音のする方に足を進めると、なにやら声がする。
「や……こし……」
「だ……じ……ね!」
「ん……あ」
あまり聞こえないがなにか言っているようだ。
(多分先生と誰かかな)
「たっだいまー」
ガチャリと扉を開けるとそこには
「え、し、しん、え」
「ありゃ、娘さんの帰って来ちゃったか」
「?!?!!!?」
????!?!!?
せ、先生と公子が…あっ、ちょ、おやめください!心臓に悪いです!
「し、しんえんし、これはだなえっと」
先生が弁解しようと、体を起こす。
その言葉を遮って私は口を開く。
「ふふ…失礼しました。私は何も見てません。お楽しみのところ失礼しました。ごゆっくり。」
そう言ってバタンと扉を閉めた。
あぁ、凄い気まずかった。
まだ扉の奥では何か言っているが、すぐに軋む様な音が聞こえて来た。
「すごいなタルタルソース。」
こんなことを言っている場合ではない。
なんとしてでも、今日中に、家からでねば!!!!!!
あの現場を見てしまった以上、元素爆発×ニされそうなので、足早に家を出る。
別に?全然?もっと見たいとかぁ?思ってませんしぃ?
この立場利用して、いい感じにしてやろうとか?思ってませんしぃ?!!!?!
一旦不扑盧に残りの荷物を取りに行き、 次は、すごぉぉおおおく慎重に家に入り、行為がまだ続いてくれることを願いながら、自室へ行き、何故か都合よくある、鞄を見つけた。
なんだこれ、結構ズッシリしている。サイズは小さいのに。
何となく、手を中に入れて、中身を出す。
結果から言うとめちゃくちゃでて来た。なんかの本とか、難しいこと書いてあるメモとか。その他もろもろ。
服とかでて来た。
「ん?」
更にゴソゴソしていると、なにか日記が出て来た。
ペラペラとめくっていくと、「今日は遺跡に行った。」とか、「今日は本を買った」とかそんな他愛もないものだ。
「これは…」
しばらく読み進めていくと、少し気になるページを見つけた。
――――――――――――――
×/⚪︎
今日も、雨。最近は雨が多い。遺跡にはしばらく行けそうにないが、本があるから少し復習しておこう。
フォンテーヌには水龍が泣くと雨が降るらしいが、璃月では帝君が泣いているのだろうか?
こんな雨なのに父様は仕事に行ってしまった。
外に出られないから今のうちに掃除を済ましておこう。
今日は、見てくれるだろうか。
――――――――――――――
×/△
最近、怪我の治りが以上に早い気がする。
包丁で指を切っても、次の日にはコロッと治っている。
父様に話してみようかと思ったけど、誰かに話したところで、父様にとってはどうでもいい話だろう。
今日も雨が降っている。
――――――――――――――
×/▫︎
今日もダメだった。
当たり前か。
父様に私を見てもらおうとしても母には勝てないのはわかっているから、もう、いいかな。
――――――――――――――
など等の文書が綴ってあった。なるほど、闇深くない?それに怪我の治りが早いのは今に始まった事ではないのだな。
にしても、用意するものが多すぎる。
えっと、モラ、服、下着、日記、最近貰った神の目、武器は……買えばいいか。
にしても、モラがないなぁ…先生の給料良い筈なんだがね…
そう思いながらおもむろに引き出しを開けてみる。
「?!」
引き出しには大量のモラとメモが入っていた。
「なになに…」
そこには緊急用と書かれていた。
めちゃくちゃ溜め込んでやがる。まぁ、いいや、貰ってしまおう。今緊急だしね!家出資金あるならあとは準備するだけだしね。
準備も丁度終わったし、へそくり(?)を持って、服もカバンに入れて、置き手紙…はいらないか。
神の目は大事にしまっておこう。
私は再びそろぉ…と家を出た。
――――――――――――――――――
鍾視点
「公子殿」
「なぁに先生♡」
「何故行為を中断しなかった」
「先生、娘さん追いかけようとしてたけどまだ先生の可愛いとこ見たかったんだもん」
「…はぁ」
「それに、娘さんもごゆっくりって言ってくれたしね」
「最悪だ…」
「でも、気持ちよかったでしょ」
「……」
「あっ、耳真っ赤だ」
黙れと言いたいところだったが、昨晩の出来事のせいで、喉が痛い。あまり喉を酷使すると、仕事に支障が出てしまう。どうか見えやすいところにつけていなければいいが。
ズキズキと痛む、腰をさすりながらのそりと寝床から立っていつものようにリビングへ向かう。
「真縁?」
いつも先に起きている真縁がいない。
嫌な予感がして、真縁の部屋へ足早に向かって扉を開けた。
「……」
いない
娘がいない。
どこに?
「どしたの先生、そんな急いで」
「公子殿、娘が、真緣がいない」
「えぇ…?」
「やはり、俺のことをまだ許していないから出て行った?、いやそんな、まさか昨日のせいか?」
ぐるぐると頭の中で可能性がめぐる。
「取り敢えず先生、落ち着こうよ」
「あ、」
公子殿の声で、少し冷静になる。
しかし、どこに…遺跡に行ったとしても置き手紙ぐらいは置いていく筈。
「真縁…」
「……」
――――――――――――――――――
公子視点
流石に昨日の話を今は持ち出すのはあまりにも怒られそうで、黙っておこう。
しょぼくれている先生の隣で、ぼんやりと昨晩のことを思い出す。
あの時まさか先生が応じてくれるとは思ってなかったし、ついでに見られるとは思いもしなかった。
娘さんと大喧嘩した時のことはびっくりはしたけど、普段見られない、先生の焦り顔が見れて、俺的には満足だ。
「真縁…」
ぽつりと先生が娘さんの名前を呟く。
真縁、ね。別に、興味は無いし、強そうでもないから無視して良いと思ってたけど、先生が娘さんの心配ばっかりして頻度が少なくなるのは嫌だなぁ。
先生のことだ、どうせ娘さんが見つかるまで行為はお預けされる。
それだけは勘弁だ。他の仕事もあるしね。
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???「……どうして、あなたは、」
何処かわからない、野原の真ん中で黒髪の少女がつぶやいた。
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