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「雲雀って好きな人いんの?」
「えっ?!」
雲雀の家で、ゲームをして遊んでいた。特に意味は無いが、会話の種として撒いた話題。なんとなく、聞いてみただけだった。
「あー、いるんだ!誰?」
「お、教えるわけねぇだろ!」
「えー、なぁんでよ〜」
「っあー!!!やられた!!お前が変なこと聞くからやられたやん!」
「えっ、俺のせい?」
雲雀と居る時は、自分を取り繕わないで自然体でいられた。それぐらい、雲雀の事を信頼していた。変に気を使わなくて良い、馬鹿やれる唯一の友達。この先一生、雲雀みたいな奴は現れないとも思うぐらいだった。
「もー」
「で?…….じゃあ、どんな奴?」
「そんな気になるん?」
「気になる!」
「んー、…….」
恋バナ?とかいうやつは、あまりした事がないが、やはり言いずらいものなのだろうか。いつも素直に言ってくる雲雀が、なかなか口を開かないので不思議に思う。
「…….秘密」
そう言った雲雀は、あまり見たことない表情だった。少し下がった眉に、切なげな瞳。本当に、言えない事なんだ。そう感じた途端、何故か雲雀に置いていかれるような、そんな不思議な気持ちが湧いて、モヤモヤした。
「雲雀、…..そいつの事めっちゃ好きなんだね」
「………うん、めっちゃ好き」
「……そっかぁー」
「奏斗は?…..いんの?」
「んー、…あんまそういうの、無いかなぁ」
「そっかー」
そこで、会話が一旦途切れる。いつもなら、途切れることなんて無いのに。なんだか口数が減ってしまう。きっと、慣れない話題だったからだ。
「…….奏斗?」
「…ん?」
「なんか、…..元気ない?」
「………..。」
自分から聞いたくせに。なんで気を落としているんだろうか。雲雀が困ってる。
早く、いつも通りに。
「奏斗、…..なんか食う?」
「……雲雀と、…….遊べなくなるの、やだな」
「な、んで、そうなるんだよ?」
「だって、…..そうじゃん」
「俺はずっと、奏斗と遊ぶ気だけど…..?」
「でも、…..そんなんじゃ近づけんだろ」
「そんなこと別に、…..」
思わず、口走ってしまった。雲雀の返事が曖昧になったことで、我に返る。何を言っているんだ、俺は。
雲雀の問題なのに、口出しをしてしまった。良くなかったな、と反省する。
「…..ごめん、なんか余計なこと言って」
「いや、…….俺も、奏斗と遊べなくなったら嫌だから」
「うん…..」
なんだか、らしくない事をしたかもしれない。でも、モヤモヤが止まらなくて、今の自分はどこかおかしいと、一旦冷静にならないといけないと思った。
「…..今日は、もう帰ろうかな」
「え、」
「また明日ね」
「っ………ま、待って奏斗!」
雲雀の大きな声に、びっくりする。ドアを開けようと伸ばした手を、ピタリと止めて言葉を待った。
「ごめん、…..言えなくて」
「…….そんなの、気にしてないよ」
「嘘だ。気にしてる」
「………..。」
「言ったら、…….奏斗ともう、一緒にいられんくなるかもって…….思っちゃって」
「…….それって、どういう…..?」
「えっと………」
振り返って、雲雀の顔を見る。と、頬が少し赤く染まっていた。下を向いて、言いずらそうにモジモジしている。
どうしてそんなに、…….まるで、告白でもするみたいだ。
……………..あれ?
「………俺さ、」
「………….。」
「………、奏斗?」
「…….ん?」
「なんか顔、赤い…..?」
そう言われ、咄嗟に手で頬を覆った。
これは、完全に自意識過剰で、ただの考えすぎだ。そんなので、顔を赤くするなんて。これで違ったら、どうするんだよ。恥ずかしい。
でも、なんでだろう。こいつの事は、…..渡会雲雀のことは、何故か分かってしまうから。だからこれは、多分、正解だ。
「熱か?…..具合悪かった?ずっと」
「悪くない、…..大丈夫」
そう言いつつも、下を向いて、顔を上げられずにいる。早く赤みが引いてくれと、願うばかりだ。
「でも…顔真っ赤よ?」
心配そうな声色が、近づいてくる。雲雀の足が視界に入って、ぴたっとおでこに何かが触れた。
雲雀の手だ。
「うーん、…..熱くは、ない、か?」
「…..ないに決まってんじゃん」
「そんなん分からんやろ?」
「分かるよ…..。」
「なんで?」
「雲雀が、…….好きなの、俺って気付いちゃった…….だけ…….」
「………….。」
シン、と、静寂が二人を襲う。雲雀がなかなか口を開かなくて、後悔と恥ずかしさが頭をぐるぐると回った。本当に違ったのかもしれない。ただの自意識過剰だった。言葉を選んで、困っているのかもしれない。雲雀の言葉を待てばよかった。
でも、…..あの状況で迫ってこられたらテンパるって。
「嘘だろぉぉぉ!?」
「わぁ!!!」
急に大きな声を出す雲雀。至近距離でその声量、馬鹿じゃないの?!と、怒りをぶつけそうになった。が、驚きすぎて何も言えなかった。
「え?なんで?…..俺まだなんも言ってないよな?」
「言ってないね」
「…….えぇ…..?」
雲雀の顔がみるみる赤くなっていく。当たってた、と安心した瞬間、自分の中に余裕が生まれた。途端に、口が回るようになる。
「雲雀も熱〜?」
「う、うるさいなぁ」
「あー、…..よかった」
「なにがぁ?」
「その好きな奴ってのが俺でさ」
雲雀がキョトンとした顔でこちらを見た。
間抜け面。と思いながら、雲雀の顔を見ていると、それがなんだか面白くなってきて、だんだん笑えてきてしまう。
「なんて顔してんの笑」
「いや、だってさぁ…..」
「やばい、笑…..ツボった笑」
「えぇ…..?」
思ったよりもツボに入ってしまい、一人腹筋が崩壊しそうになりながら腹を抱える。
雲雀はそんな俺を、ぼけーっとしながら見ていた。
「はぁーっ、…..おっかし」
「そんなツボだった…?」
「ツボっちゃったねぇ…..笑」
「…….奏斗、なんとも思わんの?」
「言ったじゃん、良かったって」
「奏斗も、俺のこと好きだったん?」
「んー、恋愛とかよく分からんけど、雲雀がそうだって分かった時嬉しかったよ」
「知らんよ?ハグとか手繋ぎ出したりとか…..はまぁ、出来そうだな。…あ、キスとか迫るかもよ?」
「出来るもんならね〜?」
「舐めやがって…..」
告白が、ちゃんとされた訳では無い。付き合う、と言葉で言い合った訳でもない。それでも一緒にいて、たまに手を繋いだりする。今までの関係性に、少し、恋愛要素が増えただけ。馬鹿やって笑い合って、たまにくっつく。そんな、気楽な関係。
一緒に過ごす日常が、更に楽しくなったんだ。
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