TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

喘息のせい

一覧ページ

「喘息のせい」のメインビジュアル

喘息のせい

1 - 聞こえないはずの音

♥

16

2025年12月07日

シェアするシェアする
報告する

発作は決まって、深夜の二時すぎに起きる。

毎回同じ時間。まるで誰かが合図しているかのように。


吸い込むたび、胸は苦しく、喉は細くすぼまる。

ひゅう、ひゅう——その音は本来、ただの喘鳴だ。

ぼくも医者も知っている。

でも、最近になって混じる「もうひとつの音」は説明できない。


——カチ、カチ。

時計の針とは違う、湿ったような音。


それに気づいたのは、一週間前の夜だった。

痰が絡んで咳き込んでいたとき、部屋の隅から小さな物音がした。

ぼくは目をこすって周りを見たけれど、暗い部屋には何もいない。

風もないはずなのに、薄いカーテンがゆっくり揺れていた。


次の発作のときも、同じだった。

ひゅう、ひゅう、カチ。

ひゅう、ひゅう、カチ、カチ。


リズムのある音——まるで返事のように。


怖くなって母に言ったら、

「寝ぼけてたんでしょ。喘息のせいで苦しかったから」

と何度も何度も言われた。


けれど、その夜。

部屋の隅にあったはずのぼくの吸入器が、机の上に置かれていた。


手を伸ばした覚えはない。

使った覚えもない。


触ってみると、金属部分が冷たく濡れていた。

水? 汗? それとも——。


胸の奥で、また押しつぶされるような痛みが走る。


ひゅう、ひゅう。

カチ、カチ。

カチ。


まるで誰かが、そこにいると伝えようとしているみたいに。

この作品はいかがでしたか?

16

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