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夜風が冷たく、三人の影が歩道に長く伸びていた。
滉斗は深呼吸をして、涼架の方をまっすぐ見つめる。
「涼架、元貴のこと、好きでいてくれよ。俺はもう、君の幸せを願うだけだから」
その言葉を口にした瞬間、滉斗の声が震えた。
彼の目には涙が溢れていた。
「本当は…ずっと、君の隣にいたかった。でも、元貴といるときの涼架が一番幸せそうなんだ。だから、俺…もう、諦めるよ」
滉斗は涙をこらえきれず、拳で目元を拭った。
その瞬間、涼架がそっと滉斗のもとへ歩み寄り、
ためらいなく、優しく滉斗に抱きついた。
滉斗は驚きで一瞬、体がこわばった。
けれど、涼架の温もりがじんわりと伝わってくると、
心の奥に張りつめていた糸が、ゆっくりとほどけていくのを感じた。
涼架の腕の中、滉斗の呼吸は浅く、胸が苦しいほど高鳴っていた。
自分の涙が涼架の肩に落ちてしまうのが恥ずかしくて、
それでも、もう隠すこともできなくて、
滉斗はただその温もりに身を委ねた。
涼架は滉斗の胸に顔を埋めたまま、そっと語りかける。
「滉斗は、元貴みたいに好きって言うのが怖かったんだよね……。関係が壊れるんじゃないかって、不安だったんだよね」
その言葉が、滉斗の心の奥深くに静かに染み込んでいく。
(どうして、こんなにも自分の弱さをわかってくれるんだろう)
(本当は、ずっと伝えたかった。
でも、怖かった。
この関係が壊れてしまうのが、
涼架や元貴が自分から離れてしまうのが――
それが、何よりも怖かった)
滉斗の喉は熱く、言葉にならない想いが胸を満たしていく。
涼架は滉斗の背中をそっと撫でながら、さらに優しく続ける。
「滉斗…ありがとう。確かに、若井は影でずっと支えてくれてたよね…。若井がいなかったら、元貴との関係もなかったと思う。本当に感謝してる。」
「元貴も…滉斗も大好きだよ…
僕は、二人とも愛したかったけど…
滉斗のおねがいだもんね…
ありがとう」
涼架の声は優しく、そして少し涙ぐんでいた。
滉斗はその言葉に、また涙があふれそうになる。
(こんなふうに、ちゃんと自分を見てくれていたんだ)
(自分の想いは無駄じゃなかったんだ――)
元貴も滉斗の背中をそっと叩く。
滉斗は、涼架と元貴、二人の温もりに包まれながら、
初めて「自分はここにいていい」と思えた気がした。
三人の間に、言葉では表せない温かな空気が流れていた。