『』叶
「」葛葉
叶side
?「叶〜帰りカラオケ行かね??」
『あ、僕バイトなんだよね』
?「まじか、残念!また今度!」
『うんありがとう、またね』
そう、僕はコンビニでバイトをしている。オシャレなカフェのバイトに憧れた時期もあったが、コンビニだと深夜もシフトに入れるし、自宅近くだから通勤も楽だし、また知り合いにも会わないので結構気に入っている。
(コンビニにて)
?「じゃあ俺はこれで帰るから、後はよろしく叶くん。」
『はい、お疲れ様です!』
時刻は23時。この時間はちょこちょこお客さんは来るが基本的に日中よりは暇だ。ただ、飲み会帰りの酔っ払いが多いのが難点だ。
?「よぉ〜兄ちゃん〜元気かぁ?」
・・また酔っ払いだ。酒くさ、、めんどくさそうだなぁ、、
?「兄ちゃんこんな時間にアルバイトかい、お金ないの?おじさんがお金あげようかぁ?」
『・・いえ、、』
?「遠慮なんていいって〜ちょっと付き合ってくれたらそれでいいからさぁ」
『いえ、あの、、困ります、、』
?「いいじゃんいいじゃんちょっとくらい」
そう言い酒臭いおっさんが僕の手首を掴む。
『・・や、やめてください、、』
その時だった。
「おっさん、そこまでにしとけ」
急におっさんの背後から声が聞こえたかと思うと、僕の手首を掴んだおっさんの手をさらに掴む長い爪の手が見えた。
おっさんの背後に背の高く色白の男性が立ち、おっさんの耳元で何かをぼそっと呟いた。
すると、
?「ひ、ひいぃぃ〜!」
そう言っておっさんは走って逃げて行った。
『あ、ありがとうございます!』
「・・・大変だな、コンビニバイトも」
『いえ、すみません、ご迷惑おかけして、、』
「や、別に迷惑じゃねーけど、、」
『あ、これ、お会計でよろしいですか?』
「あ、おう」
ピッピッ
『えーと、合計で928円になります。』
「・・これで」
『はい、1000円お預かりしましたので、72円のお返しです。』
「さんきゅ」
『あ、あの』
「ん?」
『さっき、、あの人に何て言ったんですか?』
「・・ん?あぁ、殺すぞ、っつった」
『え、』
「なんかまずかったか?」
『いえ、、んふふwww』
「なに笑ってんだよ」
『いや、逃げ方が面白かったなって』
「たしかに傑作だったなぁw」
『とにかく、すみません!ありがとうございました!』
「おう」
そう言って長身の男性は店を出ていった。その後は幸いなことにタチの悪い酔っ払い客は来ず、平和な夜勤を過ごした。
(別日の夜勤中)
チーン
バックヤードで商品の整理をしていたら、レジのチャイムが鳴り、慌ててレジに出る。立っていたのはいつぞや僕を助けてくれた長身の男性だった。パーカーのフードを被っており一瞬わからなかったが、白髪の前髪に赤い瞳、長い爪だから間違いない。
『あ』
「・・よぉ」
『すみません、お待たせしました!』
「いやそんな待ってねぇけど」
ピッピッ
『えーと、合計968円になります。』
「これで」
『はい、1000円お預かりします。32円のお返しです、ありがとうございました。』
「・・いつもこの時間いんの?」
『え?あぁはい、大体入ってます』
「ふーん」
『・・いちごミルク、好きなんですか?』
「え」
『いや、前も買ってくださってたので、、なんかあの、意外だなって、、、あ、、すみません、、、』
「・・自分で言って謝るなよ」
『すみません、、』
「別にいーけど」
『あの、』
「ん?」
『いつもこの時間までお仕事ですか?遅くまで大変ですね、、』
「・・いや」
『あ、今日はお休みでしたか』
「いや、、俺仕事行ってねぇし」
『え、あ、、』
「・・なんか文句あんの?」
『ないです!すみません!!』
「ふはっwwお前謝ってばっかだなぁww」
そう言い目の前の男性は笑っている。他に客もいないので、僕もつられて笑う。
「・・なぁ、オススメのカップ麺ある?」
『え?』
「腹減ってさ、麺が食いたいんだけどどれが美味い?」
『え、えーと、、』
僕はレジから出て商品の棚まで歩く。
『これとか人気ですね、、でも僕は袋麺派です』
