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「昨日、魔導師と勇者も消えちゃったね。」
「…もう残ってるの、ついに僕達だけだね。」
「ねぇ、占い師さ。おれ達がいつ消えるとか分かんないの?」
気が付いたらこの海に囲まれた島でぼくは目を覚ました。
ここに来る前の記憶はなく、それぞれ役割だけを与えられた21人の仲間達と悠久の時を過していた。
しかし、ある時から一人…また一人と仲間が消えていきだした。
目が光る。
それを合図に消えていく。
初めの頃は、何が起きているのか分からなくて怯えた事もあったけど、長い年月を過ごしていると、不思議と“そういうもの”になっていく訳でーー
そして、ついに残るはぼくを含め三人だけに。
それでもぼく達は変わらず自分達の役割をして過ごしていく。
残ったのは、狩人と調香師。
狩人は、森へ行き、食料となる動物を狩ってくる。
調香師は、花を詰み、様々な香りを創り出す。
そして、占い師のぼくが出来る事は…
「…分かってたら言うし。」
「じゃあ、いま分かってることは?」
「明日の天気は晴れ。あと、狩人、怪我するから気をつけて。」
天気の予測や、日常のちょっとした未来の出来事が見えるだけ。
「おっけ。」
「占い師の占いは当たるからねぇ。」
“占い師の癖にそれしか分かんないのかよ”とか言ってこない二人は、とても優しいのだと思う。
いつの頃からか、ぼくはそんな二人の優しさが心地よくて、一緒に居るようになっていたーー
「僕達、中々消えないね。」
魔道士と勇者が消えてからどのくらい経ったのだろう。
相変わらずぼく達の時はゆっくりと穏やかに過ぎていた。
「消える前ってさ、自分で分かるもんなのかな?」
「…どうなんだろうね。」
「え?目が光るから分かるんじゃないの?」
「自分の目が光ってるってどうやって分かんだよ。」
「あ、そっかぁ。」
「調香師は相変わらずボケてんね。」
「わ!占い師ひどいっ。まぁ、事実ではあるけどさ〜。」
「認めるんだ。」
あははっと、狩人の笑う声が夜空に響く。
「そういえば、昔、天文学者が、消えた後の事、色々言ってたよね。」
「あー、星の導きでってやつ?」
「そうそう。」
「僕、あれ何言ってるか全然分かんなかった。」
「おれも。」
「ぼくも。」
今度は三人の笑う声が夜空に響き渡った。
それから、しばらく消えた人達の思い出話をそれぞれ話し始めた。
出来るだけ明るく、出来るだけ楽しく。
夜の闇に寂しさが炙り出されないように。
「…僕、消える時は三人一緒がいいなぁ。」
それでも、最後に調香師が呟いたその一言に、胸がぎゅうっと締め付けられた。
ぼく達はなんの為にここに居るのか分からないまま過ごしていているけど、三人で居れるのなら、別に意味なんていらないと…
三人でずっと一緒に居れたらいいなと思っていたけど…
「ついに、おれ達の番が来たな。」
「もっと怖いかなって思ってたけど、なんだか…不思議と穏やかな気持ち。」
「占い師も調香師もめっちゃ目、光ってるよ。」
「あははっ、狩人も光ってるから〜。」
「…。」
ぼく達にも終わりの時が訪れた。
「僕、二人の事絶対忘れないから。」
「うん、おれも。」
「…。」
終わりが来たらなんて言おうかずっと考えていたけど、さっきからぼくの口からは何も言葉が出てこない。
無言のまま、二人の顔を見ると、ぼくの事を見つめながら、穏やかに微笑んでいた。
… ぼくは二人のように微笑むことなんて、出来そうにない。
だって、二人が居なくなる怖さでいっぱいだから。
「占い師、狩人…じゃあね。」
調香師が別れの言葉言った瞬間、脳裏に見た事のない映像が浮かび上がった。
それは、最後に見せた占い師の力か…
それともぼくの願望か分からなかったけどーー
どうせなら、哀しくないように。
「じゃあね、じゃなくて…またねだよ。」
ぼくはそう言って二人に微笑みかけた。
「またね…か。確かにその方がいいな!」
「そうだね!じゃ…占い師、狩人、またね。」
「またね。」
「またね。」
「涼ちゃんって、よくお花の香り嗅いでるよね。」
「うんっ。お花の香りってなんか好きなんだよねぇ。」
「若井は、身体ちょっとおっきくなってきたよね。それなら狩りとか余裕で出来そう。」
「ウケる。なにそれ、狩りなんかしないでしょ!」
もうすぐ本番なのに、暢気に楽屋飾られていた花の香りを嗅ぐ涼ちゃんと、衣装を軽く直している若井。
周りには他にも沢山人が居て、いつもの騒がしいぼく達の日常。
「あ。若井、今日階段気を付けた方がいいかも。」
「えー、なにそれ。涼ちゃんじゃあるまいし。」
「若井、元貴の言う事聞いといた方がいいよ!僕もこの前同じような事言われて、段差に躓いて転びそうになったもん。」
「いや、だからそれは涼ちゃんがおっちょこちょいなだけでしょ?」
「酷い!まぁ、事実ではあるけどさぁ。」
「認めるんだ。」
あははっと、若井の笑い声が楽屋に響く。
「それにしても、元貴ってたまに占い師みたいな事言うよねぇ。」
「それ、おれも思ってた。」
一瞬、ドキッとするワードを言う涼ちゃん。
顔に出さないように平然装うとした瞬間、楽屋にスタッフさんの声が飛び込んできて…
『皆さんスタンバイお願いしまーす!』
「よっしゃ!行くか!おれ達の占い師さん。」
「だははっ、なんか変な顔してるけど大丈夫?占い師さん。」
「…な、二人がぼくのこと占い師とか言うからじゃんっ。」
衣装をばっちり着こなした二人の姿に、あの日の思い出の二人の姿が被った気がして、ぼくは大きく瞬きをしたーー
-fin-
コメント
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生まれ変わってまた3人になれたんだね🥹 ガチめに涙出るて😭