戦場の花

1. 収まらぬ激情と、ハンジの叫び

夕暮れの広場。エルヴィンがおでこへのキスを終え、リヴァイがサクラを背後から強く抱きしめたまま、二人の英雄は激しく睨み合っていた。サクラは、その二つの巨大な力と感情の間に挟まれ、身動きが取れない。

「リヴァイ、離せ！」 「黙れ、団長。この子の体は、お前の理性的な手に渡すには、あまりにも清潔すぎる」

その殺気立った空気に、ハンジがカメラを片手に割って入った。

「記録完了！二人とも素晴らしい愛情表現だよ！だが、このままでは不毛だ！この愛のエネルギーを、人類の勝利に繋げる方法を考えよう！」

ハンジの言葉に、エルヴィンはゆっくりと冷静さを取り戻した。彼は馬から降り、リヴァイの真正面に立つ。

「リヴァイ。君のサクラへの情熱は、私への宣戦布告だ。私情で兵団の規律を乱すのは、指揮官として許されない。だが、君を排除すれば、サクラの護衛という点で戦力が落ちる」

1. エルヴィンの提案：「戦略的優位性」

エルヴィンは、一歩引いたように見せかけ、最も非情で、最も彼らしい**「勝負の条件」**を提案した。

「決着をつけよう。私情ではなく、戦略的な優位性でだ。サクラは、戦略の鍵だ。感情で奪い合うのは無意味だ」

エルヴィンは、サクラへのキスで独占した「頭脳」を主張する。

「勝負は、明日の三者会議の進行役をどちらが務めるか。そして、その座を得た者が、**今後一週間、サクラの『公私両面における監督権』を得る。ただし、その権限は『人類の未来を左右する戦略的必要性』**を伴う。これは、私情ではない」

エルヴィンは、サクラという**「資源」**を、より良く活用できる者が勝つべきだと主張した。

1. リヴァイの反論と最終条件

リヴァイは、サクラから静かに体を離したが、まだ彼女の腕を掴んでいた。彼の目は、エルヴィンの**「大義」**という名の野心を見透かしていた。

「フン。お前の汚い野心を正当化するための口実だろう」リヴァイは、嘲笑する。

「いいだろう。受けて立つ。だが、勝負は、俺の領域で決めさせてもらう」

リヴァイは、エルヴィンの「戦略」の最も暗い部分を晒すことを要求した。

「条件は一つ。三者会議までに、**サクラの持つ情報を元に、お前が立てた戦略の『最も汚い部分』を洗い出せ。つまり、その戦略で『失われるであろう、最も純粋なもの、最も多くの血』**を、サクラが判断できる形で提示しろ」

リヴァイは、エルヴィンの**「戦略」という理性の裏に潜む「犠牲」を暴き、それをサクラの「純粋な視点」**で裁くよう求めたのだ。

「そして、その**『汚い現実』を、お前が『完璧に浄化』**できるかどうかで、勝敗を決める。お前の戦略が、俺の『清潔な基準』を満たせるか、勝負だ」

1. 最終的な誓約

エルヴィンは、一瞬の躊躇もなく、その条件を受け入れた。彼の口元には、冷徹な笑みが浮かんでいた。

「面白い。私の戦略の裏にある**『汚い現実』を、君の『潔癖な理想』でどこまで浄化できるか。…サクラ。君の持つ知識が、この勝負の『真のジャッジ』**だ。君は、どちらの未来を選ぶのか」

エルヴィンはサクラの顎に手をやり、挑戦的な視線を送る。

リヴァイは、サクラの髪を優しく撫で、その瞳を見つめた。

「サクラ。よく見ておけ。俺が、お前を汚すもの全てを、この手で切り裂いてやる。お前を、最も『清潔な未来』に連れて行くのは、俺だ」

二人の英雄の、サクラを巡る最終的な決着は、「戦略」と「清潔」という、彼らの全てを賭けた哲学の対決へと昇華した。サクラの「仲直り計画」は、予想だにしなかった最終戦争を引き起こしたのだ。