テラーノベル
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発作は決まって、深夜の二時すぎに起きる。
毎回同じ時間。まるで誰かが合図しているかのように。
吸い込むたび、胸は苦しく、喉は細くすぼまる。
ひゅう、ひゅう——その音は本来、ただの喘鳴だ。
ぼくも医者も知っている。
でも、最近になって混じる「もうひとつの音」は説明できない。
——カチ、カチ。
時計の針とは違う、湿ったような音。
それに気づいたのは、一週間前の夜だった。
痰が絡んで咳き込んでいたとき、部屋の隅から小さな物音がした。
ぼくは目をこすって周りを見たけれど、暗い部屋には何もいない。
風もないはずなのに、薄いカーテンがゆっくり揺れていた。
次の発作のときも、同じだった。
ひゅう、ひゅう、カチ。
ひゅう、ひゅう、カチ、カチ。
リズムのある音——まるで返事のように。
怖くなって母に言ったら、
「寝ぼけてたんでしょ。喘息のせいで苦しかったから」
と何度も何度も言われた。
けれど、その夜。
部屋の隅にあったはずのぼくの吸入器が、机の上に置かれていた。
手を伸ばした覚えはない。
使った覚えもない。
触ってみると、金属部分が冷たく濡れていた。
水? 汗? それとも——。
胸の奥で、また押しつぶされるような痛みが走る。
ひゅう、ひゅう。
カチ、カチ。
カチ。
まるで誰かが、そこにいると伝えようとしているみたいに。
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