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おずおず出てきた俺を見る阿部ちゃんは、穏やかだけど目の奥が笑っていない。


💙「…2人は」

💚「さっき帰ったよ」


ちょっと話そうか、と言われソファに座る。

何を話すって言うんだろう。


💚「舘さんと佐久間、すごかったね」

💙「すごかったって?」

💚「だって、お互いの事をよくわかってて、それを認め合ってるでしょ」

💙「それは、俺も思った」


阿部ちゃんがふっとため息をつく。


💚「俺にはできないな。やっぱり、言葉にしてもらわないとわからない」

💙「…言葉ってそんなに大事なのかな」

💚「俺は、何も言われずに俺の事好きだろうって信じ続けるのは 、難しい」

💙「そう言うなら俺は言葉にするのが苦手だから、特別一緒にいる事でわかって欲しい。はっきり伝えるのは…向いてない…」


やばいほど俺たちの主張は正反対。

これ、順当にいくなら『じゃあ俺たち合わないから別れよう』の流れだ。


💚「そうだよね。翔太、俺たちさ」

💙「うん……」


こんな時まで言葉って出ないものか。

阿部ちゃんが大好きなのに。意気地なしかよ。


💚「しばらく、距離置こうか。ちょっと考えるのやめよう、お互いのこと」


そう言った阿部ちゃんの目は、笑ってないどころか悲しいほどに淀んでいて、胸がぎちぎちに締め付けられる。

俺だって同じ気持ちなのに、どっちかが折れないとこのまま終わるのはわかっているのに。

俺は結局、帰る阿部ちゃんの背中を無言で見送るしかなかった。




もう3週間になるだろうか。

翔太、翔太と俺を追い回していた阿部ちゃんは、楽屋で資格の勉強に勤しんでいる。


涼太と佐久間は俺を気にかけてくれている。

愛が欲しいタイプの佐久間は阿部ちゃん派かと思いきや『みんなの前でわかりやすく避けるのはフェアじゃない』と完全に俺の味方だ。

あの時あんなうるさかったくせにと思う反面救われる気持ちもあったけど、何も解決しないのも解っていた。



1ヶ月が過ぎ、2ヶ月が過ぎ。

資格試験に合格したらしい阿部ちゃんが、連絡をよこしてきた。


仕事終わり、久しぶりに家に来た阿部ちゃんは俺の手を握って話し始めた。


💚「考えるのやめようって言ったけど、全然無理で。翔太を離したくなくて、どうしたらいいかずっと考えてた」

💙「え……」


俺から離れるために忙しくして避けてるんだとばかり思ってた俺にはまさに寝耳に水だ。


💚「俺は翔太が好きだし翔太にもそう言って欲しい、でも翔太が嫌ならもう求めない。またそばにいてくれたら、それでいいから」


阿部ちゃんが折れた。


本当なら願ってもない話だ。俺は今のまま、阿部ちゃんが好きとか愛してるとか言えって迫ってくることもない。


でも、それだと阿部ちゃんの気持ちは?


答えに詰まる俺を不安そうに見て、だんだん俯いていく阿部ちゃん。


💚「…俺から言い出したのに、都合よすぎたかな」

💙「いや、ちがくて…俺も、別に変わってない」


意味がわからなかったんだろう、阿部ちゃんが顔をあげる。

俺は深呼吸した。


💙「その…俺もす、スキ……だから、変わってない……」

💚「翔太」


阿部ちゃんの目が大きく開かれる。

顔が熱い。

俺にとっては、もはや一世一代の大仕事だった。





第6話→まきぴよさん

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