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中学であんなことがあっても、時間ってやつは無情に流れて、
気がつけば俺ら、同じ高校の教室に座ってる。
ゾムとロボロと俺。
この並びを見たとき、最初は「また始まるんやな」って思った。
でも現実は、まるで“始まり直せる”ようなもんやなかった。
⸻
ゾムは、なんでもないふりして笑う。
ロボロは、なんも知らんふりして笑う。
ふたりの間にある“過去”を、俺だけが知ってる。
それが、どんだけ重たいか――時々、耐えられへんくなる。
昼休み、教室の窓際。
ゾムがパンを食いながらぼんやりしてると、ロボロが楽しそうに寄ってきた。
「なぁゾム、これって小さい頃の話? うっわ、俺そんなことしてたん? 最悪やな〜笑」
笑いながら、ゾムの肩を軽く叩く。
「お前も言うたれや! “アホちゃう”って」
「……アホやな、お前ほんま……」
そのゾムの笑顔はこの真実を知っている俺しかわからない。
今のあいつすごく苦しそうな笑顔、でもロボロは知らんし気づいてへん。
けど俺は、知ってる。知ってしまってる。
あの声も、あの涙も、電話越しでも分かってしまうほど震えていたであろう手も………俺だけが知っている…。
…………しんどいなぁ…今にでも逃げ出したい。全部放り投げたい。
でも、もっとしんどいのはゾムなんだろうなぁ…
⸻
放課後、校門の前で俺とゾムが並んで歩いてるとき。
ずっと気になってたこと、思わず口に出た。
「……お前、つらくないんか?」
ゾムが歩く速度をほんの少しだけ落とした。
「ん? なにが?」
「ロボロのこと。……今、一緒におるん、しんどいやろ?」
「……しんどくないって言うたらウソになる。でも、嫌なわけでもないねん」
どうしてそんな苦しそうに笑うの…?
「……言ったほうがええんちゃうん? ちゃんと、全部」
「それで、また“どなたですか”って言われたら……俺、もう今度こそ立ち直られへんかもしれん」
俺は、何も言い返せんかった。
自分が同じ立場でも、きっと、怖くてよう言えんやろなって思った。
「今は、これでええねん。ほんまは、ちゃうけど。
でも“今のロボロ”と過ごしてるこの時間も、ウソやとは思いたくないから」
ふたりの距離は、確かに少しずつ近づいてる。
でも、それが“戻ってきてる”のか、“ズレたまま並走してる”だけなのかは、わからん。
ただひとつ言えるのは――
“どっちかが壊れる前に、奇跡が起こってほしい”って、ずっと願ってる自分がいるってことや。