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#カワカミ・ハナマル
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ハナマルと鬱な主。
この小説を見る際は必ずあらすじを見てから読む事をオススメします。その他に注意書きも書いてあるので必ずあらすじをみてください。
悪魔執事になってから数ヶ月が経った。聞きなれない言葉も、慣れない仕事も少しずつ覚えてきた。パレスでの思い出も増えてきたな。
“あと5年待ってくれ。”と言ったのは今でも教会のガキたちと離れるのが本当は仕方がなかった。けどハナマルに迷惑かけたくないから。あの言葉を信じて大丈夫、間違っていなかった。
ここでの役割は教会のガキたちに、死んでったガキたちに、シスターに、誇れる仕事だ。
「ありがとうな。主様、俺は今幸せだ。」
・*:.。 。.:*・゚
「おかえり、主様。」
「ただいま、ハナマル。」
「昨日はラフな格好だねぇ。」
「ああ、そうだね。いつもはスーツだよな。会社は休んだんだ。」
「何かあったかい?」
「おおげさだな。….少し疲れただけだよ。」
「疲れ…..」
「いやそんな事より、ハナマルにプレゼントがあるんだ。」
「!!」
「これ。しおり」
「俺にプレゼント、いいのかい?」
「うん。ハナマルは良く詩を読んでるからね。是非使ってくれたら嬉しいな。」
「ありがとうな。大切に使うよ。」
「じゃあさ、今日は疲れたから一人にしてもらえる?」
「わかったよ。」
「何かあったら遠慮なく言ってくれよ?主様、体大切にしてくれよ。」
「わかった、わかった。」
「それじゃあ、おやすみ。主様」
「….おやすみ。」
「主様からのプレゼント♪」
(黒いチューリップとは珍しいねぇ、….!アモンじゃねーか。丁度いいところに。)
「アモン。」
「ハナマルさんじゃないっすか。」
「おや、ご機嫌っすね。」
「少し嬉しいことがあってねぇ。あのさ、黒いチューリップの花言葉教えてくれねぇか? 」
「黒いチューリップ……えーっと….“私を忘れ”っすかね。」
「!!」
「ハナマルさん!?」
嫌な予感がした。疲労での休み、普段と違う服装、急なプレゼント、一人にしてほしい。
(いつもと様子が違っていたのに、プレゼントに浮かれていた俺が馬鹿みてぇじゃねぇか。)
「主様!!」
「ノックしてくれないと困るよ…」
「それは….」
「……」
「お、願い、だ。こっちを向いてくれねぇか。」
「……ちょっと無理かな…」
「俺っ、主様の顔を見れないと寝れない体質でね、少しでいい。こっちを向いてほしい。」
「はは、何だよそれ。」
「今日、死ぬつもりなんだ。」
チッチッチッチッチッチッチッ
やけに時計の音がデカく聞こえた。
「……あの…」
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。びっくり、させたよね、ごめんなさい、くそっ。」
「主様が謝ることじゃねぇよ。」
でもな、正直動揺して言葉が選べねぇ。
「話せる程度で構わねぇ、ゆっくりで構わねぇ、俺に何があったか話してくれねぇか?」
「話して、ハナマルを傷付けたくない……これ以上は迷惑かけたくない……でもこれで最後の迷惑にするわ。」
「俺は迷惑だなんて一度も思ったことねぇよ。」
主様は涙が止まらなくなったと言ってあっちの世界で薬を大量に飲んだらしい。体を大切にしてくれよ。がのどまで出たが、止めるのは間違ってるな。と思い水を一杯渡した。
「ありがとう。」
(飲んだという安心感で涙は乾いた。馬鹿だな俺、この量じゃどうにもならないのに即効果なんてない。このあと副作用でハナマルに迷惑掛けるんだろうな。自己嫌悪で全身が重い。床に沈んでいきそうだ。最後まで、ちゃんとした主でいたかったな。落ち着こう、ちゃんと話そう。)
「落ち着いてきた、死ぬ理由話すよ。パレスは素敵だね。皆優しくて、俺にも主としての役割をくれる。ここにいていいんだって思わせてくるよね、でもあっちの世界じゃ違うんだ。ハナマルは分かる?家に帰ったら家族に奴隷扱いされる気持ち。」
「それでも何とか生きてたら、ある日もう一人の自分が現れるようになった。自分の未来に希望がない感じ、職場で助けてくれる人がいない気持ち、どんだけ頑張っても何も成し遂げられない気持ち。」
「あ〜…あまたお前だけできなかったな落ちこぼれ。」
「家族に暴力ふるわれるのはお前がいらない子だから生まれた意味がないから。」
「頭が悪くて人に迷惑かけて頼れる人も居なくて、人の愛し方も分からなくて。毎日何やってんの?終わってんねお前。」
「俺の存在を全否定する。」
(死にたくなってきたな…)
「主様、ありがとうな。」
「このクズ!!!落ちこぼれ!!!恥さらし!!!」
「だらしない俺を執事として見てくれてありがたいねぇ。」
「もう辞めたら?お前の存在が迷惑ちゃんと考えたら?まじめにやってる?」
「皆と同じ時間が与えられているのになぁ、何一つ成功しないお前。」
「主様は俺の大切な人だ。傷付けやしねぇ。」
(パレスでの俺は演じていたのは俺だよ。
なんで俺生きているんだろう。)
(最後にハナマルに会って、それで、死のう。)
「うん、そうしよう、」
「ギャップが大きかった。ほんとの俺は人のために動ける人間じゃない。」
「ハナマルを悪魔執事にしたのもハナマルとの思い出も全部演じた俺。こんな人間の担当執事でかわいそう。ごめんね」
