テラーノベル
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夕飯の支度が終わった、日暮れの頃。
「ただいま」
壱月の声が玄関から聞こえて、花斗がダイニングを飛び出す。
「いつきー!」
花斗の元気な声が部屋中に響く。
ダイニングに入ってきた壱月は、抱きついた花斗をそのまま片手で抱き抱えていた。
「おかえりなさい、でしょ」
「あ、そーだった!」
私に言われた花斗は壱月から下りると、彼の前に立って頭を160度くらい下げた。
「おかえりなさい」
丁寧すぎやしませんか!?
壱月も花斗のその様子に思わずクスクスと笑い声をもらす。
「ただいま戻りました」
壱月は頭を下げて返事をすると、手にしていたキャリーバックをリビングに置き、床の上で開いた。
「じゃーん!」
そこから壱月が取り出したのは、カラフルな箱と、飛行機の描かれた箱だ。
花斗はすぐさま「ひこうき!」と反応し、それを無理矢理に壱月の手から奪った。
「ダメでしょ!」
つい、叱ってしまう。だが、壱月は「ははっ」と笑った。
「いいって、これは花斗へのお土産だから。アメリカ限定品だぞ?」
「あめりか……?」
壱月の言葉に、花斗が首を傾げる。
「アメリカ、知らないか。海のずっと向こうの国だ」
すると、花斗の目が急に輝く。
「いつき、あめりかいってたの?」
「ああ、そうだ」
壱月が頷くと、花斗は「ひこうきで、あめりか……」とつぶやく。
それから、急に大声で言った。
「すごい! あめりか! いつき、あめりか!」
それで、私はついため息をこぼした。花斗はアメリカをおもちゃの国かなにかだと思っているに違いない。
飛行機の箱を見て、再び「あめりか……」とつぶやく。
「いつき、あけていい?」
花斗が壱月のほうを向く。
「ごはん、ちゃんと食べてからにしなさい」
私はふたりの会話に、無理矢理大声で割り込んだ。すると、花斗は唇を尖らせる。
「花斗が作ったの、壱月に食べてもらうんでしょ?」
そう言うと、「そうだった!」と花斗は急に持っていた箱を床に置き、壱月の手を引っ張る。
「あのね、ぼくがつくったの。サラダ!」
ダイニングテーブルまで引っ張ってこられた壱月は、私の隣でそのままテーブルの上に置かれた料理にふっと頬を緩めた。
「サンキュ、愛音」
耳元で突然そう言われ、ドキッと胸が高鳴る。
「着替えてくるから、もう少しだけ待っててな」
壱月はそう言って花斗の頭をくしゃくしゃ撫でる。花斗は嬉しそうに、目を細めた。
着替えを済ませて席に座った壱月は、大きいままのレタスとやたら細かくちぎられた竹輪の入ったお皿に、手をのばす。
「それ、ぼくがつくった!」
「そうなのか! すごいなあ、美味しいよ」
壱月にそう言われ、花斗は得意気に顎を突き出していた。
コメント
1件
ああ、もうこのエピソードめっちゃ良かった…! 花斗の「おかえりなさい」の160度お辞儀、思わず笑ったわw でもそれ以上に、壱月が「サンキュ、愛音」って耳元で言うシーンでドキドキしたのは私だけじゃないはず! アメリカ土産の飛行機のおもちゃで花斗が目を輝かせる姿も、サラダを「美味しいよ」って褒める壱月の優しさも、全部が温かくて胸がじんわりした。家族っていいなあ、って思える話だった🔥