「なぁ、苦しい?」
そう聞かれ、返事をする間もなく腹を蹴られる。冷たいアスファルトに寝そべりながら虐げられるのはいつぶりだろう。
「返事しろって。おもしろくねぇの。」
そういって一発、また一発と肉体も精神も抉られていく。
まだ、こんなところでくたばれない…。
そう思い、体を起こそうとするも力が入らず、片足もなく上手く立ち上がれない。
「どうした、立ちたいか?立てるもんなら立ってみろよ、このグズが。」
みぞおちに一蹴り、強い衝撃が走る。血を吐き呼吸が浅くなるのを感じる。
気を失ってしまう。いや、むしろ失いたい。
「おいおい、ここで気を失われちゃ困るよ?誰のせいであんな事になったと思ってんの?」
「ちがう、俺はあんな…」
「口答えすんなよこの阿呆が!」
顔を蹴られ、腹を形が戻らなくなるほど強く踏まれる。
俺のせいだ。俺のせいでみんなは死んだ。
あの時1歩でも早ければ、1秒でも早く判断できていれば、きっと俺もみんなもこうはならなかったかもしれない。
「お前はこれからどうなりたい?死ぬか?生きるか?ご都合無敵展開で俺を殺すか?答えろ、少しは考える脳みそ残してやったんだからよ。」
「…俺は……」
俺は、どうしたい?
生きたいのか、死にたいのか、それすらもわからない。もう痛みも苦しみも感じない、怖いも悲しいもわからない、じゃあ俺は…。
「……お前を殺して、俺も死んで、全てを無かったことにしたい…。」
「…。」
そういうと黙り込む。蹴られなくなったと思えば、今度は髪を掴みあげ、近すぎるほどに顔を寄せてくる。
「やっぱり脳みそ全部トばしちまったか?バカ言ってる暇あんだったらさっさと死ねよ。」
ボールを地面に叩きつけるように、頭を思いっきり突き放される。少々不満げに後ろを振り返り、去っていこうとする。
「ま、まて…」
数歩進んだところでぴたっととまる。顔だけでこちらを睨み、なんだと疑問をなげかける。
「…っせめて、せめてお前だけでもみちず…」
渦を出そうと伸ばした右腕が宙を舞う。何が起きたか分からない。驚きの声を上げようにも、かすれ声ひとつすら出てこない。
「結局俺が殺すのかよ。はぁ、つまんねぇ。」
気がつけば持っていたバールをクルクルと回しながら肩にかける。こちらに一切目を向けず、立ち去って行く。
べシャッと目の前に右腕が落ちる。喉は掻っ切られ、左腕は複雑骨折、下半身も麻痺し、ちょっとでも動かせば激痛が走るほど内蔵も限界だった。
ぼやけた視界で辺りを見渡す。両腕がない者、両足がない者、頭の半分が消し飛んだ者、心臓部分を貫かれた者。
あぁ、やはり俺は、この世界は、酷い失敗作だ。
あの世でみんなになんと言われるのだろう。もしかしたら会話にも入れないかもしれない。悲しいなぁ、なんて思いつつも目を閉じる。
薄ら明るい光を感じた気がした。
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