「ん?袋麺?」
『こーゆーやつです』
「あーでも面倒じゃんこれ」
『そうですか?』
「だって洗い物出るじゃん」
『でも好きな具とか入れられますし』
「まぁ、、たしかに、、」
『この塩味とか美味しいですよ、僕家にストックしてます』
「ふーん、、でもやっぱめんどくせぇなぁ、、」
『えぇ、、』
「・・お前が作ってくれるんならいいけどよ」
『え』
「ははっ冗談だよ、オススメしてくれたしこれ買ってくわ」
『は、はいわかりました』
会計を済ませ、僕に手を振って男性は店を出ていった。
「お前が作ってくれるんならいいけどよ」
先ほど言われた言葉が脳内で再生される。
・・なぜだろう、全然知らない人なのになぜか着いて行っても大丈夫そうな気がした。というより、少し着いていってみたかったとすら思った。
(翌朝)
?「叶くんお疲れ様!」
『あ、おはようございます!』
?「昨日も特に問題なかった?」
『あ、はい!大丈夫でした!』
?「よかった、じゃあもうあがってあがって!」
『はい、お先に失礼します!』
店番を交代し、バックヤードで着替えてコンビニを出る。自宅までの10分もかからない距離をのんびり歩く。まだ朝の7時台で通学や通勤途中の人たちとすれ違う。
今日は大学の授業はない。ゆっくり家でゲームでもしよう。僕は少し早足でアパートまで戻る。
アパートが見えて来た時、視界に飛び込んできた光景に僕はつい足が止まる。
自宅のアパートの外にあるゴミ捨て場にゴミ袋を持った昨晩の男性が眠そうな顔で立っていた。
『・・あの』
「・・んあ?あ、お前、、」
『・・もしかして』
「・・お前もここなの?」
『・・・』
「・・・」
『・・てか今日燃えるゴミの日でしたっけ?!』
「うん」
『やばっ!』
僕は足早に自宅のドアを開け、キッチンからゴミ袋を持ってまたゴミ捨て場に戻る。
「・・はや」
『あぶなかった、、週1ですもんね、、』
「・・てか同じアパートかよ」
『ほんとですね、、』
「今終わったの?」
『あ、はいそうです』
「ふーん、、飯食った?」
『え?いえ、まだですけど、、』
「じゃあ昨日買った袋麺とやら作ってくれよ」
『え、僕がですか?』
「あたりめーだろ」
『え、なんで、、』
「お前の分も作っていいからさ」
ぐうぅぅ〜
『・・・』
「ほら、夜勤明けで腹減ってんだろぉ?」
『・・わかりましたよ』
外付けの階段をのぼりながら僕は気になっていたことを聞く。
『そういえば、お兄さんは何てお名前ですか?』
「あぁ俺?葛葉」
『葛葉さん、、僕は叶って言います』
「叶、、」
『ん?どうかされました?』
「いや、、、、腹減ったなぁって」
『・・たしかに、僕もぺこぺこです』
ガチャリ
『お、お邪魔します』
「・・さぁ作ってくれ」
そう言い葛葉さんはソファにどかっと腰を下ろした。
・・ほんとに僕一人で作れって言ってるのかこの人は、、
若干呆れながらもキッチンの戸棚をあけて鍋とオタマを持つ。冷蔵庫を開けるとほとんど何も入っていないが、かろうじて卵と冷凍ほうれん草が入っていた。
・・これしかないけど、まぁいいか。
鍋でお湯を沸かし、麺を茹でる。深めのお皿にスープを入れ、麺を入れ、ゆで卵とほうれん草を乗せる。
『はい、できましたよ』
「おっ!どれどれ、、美味そうじゃん!!」
『葛葉さん家、何も無さすぎて具がしょぼいですけど、、』
「おい俺のせいかよ」
『だって、、』
「まぁいいや、食おうぜ」
『いただきます』
手を合わせ、麺をすする。すきっ腹に暖かいラーメンが染みる。
『あぁ〜』
「あぁ〜」
2人して黙々とラーメンをすすり続ける。
葛葉さんはスープまで完飲し、満足そうな顔で箸を置くと、自分の器と僕の器を手に持ち立ち上がる。
『えっあ、すみません』
「いいって。作ってもらったんだから」
『でも、、』
「いーよ、また作ってもらうから」
そう言いニカッと笑いながら葛葉さんは皿を洗う。
全然知らない人の家に上がってラーメンを食べて食後のお茶まで飲んでまったりしている。
