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白井裕太、12歳。
今まで1位以外を取ったことがなかった。
地区大会、ノービスB、ノービスA………
何時でも立つのは表彰台の真ん中だった。
でも、12歳のノービスAの大会で、銀メダルを獲得した。
1年前に始めた”ニキ”というぽっと出の選手に、金メダルを奪われた。
それから表彰台の真ん中にたっていたのは、いつだってニキだった。
世間はニキに注目していた。
“100年に1人の天才”だの、”絶対王者”だの。
対して俺は、ネットを開けば可哀想な選手扱い。
ニキが、初対面で大嫌いになった。
1位を取れば「白井家は天才一家」
2位を取れば「天才少年」
3位を取れば「コーチはあの白井▉▉!」
表彰台落ちすれば「落ちこぼれ」
1度も、世間は”俺”を見てはくれなかった。
それからしばらくして
スケート靴を履くと足が震えるようになった。
氷上でまともに滑ることができなくなった。
今まで普通にできていたジャンプも、スピンも、ステップも、何も出来なくなった。
ニキに負けて、初めて銀メダルを取って
大嫌いなニキも、いつしかちょっとずつ好きになってきて。
本物の天才にも出会って。
ライバルができて、技術も上がって…
全力で楽しめるようになる、はずだった。
なのに――
「裕太。辛いなら、やめてもええんやで。」
おとんにもおかんにも失望させて。
もう俺を育てるのも嫌になってしまっただろうか
(氷の上に立てない俺に、存在価値はあるんか…?)
そんなモヤを抱えたまま、俺はジュニア世代に上がった。