テラーノベル
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私、七瀬美琴 (ななせみこと) は幽霊と虫が大の苦手だ。
同士がいるのならぜひ仲良くなりたいものなのだが、私に話しかける奴なんて一人も居ないんだ。なぜか知らないが、周りの奴らに怖がられているらしい。
「天涯孤独な赤い薔薇」だとさ。天涯孤独?一人の方が人生何事も楽だろう。人間関係のいざこざほど面倒くさいものはない。もうあんなことはごめんだ。正直思い出したくないな。
もし友達がいたら…。なんて思うこともあるが、近づいたら逃げられてしまうからどうしようもない。私だけ難易度マスターぐらいに設定されているのではないか?
それだけじゃない。なぜか人間ではないものに好かれる。人間には逃げられるのだが…?それこそ幽霊とか虫とか、私の苦手なものがうじゃうじゃと寄ってくるんだよ。この体質本当に嫌だ。誰か望んでいる人間がいるのなら笑顔で差し出すが。誰かいないのだろうか。
私の学生生活一番の目標は幽霊が得意な奴と友達になることだな。今私がそう決定した。異論は認めない。異論など言ってくる人間なんて周りにいないが。高校生活なんてあっという間だとは思うが、三年間も一緒にいてくれればそれこそ心強いだろう。
こんな夢みたいなことを考えてしまう。私の悪い癖だな。期待すればするほど叶わなかった時の絶望は痛いものだ。
「 はぁ。 」
無意識にため息をついてしまった。まぁ私がため息をついたところで気にかけてくれる奴なんて一人も居ないのだから今更気にすることではないか。
「 おい、人の横ででっけーため息してんじゃねぇよ。気が散るだろ 」
誰だこいつは。私に話しかけただと?怖がられているこんな私に、ただの文句だとしても話しかけてくれる奴は初めてだ。
「 んだよ、その目のキラキラは 」
キラキラ?私そんなに目を輝かせているのだろうか。全く自覚はないが、久しぶりに話しかけられたからだろうな。
「 別にキラキラなどしていない 」
なぜだ、なぜこんな冷たいことしか言えないんだろうか。可愛げがないのも避けられている理由の一つだろうな。まぁもうこいつとは関わることはないだろうし、それにこいつに嫌われたところで、ダメージはないからな。
「 ……。 」
なんだこいつは、なぜ私の顔をずっと見てくるんだ。ああ、違うな。きっと外かどこかを見ているんだろう。流石に自意識過剰すぎるな、笑えない。
「 なぁ、お前。どんだけ背中に幽霊憑いてんだよ、ざっと…。10ぐらい? 」
幽霊…?私の顔が一瞬で青ざめたのが分かった。私は幽霊がみえない。みえたとしても退治の仕方がわからないからどうにもできない。
私の背中に幽霊が?しかも、10体も…?ああ、どうしよう。怖い、嫌だ。泣きそうなのをぐっと堪えながら震える手を目の前のよく知らない男に伸ばす。助けてもらえるはずもないのに、無視されて「はい終了」なんていう結末はわかりきっていることなのに、
でも、この男は周りの奴らとは少し違っていたらしい。お札か何かをポケットから出して私の背中に憑いている幽霊を祓ってくれたみたいだ。その後数秒私を見つめてから、私が助けを求めようとして伸ばした手を優しく握ってくれた。
私はそれに安心したのか、数分経てば落ち着いていつものような調子で話せるようになっていた。ただ、それよりも私はこいつにこんな姿を見れたことが、とても恥ずかしかった。親にすら気づかれないよう隠してきた、私の唯一苦手なものが今日出会った見ず知らずの男に知られてしまった。
「 あ、ありがとう。助かった 」
少しぎこちなくなってしまったか?まぁ礼を言ったことには変わりないだろう。今日は一段と疲れた。家に帰ってもこれから家事が待っているのか、帰りたくないな。こういう時に頼れる友達がいたら助かるとは思うが、結局できずじまいだ。
「 はぁ、帰りたくないな 」
「 なんでだよ 」
「 な、いたのか!? 」
「 いたのか、とは失礼だな 」
なぜ私はこんなにこいつに醜態を晒さないといけないんだ。しかもこいつは周りの奴らとは違うから調子が狂う。
「 なぁ、家帰りたくないなら俺ん家来るか? 」
「 お願いしたい 」
こいつと友達になれば私の学校生活きっと幸せなものになるはず。しかも、幽霊も退治できる。こんな奴これから先絶対に会えるわけがない。だから私の答えは一つしかなかった。
第一話 『 ひとりぼっち 』
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