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第4話.自分の気持ち
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ん″……ん……?あ、朝か、やべっ今日まで提出の絵仕上げないと……よし…っカーテン開けるか……って、は?
「お前…ずっと座ってたのか…?」
多分違うだろうけど聞いてみた。冬弥の顔見て全てを思い出した。冬弥は昨日寝る前に見た光景と同じ自分の膝を抱きかかえ蹲っていた。その目はなにを見ているか分からない虚ろの目だった。
「……あっ……えっと……寝たと思いま……す?」
なんだその一言。なぜ疑問形なんだ、こっちが知りてぇんだよ。でも、昨日の冬弥を見たらそんなこと思えねぇ。多分寝てねぇんだろう。お前気づいてないと思うけど、目の下の隈結構凄いぞ、なんなんだがな寝てないなら寝てないって言えば良いのに、これも彼の気づかい何だろうか……迷惑かけたくない。多分此奴の概念はこれだろう。昨日、俺の耳が覚えるほど言っていたからな。
「俺は、嘘つけなんて言ってない。ほんとに寝たのか?」
しつこい奴だと思うだろう。だが、此奴はもっと自分の気持ちを、事実を、感情を出した方が良いと思う。このまま、そうか。と答えたら、彼はなんも変わらない。変われない。まずは自分の力では言えなくて良いから、俺がまずは此奴の気持ちを引き出さなくては。
「……すみません……」
やっぱそうなるか、
「謝んなくていいって、別に怒んねえから」
「ほんとに……怒りま…せんか…、?」
そう聞いてきた。そうか、此奴は怒られるかもって思ってたから言えねえのか。
ならこいつはまだ、希望はある。自分の気持ちを言える時が来るかもしれない。そう思いながら冬弥に微笑み首を縦に振ると、少し肩の力が抜けた冬弥が話し始めた。
「その……せっかくベッドを貸して貰ったのに悪いんですが…何故か俺、寝られなくて………目を瞑って見たりしたけどどうしても……無理で……ごめんなさい」
やっと、此奴は自分のことを話したな。大きな一歩だ。
「そうか、話してくれてありがとな。」
そう言うと、少し悲しそうな顔をした。俺は絵を描く。だから、他人の評価も気にする。この世界は厳しい。評価してくれる人もみんながみんな直接いい絵だよなんて言わない。絵が良くても少しだけしか表情を変えない人なんてたくさんいる。周りのことを気にしていたらいつの間にか人の表情を読み取るのが敏感になってたのかもな。それもあってか、今の冬弥も見逃さなかった。
「ん?どうかしたか、自分の気持ちを言え」
また、だんまりするかと思ったら、今回は意外と話してくれた。表情はまた仏頂面に戻ってしまったが…
「迷惑だったら良いのですが、その、昨日…みたいに…なで…て…みてほしい……です……」
その言葉に吃驚した。昨日、嫌がられたとは思えないほどの発言だ。ほんとに大丈夫か?と尋ねれば首を縦に振った。なら、
「自分の気持ち言えて偉いな」
そう言い頭を撫ででやると、彼は…静かに涙を落とした。
冬の迷い子・第4話.自分の気持ち.完