なんとも変な状況だが不思議と落ち着いてしまっている自分がいる。
ふと葛葉さんの部屋を見渡す。物は比較的少ないようだが、テレビの前には複数のゲーム機がある。
『葛葉さんもゲームされるんですか?』
「・・あぁまぁな、お前もやんの?」
『はいやります』
「まぁじ?じゃあちょっとやろーぜ」
『もちろん』
(数時間後)
『うわあああああぁぁああああ!!!!』
「はいザッコーーー!!!」
やるゲームのジャンルも似ており、どれも僕がやったことのあるものばかりだった。葛葉さんとやるゲームは楽しく、時間を忘れて楽しんだ。
「ふいぃ〜、、あ、お前そろそろ帰って寝た方がいいんじゃね?」
『え、あ、もうこんな時間』
「お前、大学生?」
『そうです、でも今日は授業無いので』
「お、良かったじゃん」
『だからゲーム三昧にしようと思ってたんです』
「ははっお前ほんとにゲーム好きなんだな」
『・・葛葉さんは、その、、』
「・・なんでニートなのかって?」
『えっ?!いや、あの、、その、、、』
「・・ふっw」
『す、すみません、、』
「いや別に怒ってねーよ、ただ、、」
『ただ?』
「なんつーか、、あんま信じてもらえねぇっつーか」
『?』
そこで僕は葛葉さんが実は吸血鬼で魔界から人間界に来ていることを知った。
もちろんすぐには信じられなかったが、目の前で髪の色が白から黒に変わったり、髪の長さや爪の長さ、耳の形が自由に変わるのを見て、呆気にとられながらも納得した。
「・・な?話だけ聞いたらやべーだろ?」
『・・たしかに、でも、、僕も実は変で』
「変?」
『・・記憶がないんです』
「・・・」
『だから、生まれた場所も両親もわかりません、今はなんとか奨学金を借りて大学に通ってますけど、お金も厳しいんです』
「・・・」
『・・だからコンビニバイトが割が良くて。廃棄弁当も貰えるし、深夜も長時間シフトに入れるから、、』
「・・・」
『だから、僕も変なんです』
葛葉side
想像だにしなかった言葉が叶の口から次々とこぼれ落ちる。ただの大学生と思っていたら、そんな過去があったとは。。。
ふわりと笑う叶が儚く見えて俺は暫くかける言葉を見つけられなかった。
「・・お前、大変なんだな」
『そうですかね?でも生活はなんとかなってますし、、まぁお財布は寂しいですけど』
叶は笑ってそんなことを言う。
『ってこんな長居して、すみません!!そろそろ僕おいとましますね!』
慌てて立ち上がる叶。
「・・晩飯」
『え?』
「晩飯、食わねぇ?」
『え、でも、、』
「お前今日暇なんだろ?」
『まぁ暇です、けど、、』
「ならまたピンポンするから用意しとけよ」
叶side
謎に葛葉さんと夕飯の約束をしてしまった。
きっと僕があんな話をしたから、気を遣ってくれたに違いない。
・・悪いことしたなぁ、、
はぁとため息をつきながら自宅に戻りシャワーを浴びて部屋着に着替える。
時刻は昼の12時。夕飯まではまだまだ時間はある。
・・そういえば何時か言われなかったな
そんなことを思いながら布団に入ると、気づけば眠りに落ちていた。
(数時間後)
暗い部屋の中、目を覚ます。
夕飯の約束を思い出し、慌てて時計を見ると19時。だいぶぐっすり眠ってしまったようだ。
寝癖のついた髪を片手で触りながらまたシャワーを浴びる。
・・葛葉さん、何時に行くつもりなんだろう。
ピンポンすると言っていたし、とりあえず待っていれば大丈夫か、、
服を着替え、少しソワソワしながら部屋の中で待つ。
ピンポーン
20時前にチャイムが鳴る。慌ててドアを開けると先ほどと同じ格好をした葛葉さんが立っていた。
「あ、起きてたか」
『はい、あの、ほんとにいいんですか?』
「なにが?」
『え、いや、ごはん、、』
「誰が奢るっつった?」
『え?あ、』
「ははっ!嘘だよさすがに奢るよ」
またニカッと笑いながら僕の隣を歩く葛葉さん。
いつも行くという牛丼屋に入りカウンターに腰掛ける。メニューを選び、水を飲みながら待つ。
「お前、いつも飯どーしてんの?」
