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#ファンタジー
#ざまあ
設楽理沙
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「あ、歩くん?」
私の手が歩くんの手のひらに覆われた。
「今日だけ」
「で、でも」
「じゃあ、こっちきて」
人気のない細い路地まで連れて行かれると、手を離される。そして、背中からぎゅっと抱きしめられた。
「歩くん!?」
「ごめん、少しだけ……」
少し掠れた歩くんの声が耳元で聞こえてくる。後ろから抱きしめられることなんて初めてで、どうしたらいいのかわからずにただ立ち尽くす。
「色々あって、疲れた」
そう、だよね。色々あった。きっと気が抜けたんだろうな。
私に過去を話してくれたことも、香さんに気持ちを伝えるのもすごく勇気がいることだったよね。
「だから、ちょっと……充電」
「じゅ、充電って」
「だって、俺だけ最近ましろに会えてなかったし…………だめ?」
だめなんて言えるわけない……。
「少し、だけなら」
「ん、ありがと」
歩くんは香さんのことだけじゃなくて、お兄ちゃんだからしっかりしなくちゃって思いがあって甘えられる場所がなかったのかもしれない。
普段は見れない歩くんの弱って甘えてくれる姿が見れるのは少し嬉しいことかも。
「ましろ、今日はありがとう」
「ううん、私よりも依子さんと泉くんのおかげだよ」
「二人にも感謝してる。けど、ましろにも感謝してる」
首を小さく横に振った。
「歩くんが戻ってきてくれたからいいの」
それに歩くんが突き放そうとした理由もちゃんとわかったから。
「やっぱましろはいいな」
「へっ!?」
耳元でクスクスと笑われて擽ったい。
この体制は凄く恥ずかしいけど、歩くんがまた笑ってくれるようになってよかった。私から離れた歩くんは、目の前に立ってにっこりと微笑んだ。
「充電完了」
琥珀色の夕日に染まった眩しいくらいの愛らしい笑顔に胸の奥がきゅっと締め付けられた。
「おかえりなさい」
やっと、いつもの笑顔が見れた。