記憶喪失になった話
⚠︎irxs ⚠︎青桃
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まろが、記憶喪失になった。
出かけている最中に交通事故にあって、その際に頭を強く打ったらしい
幸い命に別状がなかったが、その代償に記憶という大きなものを喪った。
1週間くらい、病院で寝込んだままだったけど、ついさっき、ようやく意識が戻ったと連絡があった。
記憶喪失だなんて、非現実的すぎるし、ありえないと思ってた。
聞いた時は流石に信じられなかったし、まだ、心のどこかで信じられていない気もする。
やっぱ冗談なんじゃないかって、行ってみれば、本当は記憶なんて無くなってなくて、ただのドッキリなんじゃないかって、何度も何度も自分に言い聞かせた。
でも、病院にも関わってるし、疑いようがなかった。
信じたくないけど、信じるしかなかった。
「まろ、…!!」
病室の扉を強く開く。
勢いで扉が跳ね返ってくる音が響く。
それすらもお構い無しに、俺はまろの方へ足を進めた。
「ないちゃん、…!」
「いふくん、今起きてるよ…、けど……」
申し訳なさそうに顔を背けるほとけっち
その隣にはベットから起き上がり、虚空を見つめるまろの姿があった。
……あれ、
まろって、こんな感じだったっけ、?
「あ、…っと、…俺の事、…というか、まず名前、分かる、?」
「………ない、こ、…?」
「そ、そう!ないこだよ、!」
なんだ。覚えてるじゃん。
やっぱ、嘘だったんだ。
記憶喪失なんて、現実であるわけないんだよ。
「な、ないちゃん、ごめん、!」
「………え、?」
「ないちゃんの名前は、さっき僕が教えて…」
「たぶん、それ以上のことは何も…」
「そ、…なんだ、…ね…」
「申し訳ないけど、…」
「君のこと、覚えてないんやわ。」
あぁ…この現実に叩きつけられるような感情
何回やられても、慣れないな
「…そっか」
「楽しかった日も、悔しかった日も、俺と2人で過ごしたあの日も、俺にとっては一生忘れられない日も思い出も。」
「まろは、全部忘れちゃったんだね」
「ない、ちゃん…」
「…ねぇ、ほとけっち。」
「喪った記憶を全て元に戻せる薬ってないのかな」
「……そんな薬、あるのかな。」
「っ……、」
「そんなの、あったら良いけどさ、こうなっちゃったのは…仕方ないよ。」
「またこれから仲良くしていけばいいし、それに、もしかしたらそのうち記憶を取り戻すかもしれないしさ。」
「………ごめん、」
「…まろが謝ることじゃないよ。」
もし、まろが記憶を取り戻せなかったら俺はどうすればいい、?
昨日までのまろを捨てて、新しく仲良くする、?
そんなこと、できるわけないだろ。
「俺、もう行くね。……お大事に。」
まろは、俺に関する一切の記憶を、他の全ての記憶と一緒に喪った。
まろのおかげで無色だった世界に色がついたってのに、とっくに彼なしでは生きていけない体になってしまったのに。
まろだけ全部忘れるなんて
絶対おかしい。
俺の記憶にだけいつまでも残って
俺一人で全部抱えて生きていくくらいなら、
俺も、まろのことを記憶から消してしまおうと思った。
騒ぎを起こさず1人で無くせる方法。
そんなことを1人で調べて。
調べて。
調べて。
やっとたどり着いた答え。
「あ……った、…」
「やっとだ、…」
「ないちゃん、最近来ないね。」
記憶を取り戻してからの会議中、ポツりとそう呟いたほとけ。
「ないくん、最近ずっと体調悪いみたいだよ。」
「心配やなぁ…」
どんどんないこのことで話が拡がっていく。
ないこが来なくなったのは、俺が記憶を無くしてからなんだとか。
ないこがこないのと、関係があるのか、ないのかは置いといて、少しだけ罪悪感を感じてしまう。
「まろ、謝るついでに見に行ってやったらどうや?」
あにきにそう声をかけられ反射で顔を上げる。
「え、俺、?まぁ、…ええけど、」
焦って了承してしまったが、会いに行く機会もなかったし、特に断る理由もなかったからそのまま話を流した。
「じゃ、今日の会議終わったら言って来てね」
「はいはい。」
「ないこー、?体調大丈夫か、?」
インターホンを押し、それ越しに話しかけてみる
その場にいないのか、返事は返ってこない
「…無反応とか、珍し…」
なんて考えていれば、ガチャリという金属音が聴こえた
「あれ、いるやん。」
「ないこー?」
ゆっくりと扉が開いていく。
空いていく扉から覗く懐かしい桃色の髪。
記憶を取り戻してからの対面は初なのかもしれないな。
「久しぶり。ようやく記憶を取り戻したようなんや。」
「ないこにはすごい心配かけたよな、?」
「本当に悪かった……、」
やけに静かだと思えば、キョトンとした顔でこちらを見つめていた。
てっきり、驚いてくるか、抱きついてくるかだと思ったら、予想外の反応をされてしまった。
「………ないこ、?」
「……あ、…っと…、申し訳ないんですけど…」
「あなた…誰ですか、?」
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