ズッ友編
nk視点
いつも選択している講義が被れば一緒にいる、きりやんとぶるーくとの移動中。
最近できたバーに2人を誘って遊びに行こうと提案をした。だがここ最近、きりやんの付き合いが悪いんだ。
今回だってそう。
nk 「なぁ、ここ!最近出来たバーなんだけど、俺の友達がバイトしててさ!2人とも、ど?行かね?ゲイの子も結構来るんだって‼︎な!行こうぜ〜!」
br 「え〜、僕課題ヤバいんだよね〜…、」
kr 「…あ〜、俺パス。2人で行ってきて。」
nk 「えぇ〜、やん来ねーの?最近そればっかじゃーん。」
ぶるーくの課題がやばいのは、今に始まった事じゃないから置いといて。きりやんは大体誘ったら付き合ってくれてたのに。
そう思っていると、俺の話を適当に聞き流していたきりやんがふと、遠くの方へ視線を向けた。
すると突然、
kr 「ちょ、ごめん。後で追いつくから、先講義室行っといて。」
nk 「は!?ちょ!まだ話の途中なんだけど〜〜‼︎」
そう言って先ほど向けていた視線の方へと走っていってしまう。俺の苛立ちの声に、隣ではぶるーくがあっはは、と笑っていた。
きりやんが走っていった先には黒褐色に艶のある髪を揺らした、非常に顔立ちの整った男の子がいた。走り寄るきりやんに気づいたその青年は、無表情を少しだけ緩めて話し出す。
きりやんの表情も、見たことがないくらいの笑顔を見せていた。
ーーあれってもしかして、
br 「…本命、かな?やんさんの。」
nk 「え…?」
2人の様子を見ている俺の背後から、ぬっとそう言い放つぶるーく。友人の、恐らく“本命”の青年との様子を、にやにやと観察する姿は非常に楽しそうだ。
nk 「…ま、じか⁉︎うわ、そういうことかよ〜。」
br 「だって僕、大学できりやんに出会ってからあんな楽しそうな笑顔見たことないし!」
言われてみれば彼の表情は、まさしく好きな人に向けられたものに見える。俺らと一緒にいる時は、多少なりとも笑うものの基本「他人に興味ありません」のスタンスだったから。俺ら以外には、愛想笑いの方がよく見かけてたことを思い出す。
nk 「だから最近全然遊んでくんなくなったんか!やんに紹介した子に、連絡つかないって言われたのもそれかぁー。」
br 「そーいうことじゃない?」
nk 「うわー、きりやんに先越されたのまじか。」
br 「あっはは、ばか失礼なんだけどw」
ーー本命か、いいな〜。俺だって、、、
溌剌に笑うぶるーくを横目に、ふとよぎる。
そんな思考を振り払うように、いつか観た映像が脳内に再生された。
『あれは、桜の舞う季節で見つけた人だったーー。』
nk 「俺も…、」
br 「ん?」
nk 「俺も見つけたんだよ!超〜どタイプの子‼︎」
br 「え!そうなの?なんていう子??」
nk 「分かんない‼︎けど、綺麗な黒髪でさ、左目の下に泣きぼくろがあるんだよ!春に見かけてからいっっかいも見つけれてない。どこに居るんだよ〜!」
br 「ヘぇ〜、まぁうちの大学広いしね〜。」
俺の話を聞きながら緩く相槌を打ってくれる。のろのろときりやんに言われた通り、先に講義室へ向かう。そうしていると俺の悪い癖で、つい話す声が大きくなってしまった。
nk 「あーあ。その子が超絶絶倫巨根ボーイだったらいいのになーー!!」
br 「なかむ〜声大きいよぉ!またきりやんに怒られるよ〜。」
nk 「あっ、やべ。」
俺的には切実な願望が口からこぼれ落ちた。
なんてことなかったみたいに、また歩き出すぶるーく。
nk 「ぶるーくはいないの?そーゆう子。」
br 「んー、僕はねぇ……ないしょ。」
nk 「あっ!ずるい!!いるなら言えよ!!!」
br 「あははははw」
そんな中学生みたいな話をしていれば、いつの間にか講義室の前に。それと同時に、
kr 「え、何。なんの話してんの?」
きりやんが合流する。俺たちはだいぶとスローペースで歩いていたようで、お前ら遅くね?ときりやんに言われてしまう。
nk 「あ、やん。」
br 「お、きりやんさんじゃないですか〜!ね!ね!あの子、きりやんの本命なの??可愛い顔してたね〜!」
kr 「は?うるせぇうるせぇ!お前ら絶対、手出すなよ。てか、近づくな!」
br 「えぇ〜、ひどくなぁーい?」
nk 「..俺ら人のもんには手出さないのになー!」
br 「ねーー!!」
くだらない話に言い合いを続けながら、俺たちのいつも通りの日常が流れていく。
ーー名前も知らない、黒髪の彼に想いを寄せて。
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