「お、お邪魔しマース。」
「黒羽様ですね。探坊っちゃまは自室にいらっしゃいます。」
「これはご丁寧にありがとうございます……。これ、手土産です。」
「お気遣いいただき恐縮です。ありがたく頂戴致します。」
「はい……。」
使用人ってこんなに丁寧に客人をもてなすのか。とりあえず白馬の部屋に……
コンコンッ
「はい。」
「来たぞ。白馬」
「あぁ。いらっしゃい。」
?!?!?!?!?!?!!
これは!!!!!
チョコレートパフェ!!!!!!!!!
「白馬!!!お前そんな気遣いできたんだな!!!!!!」
「失礼ですよ。愛する人の好きなものを揃えて迎えることは基本でしょう。」
……愛する人……。
「アッハイ」
「さぁ、召し上がってください。」
さすが警視総監の息子なだけあって家具がそれぞれに品があり、高級感が漂っている。このチョコレートパフェでさえ、そこらのデパートのものとは比べ物にならないくらい値が張るのだろう。こんな物を恋人の方では無い俺が食べてしまっていいのだろうか?
「どうしました?今更遠慮はいりませんよ。 」
「おぅ……いただきます。」
……………………うまっ!!!!!!!!!
なんだこれ!なんだこれ!
生クリームにふんだんにふりかけられたチョコソースは濃厚で食感と甘さを楽しむクリームをチョコの味で包んでいる!細かく砕かれたクッキーもシャクシャクしていて歯ごたえがあり、甘すぎない!どうやらクリームの下の方はアイスでできているらしく、バニラ&チョコのパーフェクトな組み合わせで作られていた!
おいっっっっっしい!!!!!!!!
はっ!つい我を失っていた!
白馬が俺の姿を見てびっくりしていないか確認するために視線を少し上げた。
「ふふっ」
「?!」
何かで心臓を貫かれたような気がした。……気のせいだろう。目の前には穏やかに微笑んだ白馬のご尊顔が……。
ダメだダメだこれ以上見続けていたらまた心臓を貫かれてしまう!
そう思い、俺はまた視線をパフェに戻そうとした瞬間……
「快斗、ついていますよ。」
「?!!?!!?!」
俺の頬に温もりが触れていった。白馬の指には白いクリーム。恐らく俺の頬についていたのだろう。
ペロッ
……!!!!
アイツ!舐めやがった!!!!
心做しか体が暑くなった気がする。きっと気のせいだ!!!!
「……キザったらしいな。」
「??」
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何をされるかと身構えてはいたが、結局何もされなかった。拍子抜けだ……。自分の家へ帰っていると、家の前に女性が立っていることに気がついた。
「やっと帰ったの。少し遅いんでわなくて?」
小泉紅子だ。
「なんの用だよ?」
「見つけたのよ。方法を。」
「本当か?!」
「ええ。こんなところでくだらない嘘なんてつかないわよ。」
「それ、今すぐ教えろ!」
紅子の話によると……
あなた、こちらの黒羽快斗と白馬探の関係を詳しくは知らないでしょう。まずそこからでしょう。実は彼たち、あまり上手くいってるとは言えないのよ。なんせこちらの黒羽快斗は天邪鬼なものですから、白馬探が彼に積極的に構い続けなければまともに恋人らしさなんて出ないほどよ。徐々に不満を覚え始めたわ。えぇ。白馬探の方よ。彼の不満は高まってきた。それゆえ、パラレルワールドに魔法陣が繋がってしまったのね。
で、肝心の脱出方法なのだけれど、あなた、白馬探を満足させてちょうだい。
……は?
「どういうことだよ。」
「彼が満足すればあなたは開放される。つまり元に戻れる。白馬探が満足するまで、あなたは彼の恋人でいる事ね。」
「はぁーーーーーぁぁぁぁああぁあ!!!」
「近所迷惑よ。」
「おめぇが突拍子もないことを言うからだろ!」
「じゃあ、情報は伝えたわ。幸運を祈るわ。」
「あ、おい!待て紅子!」
俺の静止も聞かずにヒールの音を響かせながら紅子は夜の闇に消えていった。