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『忘れてまった君へ』

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『忘れてまった君へ』

7 - 第7話  番外編③ ― 高校編・シャオロン視点 『“俺だけが知ってる”って、しんどいな』

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2025年06月10日

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中学であんなことがあっても、時間ってやつは無情に流れて、

気がつけば俺ら、同じ高校の教室に座ってる。


ゾムとロボロと俺。

この並びを見たとき、最初は「また始まるんやな」って思った。


でも現実は、まるで“始まり直せる”ようなもんやなかった。



ゾムは、なんでもないふりして笑う。

ロボロは、なんも知らんふりして笑う。


ふたりの間にある“過去”を、俺だけが知ってる。

それが、どんだけ重たいか――時々、耐えられへんくなる。


昼休み、教室の窓際。

ゾムがパンを食いながらぼんやりしてると、ロボロが楽しそうに寄ってきた。


「なぁゾム、これって小さい頃の話? うっわ、俺そんなことしてたん? 最悪やな〜笑」


笑いながら、ゾムの肩を軽く叩く。


「お前も言うたれや! “アホちゃう”って」


「……アホやな、お前ほんま……」


そのゾムの笑顔はこの真実を知っている俺しかわからない。

今のあいつすごく苦しそうな笑顔、でもロボロは知らんし気づいてへん。

けど俺は、知ってる。知ってしまってる。


あの声も、あの涙も、電話越しでも分かってしまうほど震えていたであろう手も………俺だけが知っている…。


…………しんどいなぁ…今にでも逃げ出したい。全部放り投げたい。

でも、もっとしんどいのはゾムなんだろうなぁ…



放課後、校門の前で俺とゾムが並んで歩いてるとき。

ずっと気になってたこと、思わず口に出た。


「……お前、つらくないんか?」


ゾムが歩く速度をほんの少しだけ落とした。


「ん? なにが?」


「ロボロのこと。……今、一緒におるん、しんどいやろ?」


「……しんどくないって言うたらウソになる。でも、嫌なわけでもないねん」


どうしてそんな苦しそうに笑うの…?


「……言ったほうがええんちゃうん? ちゃんと、全部」


「それで、また“どなたですか”って言われたら……俺、もう今度こそ立ち直られへんかもしれん」


俺は、何も言い返せんかった。

自分が同じ立場でも、きっと、怖くてよう言えんやろなって思った。


「今は、これでええねん。ほんまは、ちゃうけど。

でも“今のロボロ”と過ごしてるこの時間も、ウソやとは思いたくないから」


ふたりの距離は、確かに少しずつ近づいてる。

でも、それが“戻ってきてる”のか、“ズレたまま並走してる”だけなのかは、わからん。


ただひとつ言えるのは――

“どっちかが壊れる前に、奇跡が起こってほしい”って、ずっと願ってる自分がいるってことや。


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