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🎧短編「離さない理由」
夜。
部屋は静か。
ソファ。
いつも通り、隣。
テレビはついてるけど、誰も見てない。
琉夏「……ねむ」
冬星「寝れば」
琉夏「ここで?」
冬星「いい」
短いやり取り。
そのまま、少しだけ体を預ける。
肩に、寄りかかる。
もう慣れた距離。
でも。
少しだけ、体勢を崩す。
バランスを崩して──
琉夏「……っ」
とっさに、手を伸ばす。
掴む。
冬星の腕。
一瞬。
(……あ)
完全に、触れてる。
しっかり。
離そうと思えば、離せる。
でも。
離さない。
冬星「……なに」
静かな声。
琉夏「いや、ちょっと」
言い訳みたいに返す。
でも。
手は、そのまま。
少しだけ強く握ってる。
(なんで離さねえんだよ)
自分でも分かってる。
理由なんて、ない。
でも。
離す理由も、ない。
冬星は、何も言わない。
ただ。
ほんの少しだけ、力が返ってくる。
握り返される。
一瞬。
心臓が、跳ねる。
(……は?)
予想してなかった。
でも。
嫌じゃない。
むしろ。
落ち着く。
数秒。
そのまま。
音もない。
言葉もない。
ただ、触れてる。
それだけ。
やがて。
琉夏「……もういい」
ぽつりと言って。
ゆっくり手を離す。
でも。
完全には離れない。
指先だけ、少し触れる。
それも、すぐに消える。
沈黙。
でも。
さっきまでと違う。
空気が、少しだけ変わる。
冬星「……落ちるなよ」
ぽつりと言う。
琉夏「もう落ちねえよ」
少しだけ笑う。
また、元の距離。
触れてない。
でも。
さっきより、ずっと近い。
触れたことがある距離。
それを、知ってる距離。