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side滉斗
お昼休み。
若井「元貴〜!一緒に弁当食おーぜ!」
弁当を手に声をかけると、分かりやすく顔を輝かせる。
大森「しゃーなしね!」
必死にニヤけるのを抑えようとしているのがわかって、つい笑みが零れてしまう。
若井「ふふ、ありがと!」
元貴と共にある所を目指して廊下を歩く。
元貴が学校に来たらどうしても連れていきたい場所があった。
それは屋上。
みんなは入れることを知らない。
独り占めしたいから鍵をかけた。
1人になりたい時や、落ち着きたい時。
俺にとって、大事な時間を過ごす場所。
若井「じゃーん!屋上でーす!」
大森「おぉー!すごい!屋上って入れるの!?」
目をキラキラさせて、走り回っている。
喜んでもらえたみたいで嬉しいな。
大森、若井「いただきまーす!」
一緒に手を合わせて食べ始める。
若井「それ美味しそー!もーらいっ!」
大森「あー!僕のミートボール!」
若井「ん、うま!」
大森「ぼくのー!」
ちらっと様子を伺うと、結構ショックを受けているようで涙目になっていた。
え、そんなに!?
若井「ごめんごめん!」
若井「俺のハンバーグあげるから!」
慌てて言うと、嬉しそうにこっちを見つめる。
大森「ほんと!ありがと!」
良かった…ほんとに百面相だな…笑
るんるんで口を開く元貴。
食べさせればいいのね笑
若井「あー」
大森「あーむっ」
大森「ん!おいしぃー!」
満面の笑みでほっぺに手を当てる元貴。
なにそれ、かわいい、
…いやいや、男にかわいいとかないでしょ、
何思ってんだ俺…
大森、若井「ごちそーさまでしたっ」
食べ終わると、長い階段を降りながら聞きたかったことを聞く。
若井「元貴はさ、部活とか入らないの?」
大森「入らないかなぁ…めんどいし。」
若井「そっかぁ…」
さすがにそうだよなぁ…
部活より曲作りだよな、
大森「急になんで?」
不思議そうに首を傾げる元貴。
若井「いや、サッカー部のマネージャーになってくれたら毎日一緒に帰れるのになぁって。」
若井「元貴と居るとすごく楽しいからさ!」
ほんとに楽しいんだよなぁ。
あいつらとはまた違う楽しさ。
なんだか落ち着くし。
だから。
若井「これからもずっと一緒に居たいな!」
元貴もそう思ってくれてるといいな。
淡い期待を持って、言葉にする。
大森「あっそ、…///」
…
放課後。
今日は部活があるけど、絶対元貴と帰ろうと思っていた。やりたいことがたくさんある。
若井「〇〇!」
『ん?どうしたー?』
若井「今日部活休むわ!監督に伝えといて!」
『お、おう!わかった!』
友達に伝えて元貴の席を見ると、もう元貴の姿はなかった。
え!うそ、はや!
慌てて持ち物を整えて、走り出す。
階段を駆け降りると靴箱付近に元貴の背中が見えた。
若井「元貴ー!」
立ち止まり、振り返った元貴は少し腑抜けた顔をしていた。
若井「一緒に帰ろーぜ!」
大森「え、なんで、部活は?」
若井「あー、休んできたっ!」
元貴と一緒に帰りたいから。
驚いたように目を見開いたかと思うと、口をきゅっと結び、なにかを堪えるような表情をした後、小さく呟いた。
大森「なに、してんの。」
ぽこっ
若井「いてっ」
何故か叩かれてしまった。
嫌なわけではなさそう、かな…?
…
帰り道。
若井「ちょっとこっち行こ。」
大森「なんで?そっち遠回りだよ?」
若井「いいから。行きたいとこがあるの。」
納得がいかなさそうな元貴を引っ張るようにして歩く。
見えてきたのは。
大森「…!駄菓子屋さん!?」
若井「せーかい!」
元貴は子供のようにはしゃいでいる。
かと思いきや、急に顔を暗くする。
大森「でも、お金持ってきてない…」
若井「そう言うと思って〜」
若井「今日は俺の奢りですっ!」
財布を取りだしながらニヤリと片口角をあげてみせる。
大森「まじ!?いいの!」
若井「ほら、好きなだけ選んでおいで!」
大森「うんっ!」
元貴は駄菓子屋に来るのは久しぶりなようで
はしゃぎながら選んでいる。
若井「いっぱい買ったね〜」
大森「うん!若井ありがと!」
若井「いーえ!」
千円分の駄菓子を抱えてホクホク顔の元貴を見てると、連れてきてよかったなと思う。
公園のベンチに座って買ったお菓子を食べる。
大森「ん!これおいし!」
大森「うわ、なつかしー!」
楽しそうにひとつひとつ選び取りながら小さなパーティーを楽しんでいるようだった。
大森「若井これ食べてみて!」
突然お菓子を口に放り込まれる。
若井「ん、ってすっぱ…!」
思わず顔を歪める。
大森「あははは!」
元貴の特徴的な笑い声が高らかに響く。
なにこれ!?めっちゃ酸っぱいんだけど…!
大森「さすがだね、3分の1を当てるなんて」
元貴が取り出したのはどれかひとつが超すっぱいガム。
まじかよ、、
未だ残る酸味の余韻を感じつつ、俺は弱々しく凄む。
大森「これ待ち受けにしよーっと笑」
いつのまにか写真を撮られていたみたいで、何度も眺めてはニヤニヤとしている。
全く…
まぁ、元貴が喜んでいるので良しとするか…
帰り道。この季節になると日が落ちるのは早く、もう星たちが挨拶をし始めている。
若井「どう?久しぶりの学校楽しかった?」
大森「うんっ!めっちゃ楽しかった!」
少し軽やかな足どりで前を歩いている元貴が振り向いて答える。
若井「それはよかった!じゃあこれk」
大森「でも疲れたから暫くは行かない。」
…はい。
はぁ…元貴の言うしばらくはかなり長いはず。
少し下がってしまったテンションを引き摺りながら歩いていると、元貴が歩くスピードを落とし横に並んでくる。
大森「まぁ、別に?たまになら行ってやってもいいけど。」
驚いて顔を上げると、そっぽを向いたまま耳だけ赤くする元貴が見えた。
ふふ、ほんとに天邪鬼なんだから。
若井「その日を楽しみに待っとくわ!」
ぐっ、と元貴の顔を覗き込み、笑いかける。
顔真っ赤だし笑
そんなことをしているうちに元貴の家が見えてきた。
若井「それじゃ、ばいばい!」
大森「ん、ばいばい。」
元貴に手を振って帰路に着く。
…
ベッドに入り、今日1日を思い出す。
元貴に言われたこと、授業中の面白かったこと、あのとき元貴の顔。
この日の夜は、なかなか寝付けなかったけど、なんだかよく眠れた気がした。
コメント
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はああてえてえよおおお💙❤