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(場所:収録後、夜の住宅街)
仕事終わり、駅までの道をizwとsgiは並んで歩いていた。 izwは、道が狭くなるタイミングを見計らって、さりげなく、かつ迅速に「車道側」へとポジションを移す。
izw(……よし。ここは俺が守る側として、ビシッと決めておかないとな)
31歳、QuizKnockのCEO。知力でも体力でも、sgiさんを支えられる存在でありたい。そんな淡い自尊心を胸に、izwは少し背筋を伸ばして歩調を速めた。
sgi『izw、今日もお疲れさん。あの問題、お前が正解した時の解説、ほんま鮮やかやったなぁ』
izw『……いや、あれくらい普通だよ。俺、クイズ王だし』
なんて、内心ではsgiの褒め言葉に舞い上がりながら、izwはあくまでクールに振る舞う。車道側を堂々と歩く自分の姿は、さぞかし頼もしく映っているはずだ――そう確信していた、その時だった。
「チリン、チリン!」
背後から、かなりのスピードを出した自転車が近づいてくる。izwがそれに気づき、避けるべきか一瞬思考を巡らせた、そのコンマ数秒後のことだ。
sgi『izw、危ない』
低い、けれど落ち着いた声が耳元で響く。 同時に、左肩に大きな、温かい手のひらが置かれた。
ぐいっ、と。 淀みのない、けれど力強い動作で、izwの体はsgiの方へと引き寄せられた。
izw『……っわ、』
sgiの胸元がすぐ目の前に迫り、彼の纏う清潔な香りが鼻先を掠める。自転車はizwのすぐ横を風を切って通り過ぎていったが、izwの心臓は、自転車への恐怖とは全く別の理由で、激しく鐘を打ち鳴らしていた。
sgi『……ふぅ、危なかったな。izw、ボーッとしてたら怪我するぞ?』
sgiはizwの肩から手を離すと、何事もなかったかのように、また「あはは」と快活に笑いながら歩き出した。 そこには、守ろうとしていたはずの自分にはない、圧倒的な「大人の余裕」があった。
izw『…………分かってるよ、そのくらい。自分で避けられたし』
izwは、熱くなった顔を隠すようにマフラーに顎を埋め、ぷくっと頬を膨らませた。 格好つけたかったのに。車道側を歩いて、俺がsgiさんを守るはずだったのに。 結局、いつだって手のひらで転がされているのは自分の方だ。
izw(……あー、もう。ほんと、悔しいけど……カッコよすぎんだよな、あの人)
一歩前を歩くsgiの大きな背中を見つめながら、izwは敗北感と、それ以上の愛しさを噛み締めていた。 そんなizwの様子に気づいているのかいないのか、sgiは「あ、あそこのコンビニ寄っていい?」と、どこまでもマイペースに、夜の道を歩いていくのだった。
(おわり)