テラーノベル
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ガチャンと扉を閉める音が響き、また一つビニール袋が手渡される。
部屋に戻ってそれを床に放り出すと、中から出てきたのは、SNSで流行っているらしい雑貨や、特に着たくもない服。
買っても、持っても、心はこれっぽっちも満たされない。
私の部屋を埋めていくのは、そんな「本当に欲しいわけじゃないゴミ」ばかりだった。
「本当に欲しかったものって、何だっけ……?」
ふと、部屋の隅にある姿見に目をやる。そこには、綺麗に髪を整え、完璧な笑顔を浮かべた『海原みなみ』が映っていた。
でも、その鏡の向こうの瞳には、何の光も宿っていない。
あぁ、私はもう、消えちゃっていたんだ。笑顔の仮面が顔にピタりと張り付いて、どんなに爪を立てても、もう剥がれやしない。
「今日も良い子だね」「いつも楽しそうだね」みんなが私に向けるその言葉に、わたしはお人好しな笑みを返す。
その瞬間、わたしの体は現実から切り離され、冷たくて暗い、光の届かない海の底へと今日も深く落ちていく。
みんなと同じように息をしようとするたび、肺の奥が焼けるように熱い。嘘を重ねるたびに、私がわたしなのか、私なのかわからなくかる。
――お願いだから、本当の私を見つけないで。もしもこの仮面の下にある、ドロドロに汚れた本音が見つかってしまったら、この嘘の仮面は粉々に剥がれ落ちてしまう。みんな私から離れていってしまう。
だから、今日も笑わなきゃいけない。私をこの場所でいつものように笑わせると同時に、本当の私がわからなくなるあの人たちの「良い子」という言葉。私はその呪いのような言葉に、今日も蜘蛛の糸みたいに縋り付いて、必死に呼吸を繋いでいる。「……置いてかないで、私を」誰もいない夜の部屋。
膝を抱えて、ぽつりと本音が溢れる。
ここに置いていかれるくらいなら、いっそこのまま、誰も知らない場所へ消してしまってよ。
すべてをめちゃくちゃに壊してしまう前に、私はまた急いで仮面を被り直す。
いつもみたいに。
明日もまた、学校に行ってみんなと笑わなきゃ。
なのに、体は鉛のように重く、どんどん海の底へ沈んでいく。鏡の前に立ち、もう一度、口角を指で引き上げた。本当の私は見つかっちゃいけない。
嘘の仮面を、もっと深く、強く、顔に押しつける。息が、うまくできない。それでも、明日を生きるために笑わなきゃ。引きつった笑顔のまま、視界が歪んでいく。「ははっ、大丈夫だよ」狂ったように、壊れたおもちゃみたいに、高い声で笑ってみせる。
「……大丈夫だよ」今度は、すべての感情を失った抜け殻のように、静かに、あきらめた呟きが暗闇に消えた。そうして私は、明日もまた『いい子の海原みなみ』を演じる。
コメント
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みぅです🤍🥀 「本当の私を見つけないで」ってセリフ、すごく刺さりました……。鏡の前で笑顔の仮面を押しつけるシーン、息苦しくなるほどリアルで、読んでいて胸がぎゅっとなりました。夜の部屋で膝を抱えて呟く「置いてかないで」が切なくて、この子の孤独がひしひしと伝わってきました。続き、すごく気になります。