だな』
絵心さんがダンボール箱からあるものを取りだした。
『メガネとウィッグ……これだけで、本当に大丈夫ですか?』
そう、ダンボール箱から出てきたのは、大きなメガネとウィッグだ。
『アンリちゃんは心配症だね。確認してみるか?世一、このメガネつけてみろ』
これをつけて学校に通うのかぁ……あはは。
言われるがまま、眼鏡をかけてみる。
『ど、どうです?』
『うん、特注したメガネがいい感じだね。これは普通よりも目のサイズが小さく見えるんだ』
確かに、鏡に映っている自分を確認すると、目を大きさが半分くらい小さく見えた。
『近視メガネみたいなものだ。世一は目が大きいから、これでずいぶん別人に見えるな』
『伊達メガネなのに、すごい……!』
どんな仕組みなんだろう……?
『……でも、外したらひと目でわかりますね』
『そのためのカツラだ』
う……カ、カツラ……。せめてウィッグって言ってほしいっ……。
『前髪が長いものを用意したから、これで顔が隠れるな』
絵心さんがそのウィッグを俺にかぶせた。
『……まぁ、これだったらわかりませんね』
『だろ?どうみても、オカルト趣味でもありそうな格好だがな』
オ、オカルト……。怖いのは苦手っ……。
でも、確かにこのウィッグ、すごいっ……。
長い前髪でメガネごと隠れるし、ウィッグっぽく見えることもない。
『本当はこれにプラスしてマスクもさせようと思ったんだが……それじゃあ怪しいし、逆に目立つだろ?』
『ですね』
『いいか?世一。このふたつ、絶対に外すなよ?』
絵心さんに釘を刺され、俺は『は、はい!』と返事をした。
『それと、念のためカラコンも入れといたから、それもつけることだ』
『カラコンも……?』
前髪とメガネあるから、そこまてましなくても大丈夫じゃないかな……?
『世一くんの目は目立つからね』
『そうかなぁ……』
瞳の色が薄いって言われるけど、あまり目立つって感じじゃないと思う……。
『世一に見つめられて、恋に落ちない人間はいなかったからな……お前もしっかり』
『……っ、絵心さん……!』
『あぁ、すまない』
からかっている絵心さんと、また顔が赤くなっているアンリさん。
『……?』
『ほ、ほら、早く片付けましょ……いや、そろそろ休憩にしましょ。出前頼むけど何がいい?』
『お肉!』
アンリさんが呆れたようにため息をついている。
『それじゃあ、今日は奮発して豪華な焼肉弁当にするか』
『やったー!俺大盛りがいい……!』
『はいはい、ほんと、誰も世一くんが大食いだと思わないと思います』
『そうだな。いくら食べても太らないなんて、うらやましいな……』
弁当が届くまで、俺たちはたわいもない話をしながら荷ほどきを進めた。
作業は、結局夜まで続き、片づけが終わると、絵心さんとアンリさんは立ち上がって帰る準備を始めた。
『それじゃあ、俺たちは帰るな』
車を停めた場所まで一緒に行くと言ったけど、危ないからと言われて玄関で見送ることに。
『本当にありがとうございました……!』
俺はふたりに向かって、深く頭を下げた。
ふたりには……感謝しても、したりない……。
『俺のわがままを、受け入れてくれて……部屋まで用意してくれて、感謝してます……』
これまでのように、もう頻繁に会えなくなるのかな……。
そう思うと、寂しくて涙が視界を歪めた。
『おい、世一何泣いてるんだ』
『そうですよ。……そんなふうに泣かれたら、帰りづらいでしょ』
う……だって……。
『ふたりのこと、大好きですっ……』
ぎゅうっと、強くふたりに抱きつく。
『……』
『嬉しいわ』
俺にとって、もうふたりはお父さんと……お姉ちゃん見たいな存在。
大事な大事なふたり。
『いつでも連絡してよ』
『う、うん……!』
俺は波土を脱ぐって、笑顔で返事をした。
『またな、世一』
『元気でね』
心配をかけないように、笑顔でふたりを見送る。
ふたりが帰ったあと寂しさと心細さでまた涙がこぼれたけど、泣いちゃダメだと言い聞かせる。
泣いたら目が腫れちゃうっ……。明日は始業式なんだから。
ってメガネとウィッグがあるから、顔なんて見えないかな……あはは。
今日はもう、早くお風呂に入って寝よう。
そう思った時、買っておいた菓子折が視界に入った。
あ、そうだ、隣の家に挨拶に行かなきゃっ……!
でも、夜の8時だし、こんな時間に行ったら迷惑だよな……。
うん、明日にしよう。
眠る支度を済ませて、ふかふかのベットに沈む。
アイドルを引退してから、今日まで……長かった……。
白い天井を見ながら、アイドル時代のことを思い出す。
アイドルを精一杯やりきったけど、ひとつだけ心残りがあった。
それは……名前を認知していたくらい通いつめてくれていた、カイザーというファンの男の子のこと。
イベントや握手会に欠かさず通いつめてくれていたのに、最後の握手会に現れなかった。
最後のお別れができなかったことが……今もずっと気になっている。
カイザー、元気にしているかなぁ……。
なんて、気にしても仕方ない。
最後の握手会に来てくれなかったってことは……単純に俺に飽きてしまったのかもしれないし……。
ファンが離れてしまうなんて、よくあることだ。
引退が決まったアイドルを応援するのはしんどいだろうし、カイザーもきっと……。
ずっと応援してくれていたから、そう思うと悲しいけど、今の俺はアイドルではないんだ。
『高校生活、楽しくなるといいな……』
友達、たくさんできるかな……。
遠足前日の小学生みたいな気持ちで、眠りにつく。
こと時の俺はまだ……平穏とは程遠い、波乱万丈な学園生活が待っているなんて、思いもしなかった━━━━。
𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎ ⇝ ♡ 3 0 0
コメント
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とても面白いです!続き楽しみにしてます