「そんな風に上司が肩を抱いたりすれば、今どきはセクハラになるんじゃないですか?」
自分よりだいぶ背の高いチーフのことを、元彼がうとましそうに見上げる。
その悪意の籠った視線に動じることなく、矢代チーフがメガネの奥の目を細めてじっと静かに見返すと、
「上司じゃない、今は」
と、一言を告げた──。
「上司じゃなかったら、何なんです?」
「君の方こそ、人にものを尋ねるなら、先に事情を話すべきじゃないのか」
感情を表には出さないチーフの落ち着いたあしらいに、元彼がイラ立ったように「……チッ」と小さく舌打ちをする。
「俺は、彼女と前に付き合っていたんで。またよりを戻そうかと」
そんなつもりは一切ないからと無言で首を何度も振る私に、大丈夫だからと言うように肩を抱く手にグッと力を込めると、
「彼女が嫌がっているだろう。それに、彼女は僕と付き合っている。だから今は、僕が彼女のパートナーだ」
矢代チーフがそう正面を切って言い、元彼のことを突き放した──。
コメント
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いいぞー言ってやれ‼️ 前に付き合っていたからと言って、またよりを戻そうなんて虫のいい話なんてないわ💢