『うーん、廃棄弁当がもらえる時はそれ食べて、、ない時は基本自炊ですね。』
「え、お前料理できんの?」
『・・昼間食べたじゃないですか』
「あれはだって、、料理ってか、、、」
『そんなのも面倒くさがってませんでした?』
「・・うるせぇ」
『www』
運ばれてきた牛丼を食べながら僕と葛葉さんは色々な話をした。
「この後、風呂屋行こうぜ。あそこのアパート湯船ねぇから冬はさみいよな」
『・・風呂屋、、?』
「お前、銭湯行ったことねぇの?」
『・・ないです、なんなら湯船に入ったこともそんなにないです』
「・・・」
きょとんとしているのであろう僕を連れて、葛葉さんはさらに10分くらい歩いたところの銭湯に僕を連れていく。
見たことの無いサイズの大きな湯船を見てあからさまにテンションの上がる僕。
『すごい、広っ!!!』
「はは、滑るなよ叶」
葛葉さんと並んでだいぶ長湯をして、ポカポカになったところでまた着替えて外に出る。気温は低いはずだが、銭湯の熱かったお湯のせいか全く寒くはなかった。
「ほらこれ」
そう言って葛葉さんはコーヒー牛乳を僕に手渡す。
『え、あ、ありがとうございます、、』
「風呂上がりはコーヒー牛乳って古来から決まってんのよ」
『?そうなんですか』
大真面目な顔でコーヒー牛乳を受け取る僕を見て葛葉さんはまた笑っている。
飲んでみると、甘いコーヒー牛乳が喉を潤し確かにめちゃくちゃ美味しかった。
『・・ほんとだ、めちゃくちゃ美味しいです』
「だろぉ?」
嬉しそうに笑いながら自分もコーヒー牛乳を口にする葛葉さん。
・・突然家でラーメンを作ってゲームをして、夕飯も一緒に食べて風呂まで入って、、
吸血鬼で魔界から来たという意味不明な経緯を持つ葛葉さんだが、僕はなぜか葛葉さんのことを不審には思えなかった。むしろ、一緒にいて居心地がいいとすら思った。
『あの、葛葉さん、、』
「ん?」
『今日は、ほんとにありがとうございました。あの、僕が朝にあんな話したから、、気遣ってくださって、、ほんとにすみません。でも僕今日1日すごく楽しかったです。だから、、またコンビニ、、来てくださいね』
何故か最後の方は自分でも寂しそうに言ってしまったことに気づく。
「・・叶」
『はい?』
「お前、料理できるっつったよな?」
『え、まぁ、はい』
「得意料理は?」
『え?えーと、、オムライス、ですかね』
「・・決まりだ」
『え?』
「叶、お前は今日から俺と住む」
『・・え?はぁあああああ?!』
「うるさっ」
『だって、、だってそんな、、葛葉さんさすがにそれは、、僕申し訳なさ過ぎてそんな、、』
「・・嫌ではねぇんだ」
『嫌じゃないですよ僕今日ほんとに楽しかったんですから、、ってそうじゃなくて、なんでそうなるんですか?!』
「つまりだな、俺とお前で同じ部屋に住めば、家賃が半分になるだろ?で、お前は俺の飯を作るだろ?そしたら俺もお前も家賃が半分になるし、俺は飯も作ってもらえてトントンってわけ。」
『いや、あの、、家賃半分はめちゃくちゃ嬉しいですけど、、なんか葛葉さんの方がメリット多くないですか?』
「お前は俺という素晴らしいゲーム相手が出来て最高だろうがよ」
『・・・』
「あ、掃除と洗濯も基本お前な」
『・・・』
「ん?なんか不満か?」
『いや、なんか、あれ?僕あんまりメリット無いような、、、』
「わーったよ、じゃあ家賃は全部俺がだすから」
『いやそれはさすがに!!』
「どーすんの?乗るの?乗らねぇの?」
『・・・』
「家着くまでに答え出せよぉ?」
『・・・』
「ほらぁ、もう着くぞ??」
『・・の、乗ります!』
「っしゃ決まりな!」
『でも、でもほんとにいいんでs』
「はいお前これ以降”でも”禁止」
『・・・』
「ほら、そうと決まったらお前の荷物、俺のところに移すぞ」
『え、今からですか?』
「当たり前だろ、もう月末だぞ」
『あ、、』
「じゃあこのままお前ん家入るぞ」
『・・どうぞ』
「・・物少なっ!!」
『・・だって、、』
「いいじゃんこんなんならすぐ終わんじゃん!」
