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#パニック
水族館マニア
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#バッドエンド
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朝。
学校中が、いつもとは違う空気に包まれていた。
「おはよう!」
「おはよー!」
廊下には飾り付け。
教室からは笑い声。
そして――
「いらっしゃいませー!」
奏斗たちのクラスも、いよいよ開店した。
-–
「神崎、注文入った。」
「了解!」
「こっちは俺がやる。」
「助かる!」
二人は大忙しだった。
お客さんを案内して。
料理を運んで。
空いた皿を片付ける。
気づけば午前中が終わっていた。
「疲れた……。」
「まだ午後がある。」
「石川、体力すごくない?」
「神崎が疲れすぎ。」
「昨日まで準備してたんだから仕方ない!」
冴が笑う。
「でも。」
「楽しいね。」
「……うん。」
-–
午後。
少し客足が落ち着いたころ。
「石川!」
「ん?」
「写真撮ろう!」
「今?」
「今!」
奏斗がスマホを取り出す。
「せっかくだし。」
「……分かった。」
二人で並ぶ。
カシャ。
画面を見る。
そこには、文化祭の飾りを背景に笑う二人が写っていた。
「いいじゃん!」
「うん。」
冴も画面を見つめる。
「……これも思い出だね。」
「だな。」
-–
そして夕方。
文化祭終了のアナウンスが流れる。
「みんな、お疲れさま!」
教室から歓声が上がる。
「終わったー!」
「疲れた!」
「楽しかった!」
片付けが終わるころには、校内もすっかり静かになっていた。
奏斗が鞄を持つ。
「石川。」
「ん?」
「行く?」
「……うん。」
二人は教室を出た。
-–
向かったのは――
夏休みに二人で見つけた、あの秘密の場所。
夕暮れの光が差し込む。
「久しぶり。」
冴が言う。
「文化祭終わったら、ここに来ようって言ってたもんな。」
「うん。」
二人はベンチに座る。
しばらく、何も話さない。
でも。
気まずくはなかった。
-–
「……神崎。」
「ん?」
「文化祭。」
「うん。」
「楽しかった?」
「もちろん。」
「俺も。」
冴が鞄から、あのしおりを取り出す。
「これ。」
「まだ持ってたの?」
「うん。」
「俺も。」
奏斗も自分のしおりを取り出す。
二人で並べる。
同じデザイン。
同じ言葉。
『これからも、思い出を増やそう。』
「……。」
冴が少し笑う。
「本当に増えたね。」
「うん。」
「体育祭。」
「文化祭。」
「夏祭り。」
「雨の日も。」
二人で思い出を数える。
「……まだまだ増えそう。」
「増やそうよ。」
奏斗が言う。
「これからも。」
冴は少しだけ目を伏せる。
「……うん。」
-–
その帰り道。
二人はいつもよりゆっくり歩いていた。
「神崎。」
「ん?」
「来年も。」
「?」
「また文化祭、一緒にやろう。」
「もちろん。」
「体育祭も。」
「うん。」
「……。」
冴は少し考える。
「来年も、その次も。」
奏斗が笑う。
「そんな先まで?」
「……嫌?」
「全然。」
「じゃあ。」
冴も笑う。
「約束。」
「約束。」
-–
少し離れたところから、その二人を見つけた颯太。
「……まだやってるよ。」
隣にいた蓮が笑う。
「いいんじゃない?」
「何が?」
「今は、あれくらいが。」
颯太も二人を見る。
「……まあな。」
二人の距離は、以前より確実に近くなっていた。
それでも。
まだ、その気持ちに名前をつけるには少し早い。
だから今は――
ただ一緒にいられることを、大切にしていた。
-–
第34話 おわり
次回・第35話「文化祭の写真」
文化祭の写真がクラスの共有アルバムに載る。
その中に、奏斗が知らない写真が一枚。
それを撮ったのは冴だった。
「……これ、いつ撮ったの?」
「秘密。」
そして、その写真には――
奏斗が一人で笑っている姿が写っていた。
コメント
1件
ああ、もう、すごく良かったです……。文化祭の喧騒の中で息を合わせて働く二人、その後に二人きりであの秘密の場所で思い出を数える時間が、静かで特別なものに感じられました。「これからも思い出を増やそう」っていうしおりの言葉が、今度はちゃんと「増やせたね」って確かめ合える瞬間になっていて、ぐっときました。最後の、まだ気持ちに名前をつけるには早いっていう距離感が、本当に繊細で好きです。更新、ありがとうございます🌷