「主は俺以外の人間がふさわしい。これ、ベリアンに渡しといてくれる?」
「受け取れねぇや。それに、俺は演じたあんたであっても。主様はあんたがいい。」
「あんたという人間を救いたい。」
「……」
「もう家族も失いたくない。 でも、あっちの世界では地獄が待ってる。 」
「一緒に見つけねぇか?あんたにはまだ選択肢がある。」
「ハナマルがどうやってあっちの世界のこと解決出来んだよ。」
「あんたの世界の事教えてくれねぇか。あんたの心の支えになるし、俺の経験や俺の知恵で何かいい方法見つけるし、俺があんたの逃げ場を探してやるよ。 」
「……」
「何としてでも力になるからな。」
「…口ではいくらでも言えるだろ。」
俺の声は主様に届かねぇ。
「….海行きたい。」
ルカス先生が昔教えてくれたんだ。自然は心を癒す効果があるって。今日は風も心地よくて空も綺麗。波も穏やかで優しいリズムだ。
(これで主様の気持ちが和らげばいいんだけどねぇ。)
「おえええええ」
「主様!」
「ごめん、吐いちゃった、汚いね。」
「いや、そんなことより体は大丈夫か?」
「あ、」
「主様。」
ドサッ。
「あー、薬の副作用かな。すっげー気持ち悪くなってきた、体の震えも止まんねぇ、しばらくこのまま寝かせて。」
「ねぇ、首絞めてよ。」
「俺には出来ねぇや、主様。」
「はは、そうだよね。ハナマルは優しいもん。」
「俺の周りの人もみんなそうだったら良かったのに。」
主様の体調が良くなるまで海にいたな。その時俺はすごく弱いことを考えていた。
もしも俺じゃなくルカス先生だったら長年の経験から最適な選択ができたのかもしれねぇ。ユーハンならあの優しさで主様を包み込んだくれたかもしれねぇ。テディちゃんなら持ち前のあの明るい性格で主様を前向きな気持ちにできたかもしれない。
「心が疲れた時は俺を頼ってくれ、主様のことはなんでも受け入れるからさ。」
できなねぇよ!!主様の考えを受け入れるなんざ、むりだ!!主様にはずっと生きていてほしい!!
俺はどうしたら主様の生きる理由になれるんだよ….
「泣かせてごめんね…」
担当執事なのになにもできねぇ。
「俺が賞金貢ぎにいた頃、何度か人の死に触れることがあった。」
「ころして、殺してくれ。もう死にそうなんだ、誰か一思いに…」
「諦めんな!生き残れ!生きて帰ろうじゃねぇか!」
「妻も子供ももう星になった。生きる意味はもうないんだ。カワカミさん、お願いです。」
「ありがとう。」
「あんたが死んだら、俺も死ぬ。」
「ハナマルには天使を倒す役割がある。生きていなきゃいけない。」
「いいや、俺はあんたの剣になるって決めたんだ。あんたの為に使うと決めたんだ。」
「あんたの生きる世界を生きる意味はねぇ。」
「だからそれは俺の意思じゃなくて演じた俺であって…」
「だがこんなだらしない俺でもあんたの剣にしてくれたのは事実だよな。」
「あんたが俺を剣にしてくれたおかげで生きることができた。パレスで新しい家族ができた。みんなと思い出ができた、生まれて初めての色んなイベントも経験できた。」
「あんたに伝えたい感謝は山ほどあんだわ。まだまだあんたとしたいことも沢山あるし。」
「俺のために生きてくれねぇか?」
「はは、何か告白みたいな言い方だね….」
「……………………………」
「….そうだね、そうだ…」
「ハナマルが死んでしまうのは嫌だ。うん…俺ハナマルのために生きるよ。 」
俺の声が主様に届いた。
今日の朝日は人生で一番キラキラして見えた。
「ハナマルは主様にはまだ選択肢があると言ったよね。」
「おう。」
「うん、他のやり方があると思ったんだ。俺もハナマルも幸せになる方法。」
「きっとあるな。一緒に考えよう。」
「パレスで死のうとしてごめんハナマル。パレスは幸せの詰まった場所だ。」
「あは、ハナマルがユーハンのあんまん食ったりさ。俺にかわいい系の服着させられたりしてさ。」
「恥ずかしいな、主様。これからもパレスで思い出作ろうな。」
「そうだね。」
あの後パレスに戻ってロノの朝食を食べたな。
「瞑想して、運動もしよう。」
主様は元気が出たようで一緒に瞑想や運動もしたな。作業もしたな。
「何を書いてるんだ?」
「ん、ないしょ。」
「よし、じゃあお散歩もしちゃおう。」
「ああ、主様。」
「おやすみ、主様。」
俺はここにいるから安心して寝てくれよな 。
ハナマルへ
いつもありがとう
昨日はごめんね、心配かけてしまった。
俺はあっちの世界でなんとか幸せになる方法を探そうと思った。前向きにさせてくれてありがとう。
少し時間がかかると思うけどつらくなったらハナマルに会いに行くから
絶対に会いに行くから待っていてほしい。
おいしいものいっぱい食べて
皆と仲良くしてね。
天使から皆を守ってね。
大好きだよ、ハナマル。
あっちの世界であんたはきっと、一生懸命頑張ってるんだな。信じてるぜ、主様。
「これじゃあ、まるで遺書じゃねぇかよ……。」
今日も俺はいつでも主様をお迎えできるように。執事としての腕磨き。天使と戦ってる。
俺はここでずっとあんたの帰りを待ってるからな。
最後まで、味方でいてくれてありがとう。
ガタッ。
おわり。
コメント
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本作はハナマルのところをユーハンで書かれています。 本人様を見たい方は是非探してみてください。