そう言って葛葉さんはニコニコしながら僕の荷物を抱えて自分の家に運んでいく。
僕は余りの急展開に頭は混乱していたが、心は不思議とこれからの生活にワクワクしていた。
突然決まった謎の吸血鬼のお兄さんとの2人暮らし。
葛葉さんの後ろ姿を見ながら僕も自分の荷物を運ぶ。口元は気付かぬうちに緩んでいた。
「よし、こんなもんか」
『はい、後は処分します』
「そしたら後は大家に交渉だな」
『そうですね』
「ふあぁぁぁ〜、湯冷めしそうだし寝るか」
『あ、はい!』
「・・お前、布団なのな」
『はい、葛葉さんはベッドなんですね』
「俺、布団だと足はみ出るから」
『あぁなるほど、、僕どこで寝たらいいですか?』
「・・お前の部屋が今はねぇから俺のベッドの横に布団敷いとけ」
『はい、わかりました』
「よし、お前歯磨きした?」
『してないです』
(歯磨き中)
『・・・』
「・・なんだよじっと見て」
『いや、その牙はどうやって磨くのかなって』
「・・別にふつーだよ、お前変なとこ気になるのな」
葛葉さんと洗面台の鏡の前で並んで歯磨きをする。少なくとも記憶の中では、日常的に家で誰かと歯磨きなんてしたことはなかった。
銭湯のせいか身体も心もぽかぽかしてあったかい感じがする。
葛葉side
寝室でベッドに入り、電気を消す。叶も布団に入ったようだ。
暗闇の中、ふと俺は見えない叶に声をかける。
「叶、今更だけどお前ほんとに来ちゃって良かったの?」
『・・葛葉さんが言ったんじゃないですか』
「や、そうだけどさ、なんか勢いすぎたかなって」
『・・僕は、葛葉さんと一緒に住めて嬉しいです、、迷惑じゃなければ、ですけど、、』
「・・・」
『・・葛葉さん?』
「・・・」
『・・寝ちゃったか』
「・・・」
『ありがとう葛葉さん、、おやすみなさい』
俺はつい寝たフリをしてしまった。
一緒に住めて嬉しいなんて言われたのはいつぶりだろうか。
そもそもなんで俺はこいつと一緒に住むなんて頭のおかしいことを提案したのだろう。
考えてもわからないが、あの時気づいたら口に出していた。
・・こいつはほっとけない。
叶がコンビニで変なおっさんに絡まれてた時からそうだ、なぜか本能的にそう思ってしまう。
俺は基本的に人間と関わるのが面倒くさくて、だるくて、嫌いなはずなのに、、、
知らん人間を自宅に上げて飯を作らせたり、風呂に一緒に入ったり、挙句の果てにこれから一緒に住む、、?
俺はどうしちまったんだ?
叶の苦労話を聞いて可哀想だと思ったからか?いや違う、前の俺なら人の苦労話なんかどうでもいい、むしろざまぁみろと思ってたくらいだった。
ただ、今日1日こいつと一緒にいて、なぜか俺は一緒に生活したいと思ってしまった。
・・まぁ俺が考えて出した答えだから正解なんだろう。
ま、飽きるまで一緒に住んでみるか。
そう思い、俺も目を閉じた。
(数ヶ月後)
ガチャ
『ただいまー、、って、寝てるかな』
一緒に住むようになり、葛葉さんは配信というものをしてお金を稼いでいるということを知った。僕は変わらず大学に通いながらコンビニのバイトをしており、今日も夜勤が終わり朝方に帰宅する。
冷蔵庫を漁り、味噌汁を作りながら卵焼きを焼く。
「・・なんかめっちゃうまそーな匂いする」
匂いにつられたのか、寝ていたのだろう葛葉さんが目をこすりながら寝室から出てくる。
『あ、食べる?葛葉さんも』
「・・食う。おかえり叶」
『ただいま、葛葉さん』
大きなあくびをしながら椅子に座り、テレビをつける葛葉さん。
僕はそんな葛葉さんの後ろ姿を見ながら出来た料理を皿によそう。
『できたよ、葛葉さん』
「おー今日も美味そうだな」
『「いただきます」』
おしまい
コメント
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いつも作品見させてもらってます! 今回の作品もとても面白かったです!! あのもし良ければなんですがこのパロ(?)での♡♡♡シーンを書いてくれないでしょうか??お願いします(>人<;)