side:wki
先生の話にハイ、ハイと食い気味に返事を返す。
こんなことなら、グループリーダーなんてやるんじゃなかった。
大森は大丈夫かな。
心配の仕方が親のようで自分でも笑えるけど、心配しないなんて無理だった。
先生の話をさっさと切り上げて校庭へ走ると、大森はクラスメイトに囲まれていた。
その姿はさながら、大型犬とチワワ。
ふっと笑いが漏れたが、次の瞬間一気にどす黒い感情に襲われ、足が止まった。
真っ暗な陰に全身がんじがらめにされた様な錯覚さえ覚えた。
イラつく。
大森の頭をクシャクシャにしてるクラスメイトに。
そして、俺以外のヤツに簡単に触らせてる大森に。
夏休み明けのあの日に、俺ができなかったことを簡単にしてんじゃねぇよ。触るな。
触らせるな。
あの手を叩き落として、大森を自分の腕の中に閉じ込めたい。
自分の思考にハッとして、大森にこんな黒い気持ちを悟られないようため息を一つ吐いてから、務めて明るく声を出した。
「元貴!こっちー!」
初めて名前で呼んだ。
クラスメイトに『お前らとは違う』と見せつけるように。
俺を見つけて、ホッとしたように駆け寄ってくる姿は、本当に子犬の様。
「助かった〜!若井遅いよ」
「ごめん。これでも急いだんだよ。でも、結構楽しそうだったじゃん?」
言った後に皮肉に聞こえたかも、とハッとしたが、元貴は気付いていないように話を続けた。
「いやもう、ムリよ。なんかみんなデカイし、内心超ビクビクしてた」
「元貴も昔は大きかったのにね〜」
「おれの成長期はこれからなの!!」
そんなに気にしなくても、今が丁度いいのに。
…丁度いい?なにが??
自分の中の疑問に首を傾げる。
もう、自分で自分がよく分からない。
「てか、なんで急に名前呼び?」
「もう友達でしょ?いいじゃん!俺も滉斗って呼んでよ」
「うーん、なんかやだ。若井でいい」
「なんでだよ!」
2人で目を合わせて笑い合う。
今はこれでいいや。
元貴と2人でいる時の、暖かい空気を壊したくない。
バスの移動も隣、新幹線でももちろん隣で、口開けて眠る元貴の写真撮ってみたり、神社の参道で一緒に団子を頬張ったり。
思い描いていた通りの楽しさに、ずっと2人で笑っていた。
心の底に、あの黒い気持ちの正体を隠して。
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相変わらずアップした後に手直ししました。
手直しも通知いくのかな?
わかんないけど、もし通知荒らしてたらホントすみません。
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