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臣桜
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上野文
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その後、西暦三百十七年、第十六代仁徳天皇の時代に、インドから裸形上人という僧侶が那智の浜に流れ着いた。
彼が那智の滝で修行をしている時、滝壺に観音様の姿を見たらしく、それを祀ったのが青岸渡寺になる。
那智大社の拝殿は千七百年以上の歴史があるけれど、一度織田信長によって焼き討ちされ、そのあと豊臣秀吉が再建したとか。
ミコペディアから説明を聞いている間に、百合さんたちも合流した。
「大丈夫ですか?」
尊さんが声を掛けると、彼女は汗を掻いているけれど笑顔で答える。
「ええ、大丈夫よ。いい運動になったわ。今夜、温泉に浸かったあとよく眠れそう」
「無理はしないでくださいね」
「ありがとう」
鳥居をくぐって右手側に建物群があり、歩いてすぐのところに手水舎があるのでまずお清め。
その右手奥にはベンチが並べられてある休憩所、有事には音楽家が奉納演奏などを行う長生殿があり、さらに奥には樹齢八百五十年以上、大きな拝殿よりもさらに背の高い、樹高二十七メートルある大きなクスノキがある。
この木は平清盛の子供、平重盛によって植えられたと言われている。
この御神木の幹は空洞があり、護摩木、もしくは絵馬を持って通る、大樟胎内くぐりができる。
チラッと社務所を見たけれど、絵馬の中にはゆるキャラみたいな八咫烏もあって、非常に可愛い。
なお、鳥居をくぐって左手側にはお手洗いがあり、奉納されたらしい酒樽がガラスケースの中に幾つも飾られてあった。
鳥居右手には拝殿があり、左側に朱塗りの建物が直角に続いて八咫烏を祀っている御縣彦社、宝物殿がある。
拝殿の奥には境内図を見ると第一から第五まで、色んな神様を祀ったご本殿があるけれど、行く事はできない。
ちなみに御縣彦社の八咫烏が、一代目の神武天皇を熊野から奈良の橿原まで送り届けたあと、石の姿になって休憩しているという烏石も、見えない場所にある。
拝殿の前には煙を浴びる所があり、そこでありがたい煙をパフパフする。
小さく一礼したあとお賽銭を入れ、鈴を鳴らしてから二礼、二拍手、なむなむ……。
(これからも尊さんと一緒にずっと幸せで仲良くいられますように。恵と涼さんも、春日さんと神くんも、エミリさんと風磨さんも、ラブラブでいられますように。家族もみんな健康で長生き、今日一緒に来た百合さんや将馬さん、ちえりさん、大地さん、小牧さん、弥生さんも、みんな健康で幸せでいられますように)
そのあとも思いつく限りの人の名前を列挙し、病気をせず、健康で幸せになれるようお願いした。
最後に忘れずに、一礼。
今は季節外れだけど、桜の時期には後白河天皇が植えた枝垂れ桜、奥州の藤原秀衡が植えた、秀衡桜もある。
そのあと社務所で、両親のために那智の滝の水が入っている延命水守を買った。
どうやら飛瀧神社に運気上昇の強そうなお守りがあるようなので、恵や涼さん、いつもの女子メンバーにはそれを買っていく事にした。
「……お守りもらっても、困りますかね?」
「いいんじゃないか? アンチ神道って訳でもないし。涼も知り合いから色々もらってるけど、『守られてる感があってお得』って言ってた」
「あはは!」
「それによく言われる事だけど、お守りが沢山あっても喧嘩する事はないそうだ。色んな神様がいても、結局は神無月に出雲大社に行く訳だしな」
「なるほど」
そのあと三百円を払って護摩木を買い、願掛けをしながら胎内くぐりをした。
小さなグレーの鳥居をくぐって階段を下っていくと、私でもかなり狭いと思う木の中に入る。
中は木の幹が剥き出しになっているけれど、崩れてこないように金属パイプやプレートなどで補強されてある。
「おおぅ……、思ったより狭い……。つっかえる」
思わず口走りつつも、心の中ではお願い事をし、手すりのついている狭い金属の階段を上がっていく。
「おぉー……」
階段を上がると視界一面にクスノキの緑や立派な枝振りが見え、神聖な気持ちになる。
階段を下りて地上に戻ると、すぐ横手にある絵馬掛所に護摩木を挿し、再度拝む流れだ。
なお、入り口と出口はちゃんと書いてあるので、逆走する心配はない。
長生殿からの絶景を写真に収めたあと、右手奥にある出口から出てすぐにある天台宗のお寺、青岸渡寺に向かった。
コメント
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読了しました。第851話、那智大社と青岸渡寺の歴史がとても丁寧で、まるで実際に参拝している気分になりました。特に御神木の胎内くぐりの描写は臨場感があって、主人公が「おおぅ…」とつぶやくところに思わず笑ってしまいました。皆の幸せを一人ひとり思い浮かべながらお祈りする優しい主人公の姿が印象的で、温かい気持ちになりました。次のエピソードも楽しみにしています。