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春――桜の花びらは〈太陽に憑かれたもの〉の腕に触れ、火の粉のように燃え尽きた。
夏――炎天下でも、“それ”の吐く息は霜を帯び、地面にひび割れを残した。
秋――枯葉が渦を巻き、歩く屍の足跡に積もるそばから朽ちた。
冬――吐く息と雪が混ざり、世界は静寂と白だけになった。
季節が巡っても、彼の時間はひとつも進まない。
行く先々で、灰の塵は――祈りの道標になった。
村人は小石を積み、
「ここより先、太陽に憑かれし者あり」と赤い布を結ぶ。
旅人は語る。
「夜の闇よりなお冷えた男が、陽を求めて北へ行った」と。
いつしか物語は歪み、
“勇者”の名は失われ、恐れと神格だけが残った。