.
それから俺は、トレーニングに参加しつつ、体力を取り戻そうとしていた。
「 潔 ( 🙌🏻 」
「 出来るようになったのか? ( 🙌🏻 」
「 ちょっと、ちょっと ( 🙌🏻 」
黒名は意外にも早く手話を覚えていて、ちょっとびっくりした。
「 声は出さないんですか? 」
「 んー、出さなくてもいけるし ( 📝 」
「 そうなんですね。 」
と、ネスはほんの少し不貞腐れた様にカイザーの元へ向かった。
聞こえなくなって、話さなくなってから早1ヶ月半。 声の出し方さえ忘れてしまった。
今は補聴器 + 翻訳イヤホンを付けて生活している。
「 潔ー 」
「 ! ( 手振 」
「 イヤホン、使えるか? 」
「 ( こくこくッ 」
「 おー!良かった良かった! ( 撫 」
「 ありがとう ( 🙌🏻 」
玲王はこうして週に何回か、俺の様子を見に来てくれる。
蜂楽はと言うと…
「 いさぎぃ…ッ寂しさでタヒぬ… 」
「 ( 撫 」
俺の所に来過ぎて月に2回までの警告を受けていた。
毎日来ていたから流石の帝襟さんでも怒ったらしい。
「 潔ー、おみまーい 」
と、千切はお見舞いと称して俺の所でたむろしている。
帝襟さんに見つかっても自慢の持ち足で逃げ切っているらしい。
「 ( 手振 」
「 今日は見つかんなかった! 」
「 おめでとう ( 🙌🏻 ふは、 」
「 潔、これ、あげる 」
と、凪は来たら何かしら物をくれる。
どこで見つけてきたのか今日は橙色の花だった。
手話は他の組じゃ分かんない事の方が多いから、なるべくジェスチャーや表情を変えるようにしている。
「 ぁ、時間、玲王ー? 」
「 おー!凪、帰るぞ! 」
「 んー、潔、ばいばい 」
「 潔ー、また来る!! 」
と、4人が出て行って直ぐに、練習が始まる。
「 今日のメニューは ─── 」
俺もこの前から、皆と同じメニューに参加出来る様になった。
「 世一ぃ…終わったら飯食お…、 」
「 ん、皆で食おーぜ ( 🙌🏻 」
「 潔世一、後でマスタールーム来い 」
「 ( こく、? 」
「 潔潔、帰って来たらパス練するぞ 」
「 了解!直ぐ戻る! ( 🙌🏻 」
「 行ってら、行ってら ( 手振 」
何故かマスターに呼ばれて早20分。
俺はこの部屋から返して貰えません。
「 …答えろ潔世一。 」
「 …はい ( 🙌🏻 」
「 絵心甚八によると話せるそうだが。 」
「 …そうなんですね ( 🙌🏻 」
「 現状を確認したい。話してくれ。 」
「 …どうしても、ですか ( 🙌🏻 」
「 嗚呼、そうすれば此処から出してやろう 」
「 何て話せばいいですか、? ( 🙌🏻 」
「 普通に会話出来ればいい。 」
「 …分かりました ( 🙌🏻 」
黒名との練習もある。早く戻らないと黒名に申し訳ない、
「 名前は何だ? 」
「 ぁ、…ぃさ、ぃ、よいぃ、 」
「 成程な、 」
久しぶりに声を出すと、ちゃんと話せない。
自分の声だけが響いて、話している間周りの音が聞こえない。
「 今はどんな感じだ? 」
「 ぉと、聞こぇな、 」
「 …話している間聞こえないのか? 」
「 あぃ、 」
流石ノア、直ぐに現状理解してくれる。
「 これからの事もある、声を出していないと後々苦労する事になるぞ。 」
「 週に1回、声を出す練習をしよう。 」
そうして毎週日曜日、俺は声を出さないといけなくなった。
自分がここまで話せないと知って、抉れそうな程に心臓が締め付けられて苦しい。
「 潔、遅かったな ( 駆寄 」
「 ごめん、練習するか? ( 🙌🏻 」
「 …何かあったのか?疲れたカオしてる 」
「 別に、なんも無い! ( 🙌🏻 」
「 そーか?無理は駄目だぞ? 」
「 おー!ありがとな! ( 🙌🏻 」
練習には変に集中出来なくて、気が付けば昼になっていた。
「 いっさっぎーッ♪ 」
「 蜂楽! ( 🙌🏻 」
食堂に行くと、朝見たメンバーが勢揃いしていた。朝の落ち込みは無かったかの様な元気を振り撒く蜂楽。良い事があったんだろう。
「 これあげるッ! 」
渡されたのは糸電話。
「 糸電話…? ( 🙌🏻 」
「 ノアから聞いたんだ~ッ! 」
「 これだったら他の人に聞こえないし、俺とも話せるでしょッ♪ 」
と、蜂楽は糸電話の片方を持って話始める。
「 もっしもーしッ、聞こえますかーッ! 」
「 ( こくこくッ 」
「 潔も何か話してみてよー! 」
蜂楽は善意で言ってくれている事は分かっている。だけど、どうしようも無く、嫌味に聞こえてしまう。
そんな考えが頭の中を占領する。そんな筈は無いのに。
「 ぁー、 」
「 お!聞こえるーッ!!! 」
少し声を出してみると、蜂楽は嬉しそうに飛び跳ねていた。
「 これ、潔が持ってていーよ! 」
「 ありがとう ( 🙌🏻 」
「 だから俺とも話してねん♪ 」
ぱち、とウインクをして昼ご飯を食べ始める。
─── 渡された糸電話を見て、
俺はどうする事も出来なかった。
コメント
2件
とっても複雑、、