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昼食をとったあと、ルークとエミリアさんと一緒に問題の部屋に集まった。
天井裏には、テレーゼさんが気配を感じて、ルークもその存在を感じた『何か』があるって話なんだけど――
『気配を断つような感じで、微かに何かが足りない』
――これはルークの言葉だ。
これだけ聞くと、何やら不気味な感じがしてしまう。
「……それにしても、天井裏なんだよね。どうしよう?」
三人で天井を見上げながら、まずはそこから話を切り出してみる。
天井に穴を空けてしまえば、当然のことながらあとで修理が必要になる。
出来れば穴なんて空けたくないところなんだけど――
「そもそも何があるんでしょうね? アイナさん、何か分かりませんか?」
「え? ルークでも分からないのに、何で私が分かるんですか!?」
「ほら、アイナさんには無敵の鑑定スキルがあるじゃないですか」
「あ……、確かに!」
エミリアさんの言う通り、私の鑑定スキルはレベル99で上限値だ。
あまりそういう使い方はしないけど、ある種の透視のようなことも出来てしまう。
「ですよね? 鑑定して大したものでなければ、穴を空けるまでもないですから」
「なるほど。それでは早速、鑑定をしてみましょう」
ほい、かんてーっ。
天井に向けて鑑定スキルを使うと、宙にウィンドウが現れた。
それを三人で覗き込んでみると――
──────────────────
【謎の箱】
謎の箱
──────────────────
「……。
は、箱があるみたいですね!!」
「えぇ~……。何ですか、この雑な結果……」
エミリアさんのがっかりした声が静かに響く。
こ、これは私のせいじゃないし……!?
「ふーむ……。これは多分、謎の箱なんでしょうね。
それ以上でも、それ以下でもない感じの……!!」
「アイナ様……。謎と言われてしまうと、調べざるを得ないと思うのですが……」
「だよね……。うーん、それにしてもそもそも誰が天井裏なんかに置いたんだろう?
置くためにはやっぱり穴を空ける必要があるよね? もしかして、このお屋敷を建てるときにはもう置いていたとか……?」
「可能性は低いかもしれませんが、ごく短距離の転送魔法で天井を通り抜けさせたかもしれませんね」
「転送魔法……。そういうのもあるんですか」
「はい、かなり高度な魔法ではあるんですけど……。でも、このお屋敷にはグランベル公爵の弟君が住んでいたんですよね。
その方も魔法に詳しかったでしょうし、もしかしたら……?」
「なるほど。それなら私たちとしては、やっぱり穴を空けるしかないですか……」
まぁ……穴を空けたところで、直せば良いんだけど……。
修理代は金貨2枚もあれば足りるかな? ……今は金回りも良いし、それくらいなら空けてみるか……。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
庭木職人のハーマンさんからハシゴを借りて、部屋の天井に穴を空けていく。
折角の綺麗な天井だけど、直してもらうまでは穴くらい我慢しよう。
……まぁ、そもそもこの部屋は使っていないんだけど。
人がひとり通れるくらいの穴を空けると、ルークがそこから天井裏に潜り込んでいった。
しばらくしてから声を掛けてみる。
「ルーク、どう? 何かあったー?」
「……はい、箱が1つありました……! これは立派な箱ですね……」
「おー……。下に持ってこれる?」
「はい、少々お待ちください……」
天井越しに何回か言葉を交わしたあと、ルークは箱を片手で抱えながら、器用にハシゴを下りてきた。
「それが『謎の箱』ですか……」
エミリアさんが興味深そうに言う中、ルークはその箱を部屋のテーブルに置いた。
やや重厚な装飾が施されており、鍵穴がひとつ開いている。
「うーん? ……ルークはどう思う?」
「そうですね……。どんな物にも何かしらの存在感はあるものですが、それがこの箱からは感じられません。
気配を追ったとき、何かが足りないと思ったのはそのせいでしょう」
「ふむ……。とりあえず目の前にあることだし、もう一度鑑定してみよっか」
えい、かんてーっ。
──────────────────
【謎の箱】
謎の箱
※魔法効果:封印Lv44
※付与効果:情報操作Lv71
※付与効果:隠匿Lv55
※付与効果:物理反射Lv49
※付与効果:魔法反射Lv47
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改めてウィンドウを確認すると、エミリアさんが言葉を詰まらせた。
「……うわぁ。何ですか、これ……」
「何て言うか……隠す気が満々の構成ですね……」
効果が5つも付いているが、どれもこれも箱を開けさせないことに必死だ。
ここまでやるか? と言わんばかりのラインナップ――
「……さて、どうしましょう。武器でも魔法でも、衝撃は跳ね返されてしまいそうですし……?
何かを封印しているだけなら、とりあえずはこのまま放っておくのも手かもしれませんね」
「それなら、アイテムボックスに入れておきますか。
私のだったら時間が止まりますし、安全だと思います」
「それは良いかもしれませんね。必要になれば、そのときに出せば良いのですから……」
それじゃアイテムボックスに入れて――
バチィッ!!
「あつっ!?」
「アイナ様!?」
「だ、大丈夫ですか!?」
収納スキルを発動させた瞬間、その箱を触れていた私の手に、電撃のような強い痛みが走った。
これは――
「……抵抗されたっぽい……」
アイテムボックスというのは、実は何でも入るというものでは無い。
例えば人間を入れたりするのは不可能だ。高い知力、強い意思を持つものには抵抗される――……そんな言い方が近いかな。
「むぅ……。この箱って、やっぱり結構大変な代物だったのでしょうか……。
……あ! そういえばアイナさん!!」
「え、はい?」
「いつだったか、何かの鍵を見つけていませんでしたっけ?」
「あー、ありましたね!
……え? あ、もしかして?」
アイテムボックスから、書斎で手に入れた鍵を取り出す。
鍵と箱の大きさの対比もそれっぽいし、鍵穴にも普通に入れられそうだ。
「いけそうですね……!?」
「そうですね……、いってみましょう! それっ!!」
静かに鍵を挿し込もうとすると――……何故か入らなかった。
「あれ? どうしましたか……?」
「うん? あれー、何だか鍵が入らない……?」
頑張って入れようとするも、そもそも鍵穴が無いような感じで、挿し込むことが出来なかった。
空いているはずなのに挿せない……何とも不思議な感覚だ。
「……もしかして『封印』の効果でしょうか。鍵の前に一段階、保険を掛けておくような感じの……」
「さすがにちょっと、念入りすぎじゃないですかね……。
う~ん、そうしたらどうしましょう……」
アイテムボックスに入れられるなら、私の錬金術でどうにでもなりそうなんだけど……そもそも入らないし。
ここまで不穏な存在を示された以上、このまま放置というのもさすがに嫌だし……。
「『封印』が魔法の効果なら、魔法の専門家に見てもらう必要がありますよね……?」
「……あ。それならアイナさんが対応できるじゃないですか。
ほら、バニッシュ・フェイトで!」
バニッシュ・フェイトとは光魔法の1つで、『すべての魔法効果を打ち消す』という効果を持つ。
私は偶然、この効果をアクセサリに付けることが出来ていた。
「……え? こういうのも打ち消せるんですか?」
「はい、何でもいけちゃうのが凄いところですからね!」
「ははぁ……、思ったより凄い魔法なんですね……。
それじゃ――……バニッシュ・フェイト!」
私がそう唱えた瞬間、謎の箱は綺麗な光を煌めかせて、そして光は静かに消えていった。
「お……。アイナさん、無事に成功したようです!」
「それなら鍵は、挿さるはず――」
いざ鍵穴に鍵を当ててみると、あっさりと挿すことが出来た。
そしてそのまま鍵をまわすと――
ガチャッ
乾いた音と共に、ごく自然に鍵が開いた。
「……開きましたね!」
「……開いてしまいました。
このまま、フタも……開けちゃいます?」
ルークとエミリアさんに同意を得てから、全員が頷いたことを確認してからフタを開ける――
キィンッ
「わっ?」
フタを少し開けた瞬間、箱の中から黒く煌めく綺麗な石が零れてきた。
そしてそのまま箱を開けきると……中には、小さな白い欠片が入っていた。
「綺麗な石と……こっちの白いのは何でしょう?」
「はて……?
この黒い石は、何となく見覚えがありますね」
自然な流れで、そのまま鑑定をしてみると――
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【闇の封晶石】
闇の力を増幅させる結晶体。高度な製造で使用する
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――うん、だよね。
封晶石はこれで5属性目。コンプリートまではあと1属性、土属性のみ!
……って、まさかこんなところで手に入るとは。
「恐らくこの封晶石は、この箱の封印の要になっていたんでしょうね。
この手の封印は、エネルギーを供給し続けないといけないものですから」
「なるほど……。そうすると、本命は白い欠片ですか……」
さすがにこっちは初めて見るようなものだ。……一体何なんだろう?
えい、かんてーっ。
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【神の骨・肆】
第四神の骨。
聖遺物のひとつ
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……んん?
……んんん?
「……こ、こういうのはエミリアさんが詳しく――」
「ないですよっ!?」
……。
……何だかまた、凄いものが出てきちゃったんですけど……。